表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/43

第十四回

 もう一人、奥の窓際の姉はやはり椅子に座っているが、圭介を一瞥(いちべつ)したのみで、また瞼を閉じてしまった。昌はまだ眠っている。室内は静穏である。

母が肝の()わった性分であることは、子である圭介には当然分かっていることなのだが、それでも、病床に臥して病状も気にせず、安らかな寝息を立てている母は、圭介にはとても真似出来ず、ある意味で神々しかった。

「先生は?」と、智代が圭介の接近とともに小さく呟く。

「回診中だって…、すぐ終わるらしいよ。ナースセンターの連絡待ちだ」

 と、圭介が両手を左右の膝において、中腰で智代の耳に囁く。

「ふ~ん…」と小さく唸って、智代はまた瞼を閉じ、母と同調して眠る振りをした。

圭介は、壁際に折り畳まれて凭れ立つ、予備のチェアーを開けて、自らも座った。概して、四床のベッドの患者達は、時間的なものもあったのだろうが、昌と同様に静かに横たわっている。目覚めている者が何名かいるが、その人々も無口である。(あたか)も、保育所に預けられた幼児の“オネムの時間”だ。

圭介はそう思うが、騒がしく話すことも(はばか)られ、智代に従って瞼を閉じ、

(しばら)くジッと待つことにした。

 昨晩は出来なかったこともあったのだろう。圭介は知らぬ間に微睡(まどろ)んだ。椅子の所為(せい)か、完全に眠ってしまった訳ではなかったが、スゥーっと意識が遠退いていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ