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ゆっくりと目を開けると、すぐそこにお姉ちゃんの寝顔があった。
眼を動かして薄暗い空間を見回すと、ここがカーテンで仕切られたベッドの上という事が分かり、なんで私がこんなところで寝ているんだろうと疑問に思う。だけど、すぐに樋口君に覆い被さった事を思い出した。
「……樋口君は?」
お姉ちゃんを起こそうと手を伸ばしたら、腕には点滴の管が繋がっていた。それでも、そのままお姉ちゃんの肩をさする。
「んーん……目ぇ覚めたのか、美咲」
制服姿のお姉ちゃんは目をこすり、椅子に座ったまま背を伸ばした。
「おはよ――じゃなくて、こんばんはか。それより、お父さん達に知らせないとなぁ」
「……お姉ちゃん、樋口君は?」
お姉ちゃんは立ち上がるともう一度背を伸ばす。
「健祐くんなら頭に包帯を巻いて昨日から学校に来ているよ。それにしても、健祐くんもタフだよなぁ。火曜日の朝に救助されて一日休んだだけで、昨日から普通に学校に来たと思ったら、今日のアレだもん」
「アレって、なに? というか、今日は何曜日?」
「今は木曜日の夜。美咲は救助されてから三日間、ずっと眠っていたのよ。それより、お母さん呼んでこないと」
お姉ちゃんはそう言うと、慌てる様子もなく病室から出ていった。
「今日は木曜日。あれから三日も経っちゃったんだ」
そう口にして、私は目を閉じる。
頭がボーーッとする中、あの爆発以降の事を思い出そうとした。しかし、何も思い出せなかった。誰に助けられたのかさえも憶えていない。
「それにしても、樋口君が生きていて良かった。本当に、良かった……」
自然と涙が溢れてだしたから、手で目を覆った。




