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 教室に戻ると麻衣と彩香はお弁当を食べ終えていて、通学路の途中で時々見かける黄色に白い縞模様が入った猫の話をしていた。彩香はその猫のことを気に入っているらしく、話し方がいつもとは違い熱が入っていた。ただ、残念な事に彩香の家はペット禁止なマンションなのだ。だから将来は一人暮らしをする際には猫を飼おうと思っているのだという。そんな話しをしながら私は、残りわずかな昼休みを気にしながら、お弁当を胃袋に収めていった。ひと眠りしたおかげか食欲はあり、お弁当は昼休みギリギリに美味しく食べ終えることができた。


 午後の授業の予鈴が鳴る頃、私の席から離れた廊下側の席に樋口君は着席した。遠目から見た感じ普段とそんな変わりない表情をしていた。私なら徹夜したあとにあんな風に普段と変わらずにはいられず、眠さ全開の表情になるのだろう。だからポーカーフェイスな樋口君を感心して少しの間眺めていた。


 午後の授業は何事無く普段どおりに終えた。普段ならここで図書室へと直行コースなのだが、今日は違った。荷物を持って教室を出ようとしたところ、生徒指導室まで来なさい、という内容の校内放送で呼び出されたのだ。しかも私以外にも二人が呼び出されていて、一人は美佳子で、もう一人は樋口君だった。この二人も呼び出されるという事は十中八九、朝の私が階段から落ちそうになった事――ということは誰でも予想がつく。まあ、実際その通りだったのだけど。


 生徒指導室に着くと、もう美佳子と樋口君が立っていた。その他に教頭先生に擁護教諭の鈴木先生、魔法協会の私の担当である中井さん、それに昨晩テレビで事故の解説していた雪乃彰さんがいた。そして私達が呼ばれた理由というのは、私は中井さんに一応の検査の為に病院に連れていかれ、美佳子と樋口君は雪乃さんに朝の状況を説明をお願いされて説明したそうだ。その説明にはニ十分くらい掛かったそうで、それは病院から家に向かう車中、美佳子からのメールで知った。


 病院での検査は全身のCTで撮り、腹部のエコー検査、血液検査をされた。血は青や緑ではなく赤かったことは私にとって少し安心したことだった。都市伝説や噂では能力者の血液は赤ではないというのが、お約束っぽく語られているからだ。別に信じていたわけではないが、ただそういう情報を耳にしてしまうと若干不安になってしまう。いくら嘘だと解っていても。


 そうそう検査の結果は、どこにも異常はみられないという事だった。


 病院から家までは中井さんの車で送ってもらった。その車中で聞いた話によれば、近々、魔力制御の訓練の場所が変わるそうで、いままで魔法協会の準備不足で学校側のご厚意で訓練場所として体育館を使用させてもらっていたのだけど、ようやく協会側の準備が整ったそうで協会の施設で訓練できるようになったそうだ、一学期が終るまでは学校の体育館を使わせてもらい、それ以降は協会の施設ということになる予定らしい。


 と言う訳で、午後六時頃に家に着いた私はいつもの様に荷物を部屋に置き、それから制服から家着に着替えるとベッドに横になる。とくに眠る気はないが、なんだか今日は色々あったから普段以上に疲れているように感じるおかげで、起きているのが辛いのだ。


「今日は樋口君に危ないところを助けてもらって、美佳子にいっぱい心配させっちゃった。でも本当に、樋口君に怪我がなくてよかった」


 心の底からそう思う。樋口君は信頼して愚痴れる友達なのだ。そんな友達に怪我を負わせてしまったら、樋口君が許してくれたとしても私は樋口君のことを避けてしまうに違いない。そうしたら――


「何か変わるのだろうか、私は。樋口君と話しが出来なくなるくらいで」


 たぶん変わらない。いくら樋口君が気を許せる友達だからといっても、樋口君と話しが出来なくなるくらいでは、そんなには変わらない自信はある。だけど、これは自分自身に対しての強がりなのだとも思う。やっぱり気兼ねなく愚痴をこぼせる友達は、今の私にとって貴重な存在なんだと解っている。いなくなったら大変だ。それでも、どこかで自分自身に強がっていないと、心が折れて泣き崩れてしまい、その場から一歩も動けなくなってしまうような気がする。何が言いたいかといえば、要するに私が意地っ張りだという事なのだ。出来れば他人には弱いところは見せたくないし、見られたくもない。いくら樋口君に気を許しているとはいっても、まだ心までは許してはいなのだ。


 ベッドの仰向けになってそんな事を考えていると、フッとある事を思い出した。それは昨日、お姉ちゃんから貰った映画のチケットのことだった。どうせなら浩市くんと行きたいと昨日宿題やりながら考えていた。


 思い立ったが吉日ということで、携帯電話を手に取る。いつもなら思い悩むところだが今日は違った。携帯電話の電源を入れ、ベッドの上で正座をして携帯電話のアドレス帳から浩市くんのものを選び、意を決して携帯電話のボタンを押し、浩市くん携帯電話に電話を掛ける。すぐさま耳元に携帯電話を持っていく。呼び出し音が一回、二階と鳴るにびつれて、どんどん緊張感が高まり心臓の鼓動が早くなっていくのが分かる。切れるものなら切っちゃいたい、と思うくらいに。


 そして、何度目かの呼び出し音で呼び出し音が途切れ、いつもと変わらない少し高めな浩市くんの声が耳に届く。


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