5話
無理やり分けて投稿しますので、内容のぶつ切りさ加減はご容赦ください。
「緋~斗~君!」
夕方、晩ご飯を終えた頃に、高砂家の緋斗を訪ねる声がしていた。
渦谷家の兎伊だ。
「は~い」
玄関の鍵を開けて兎伊を迎えると、二人は緋斗の部屋に上がって行った。
「おっじゃましま~す」
「ん~、いらっしゃ~い」
そんなやりとりをしつつ階段を上がる。
「で、今夜の事だけど」
「一時に行くんだろ? 取り敢えず、母さん達には兎伊が家に泊まっていくって事言っておいた」
「OK! こっちもそう言っといた」
今日の公園にて、彼らがあの噂について双葉達から聞いていたには訳がある。
彼らはこの噂に何らかの霊的な事が関わっているのではないかと考えていたのだ。
今までにも、このような事件をいくつも手掛けてきた二人は、今回もまたどうにか出来ないかと乗り出した。
「一時にはま~だまだ時間があるからね~」
「かなりな」
「だ、か、ら。それまでの事なんだけど…」
「までは…?」
声を落として話す兎伊に、自然こちらも声を抑える緋斗。
身を屈めるようにして、息をごくりと飲むと…。
「テレビは? テレビ。今日面白い番組の宣伝してるの見たから気になってたんだ~」
崩れ落ちた。
何がって、緋斗が。
「あれぇ~、どうかした? 緋斗」
「……。宿題先にしないか?」
真面目な考えを述べてみた緋斗。こんな所が、兎伊に好かれる一因なのだろう。
そして、本当に宿題を終えてから兎伊の言った番組を見ていた。
二人曰く、演出はなかなかだったが出演者が甘い、そうだ。
「只今の時刻、十二時と三十分、二十二秒を回りました~」
「細かくないか?」
そんなボケツッコミを経て、二人はこっそり高砂家を抜け出た。
向かうは、遷ヶ碕公園。
光る桜、を求めて。
「暗いね~」
「懐中電灯は行きと帰りで一つずつだけだから。仕方ないさ」
緋斗の右手にある懐中電灯の明かりを頼りに、二人は漸く遷ヶ碕公園の入り口にまで来た。
しかし。
「灯り、見えないね」
「…。とにかく、桜の所まで行くぞ」
さくさく、と芝を歩いて木の下まで来てみたが、桜には何の変哲も見られない。
「電気、消して」
「ああ」
兎伊の言葉に、うっかりといった様子で慌てて持ち替える。
かちり、とスイッチの切れる音と共に、辺りには互いの姿をも飲み込む暗闇が訪れた。
何となく、不安になって、緋斗は感覚だけで兎伊の手を探し、繋いだ。
「怖いの~?」
わざとか、それともからかいでか。明るい声で話しかける兎伊に、緋斗は何も答えない。
「だいじょう…」
「来る」
不意に兎伊の言葉を遮って緋斗が何かの訪れを告げる。
繋がった手に、僅かに力が込められた事に気が付いた兎伊は、自分からも握り返す。
と。
ひらり、ひらり。
淡く桃色に光を放つ、何かの欠片が舞い落ちてきた。
同時に、顔を頭上に向けると。
幻のように。
桜の花弁、いや花だけでなく、いつの間にか桜の木全体が光に包まれるように光っていた。
「すごっ」
「綺、麗」
感嘆の言葉をもって、その光景に魅せられていた。
気が付く間も無く。
二人の意識は光る桜の花弁の舞に埋もれていった。
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