4話
無理やり分けて投稿しますので、内容のぶつ切りさ加減はご容赦ください。
そのまま暫くの間、何やら犠牲者も出しつつ盛り上がっていた彼らだったが、周りの注目を集めている事に気が付いて、その上本来の目的もさらっとすっかり忘れている事に気が付いて、慌てて溜池近くのベンチに向かって走った。
「はぁ~、焦った」
「それよりも、恥ずかしかった」
「何かもう、ここにいたくない…。帰りたい…。双葉~」
「まだ話が終わってないのに、帰れる訳ないだろう?」
「お忘れですか? 双夜君。俺達ここに噂話をしに来ているんですよ?」
「あ、…忘れてた」
馬鹿、或いはボケの証明をした所で、兎伊が本筋を切り出した。
「噂の現場に行くって言ってこの遷ヶ碕公園に案内されたって事は、ここの桜の木、なんだね?」
「そうだ。あの桜が噂の中心さ」
そう言って桜を見る双葉に、三人も倣って注目した。
「話は俺からでも良い?」
「良いよ。お願い」
「じゃ、始めます。えっと、これはこの公園が出来た頃からあった事らしいんだけど…」
「そんな前から?」
「今まで聞いた事無かったけど、本当なのか?」
「おそらく、その頃は余り目撃者がいなかったんだろうな。それに、毎回この季節だ。酔っていた事での幻覚、とでも思っていたんだろう」
「なるほど」
「ちょっと、話ん途中で茶々入れない! 気になるなら最後まで聞いてからにしてくれよ」
話し手の双夜が怒ってしまうので、質疑応答は話の最後になった。
「悪い、続けてくれ」
「ったく。それで、目撃者の話をまとめてみると。まず殆どが偶然ここを通りかかった時に見たって言うんだ。この公園、夜は十二時位までしかライトつけてないだろ? 子供が真夜中に夜桜見物しに来ないように」
「そうだな」
「で、真っ暗な筈の公園の中から、微かに灯りが漏れている事に気が付いたんだ。何でだろうって中に入って行くと、そこには。あの桜がぼんやりと光ってるじゃないか!」
あたかも自分が見てきたかのように話す双夜。
「こんな感じの噂なんだけど」
「これって既に噂じゃなくて話だよね?」
「噂話、だろ?」
「ん~、まあ、間違いでは無いだろうな」
「時間帯に制限見たいのは無いのか?」
緋斗が尋ねる。
「真っ暗な中で光ってるのに気が付く、って事は、少なくとも十二時以降だ。それで朝の何時まで目撃されているか。分かるか?」
「なんか学者みたいだね~、緋斗。集めた中だと、二時くらい迄かな」
「二時か~。結構長く光ってるんだね?」
「十二時過ぎてからずっとって訳じゃないから、そんなに長くは無いみたいだ。集中してるのが、間の一時頃」
「一時、か…」
と、考え込んだ兎伊に大丈夫かと言葉をかける双夜だが、返事が無い。
「いつもの如く、ね。緋斗、他に気になる事あるか?」
「大丈夫~、だ。後は、いい」
「そうか。全くそれにしても、こういう話好きだなーほんと。二人ともさ」
「それを言うなら、そっちもよく調べる物だよ。感嘆するね」
「褒めても何もでないぜ~?」
「はは。素直に褒められておけよ」
「ま、こっちは二人のために調べているから。喜んで貰えなければ意味が無い」
「そうなのか」
僅かに目を瞠目させると、緋斗は双葉と双夜の方に体ごと向き直って、真っ直ぐに二人を見た。
その雰囲気につられて二人も居住まいを正すと、緋斗は嬉しそうな笑みを浮かべて言った。
「ありがとう。毎回、こんなに調べて来てくれて。それも俺達のためだって言ってくれる。本当に、ありがとう。これ以上に嬉しい事なんて、そうそうないよ」
余りに真っ直ぐ言われていまい、どことなく照れている様子の二人。
それに緋斗もくすっ、と零し、三人顔を見合わせてベンチの上で苦笑いしていた。
これは所謂、青い春になるのだろうか。
ほのぼのとした、麗らかな春のワンシーン。
そして漸く己の思考から戻って来た兎伊を迎えて、四人は別れを言って帰っていった。
「じゃ~ね~、緋斗、兎伊」
「また明日な、緋斗。気をつけろよ、兎伊」
「ああ、また明日。双葉、双夜」
「ばいば~い、双夜双葉」
双子は勿論同じ帰り道。緋斗と兎伊は家がお隣さん、だったりするのでこれまた同じ帰り道。
そうして、二つに分かれた影は各々の歩みを進んでいった。
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