1話
無理やり分けて投稿しますので、内容のぶつ切りさ加減はご容赦ください。
「おはよ~。調子どうよ?」
「…はよ。見てわかんねぇ?」
「これまた、最悪だね~」
苦笑いをしながら、肩を軽く叩く。
その手を睨み、肩を回して退かすよう促す。
「朝のお目覚めが悪いと、一日が退屈になっちゃうよ~」
何の根拠も考えられない茶化す言葉を無視して、自分の席に着いた。
IN 2-E
高砂緋斗。
現在13歳。
赤みの強い茶色の髪。首と肩の間まである長さで、毛先は軽く遊ばせる様にしている。切れ長という訳でもないが、それに近い目には己の意志の強さが表れている。寝起きの機嫌はすこぶる悪いが、はっきりしている時は頼れる奴、というタイプ。基本はツッコミだが、特定の人々の中ではボケ。冷静な行動力を持ちながら他人の心を解する所もある。
茶化された人だ。
渦谷兎伊。
同じく現在13歳…と12ヵ月と4日。緋斗よりも少しばかり短い焦げ茶の髪。そのさらっとした髪質は女生徒の憧れであり、兎伊の自慢でもある。多少丸味をおびたその目には、決して本心を悟らせない曲者めいた光がある。ボケもすればツッコミもする、お茶目な性格。その場をしっかりと判断するかなり良い観察力(眼)もある。
茶化した人だ。
二人は中学に入ってからの付き合いだった。
初対面のときから、真面目に付き合っていくにも、真面目でなく付き合っていく――悪戯をしたり、何か企んだり――にも、気が合い、最高の親友――悪友?――になったのが始まりだ。
それからというもの、彼ら自身が望んだ訳でもなく学校行事や軽いイベント、例えば誰かの誕生パーティや、普段の生活の中でも、二人はクラスの中心に位置して来た。
それが。
とある日の、とある場所で。
とある出来事が二人に訪れてから。
緋斗と兎伊の不思議に新しい付き合いが始まった。
「次は…、明日の三限目だな。今日教えたこと、忘れないように家でも復習しておきなさい。では、終わります」
「ありがとうございました~」
チャイムが鳴り、先生からの言葉をもらった後。全員の挨拶で1限目が終わった。
各々が次の準備をしたり昨日のテレビの内容を話したりしている中で、緋斗は兎伊と歌について話していた。
二人は緋斗が作詞、兎伊が作曲としてよく歌を作って来た。完成する度に学校の音楽室を借りて発表していたが、これがなかなかの物で、ファンもいたりしてとても盛況だったりするのだ。
「作ったやつ、どれ位になってたっけ」
「今までの全部合わせて?」
「ああ」
左肘を机について掌で頬の下辺りを支えながら、兎伊は思い浮かべるように右手の指を折り数えている。
「まあ、百八十曲ちょいかな」
まず右手だけでは数えられまい。
「そんな訳があるかよ。真面目に考えて言え」
「冗談って大和言葉かなぁ?」
「…そうじゃないかという気はする」
意味のない問いかけに、律儀に少し考えた。
「って、答えてどうする、俺」
「十で割った数だよ~」
しまったと落ち込む緋斗に兎伊は、先程の問いの、真面目に考えた、正確な、答えをくれた。
見物人なしの虚しい漫才を披露していた所に、二人の少年が近付いて来た。
「おはよ、お二人サン。何落ち込んで、なに笑ってるんだ?」
「お早う、緋斗、兎伊。落ち込んでいるのは兎伊の所為。笑っているのは緋斗の所為。たぶんそうだろ」
「そっちもおはよう、双子ブラザーズ。でもって双葉の推測的中ね。おめでと~」
「めでたくない。お早う双夜、双葉。俺今、人生に少し嘆きを感じてる所なんだ」
「そうか…。でも僕が思うに、その感傷はかなり早過ぎる気が…」
「分かってる。けど感じ無いでは入られなくて」
「緋斗、失礼だよ。俺そんなに酷い事したつもりないし」
真顔で兎伊にこんな言葉を言われてしまった緋斗。そんなに酷い事でつもりが無いと言うならば、彼はそれなりに酷い事はしている自覚があるのだろうか。
「そんなことない! 大丈夫だ、緋斗。俺もその気持ちはよ~~~く分かる」
そこへ双夜が握り拳を構えつつ、とっても心の籠もった台詞をくれた。
が。
「双夜が言っても説得力が無いでしょ。駄目だね~」
「何がだよ!?」
「全てだよ?」
非難されている兎伊本人に、微笑みを向けられながら全否定されてしまった。内心かなり傷付いたことだろう。いや、寧ろ怒ったことだろう。
そんな二人を見ていた緋斗に、双葉が話しかける。
「緋斗、僕もお前と似たような位置にいるから。で、さっきの感傷にアドバイスを一つ」
「双葉。何だ?」
「悟れ」
「…分かった、ありがとう」
ものすごく的確かつ悲しい助言だった。
そして更に、こんな二人を見ていた兎伊に、双夜が話しかける。
「なぁ、兎伊」
「何? 双夜」
「俺初めて兎伊と意見が合ったかも」
「珍し~。どの意見?」
「この二人酷すぎ」
つまるところは。
どっちもどっちということか(被害に遭っている分、緋斗と双葉の方が同情できよう)。
二限目の移動教室のため、殆どの生徒がすでに教室から出ていっていた。残るは、彼ら四人とほんの二、三人の姿のみ。
実に和やかな休み時間が過ぎていた。
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