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3章・反抗症候群


俺は……

全てを失った。


あの日。

あの一瞬。

あの子の前で、あんな態度を僅かに、刹那にでもとってしまった。


あの時点で、僕は全てを失ったのだ。



「ごめん………」



何故。

何故そんな言葉が出てきたのだろう。



もっと違う風に言えただろうに…、、

突然でなければ、前以て覚悟ができていたならば、


或はもっと気の利いた行動をとれていただろう。



しかし

その一瞬で全てを失った僕は

それを悔やむ権利はあっても、

それを望む権利はなかった




はずだ。





「なんでこんなことに…なっちゃったんだよぅ……。」





夕暮れの畳みの部屋で四つん這いになり涙を含んだ目を腕に押し付け



俺は泣いていた。



「今…持ってるモノ全部捨ててもいいから………。あの一瞬をやり直したい。取り戻したい。」




あの黒と白のモノトーンな男は


今日、公園で出会う前にも

あの場所で出会ったことがあった。


ちょうど。あの切り裂き魔事件のおかげで学校が休みになった あの日。



夕暮れの公園で、

切り裂き魔に遭遇したら

殺してもらおうなんて考えながら。


自ら命を断つような行動をとることで、自分が他の奴とは違う と主張できる気がしたのかもしれない。



ジュラシックパークでもそうだ。

必要以上。もしくは必要に怯えた人間は真っ先に死んでゆくのが通例だ。

最後まで生きのこるのはヒロインと、異常事態でも比較的冷静に思考する人物だ。

ソイツは死ぬにしても 何かをやってのける。



自分も、冷静に

切り裂き魔の予想を超えてしまえば


特別な存在になれるとでも思っていたのだろうか。



実際あって見れば

怯えるだろうし、もし怯えずに考えた通りに行動しても

切り裂き魔にしてみれば特別でもなんでもない。

ただの死体だっただろう。



「ちっちゃいな。人間というか、……こういうのって…反抗期なのかな」

この年で反抗期と呼ばれることはかなり恥ずかしく感じられた。



「反抗期だねぇ。その年で、自分がそう思うのなら十中八九そうだよ。」




そんな僕が出会ったのは、

黒白でしか表されていない

カラーテレビに映ろうが

白黒テレビに映ろうが大差ないような


その人間の周りまで色を失いそうな


そんな人間だった。




「あんたが…通り魔…?」


先程までの威勢はどうしたんだ。

たのむから

もっと強く、落ち着いて。


たのむから

これ以上、自分に失望させないでくれ




「反抗期………うらやましぃな。僕は生まれてからこの方ずっと世界に反抗してきたからね。反抗期なんて明確に時期分けしたことないんだよね」


話を聞いていないのか?

それとも肯定するに値しない事実だとでも暗に言いたいのか?



「ああ?僕が通り魔なわけないじゃん。パトロールだなあ、どっちかといえば。いやあ、散歩か。」


ただの暇人だよ


と繋げて



「暇人ですか。なら俺より良い。」



「君は反抗期とかじゃないんじゃない?自分にさえ反抗してたらそれはもう…」



「死にたいのかな。でも好きなテレビもあるし、家族だって…大切だし、…これからまだ 取り戻せるかもしれないし…」



死にたいのか、生きたいのか

わからない。自分にも。



「この年で反抗期って……もう自分が自分で嫌になるんだ。通り魔に襲われたら潔く死んでやろうなんてのも…繋げれば根本にあるのは反抗意識………。」




「反抗期を…反抗意識を…反抗を馬鹿にしちゃだめだぜ。


反抗を忘れたら

進化は無い。

反抗しない人間は人間じゃないよ。」


流石は反抗のみで生きてきたという男だ。


死に反抗するのをやめてしまう寸前だった。


あの日あの時。

もし、周りの視線に立ち向かう、反抗する意思があれば。


こうにはならなかったろう。





「なんで…うしな……ってから気づくんだ…よぅ…。」



「…?」

男は表情は余り変えず

首だけを傾げた。


「失ったまま。流されていいのかい?」




「………!え…?」




「反発も抗いもせず、ただ失った事実を受け止めるのかい?」




「そんな…受け入れるしか…ないじゃんか!!」




「《雨通魔》ってしってる???」






あの時。

教えてくれた

あのまじない。



あれはのろいだった。










意識は現在に戻る。



先程まで焼けるように夕日が照っていたのに。


もはや電気がないと周りを確認するのも大変なくらいだ。



「死にたくない。」




願いが叶った瞬間

自分の存在が乗っ取られるのだ。




死ぬ。そう知らされた時に。

自分がいかにカッコつけで

死にたいなんて宣っていのか

よくわかった。



死にたいのか生きたいののか解らない?


当たり前だ。

生きたいに決まってるじゃないか。



「でもでも!願いが叶って死ねるなんてロマンだぜ!男冥利に尽きるっていうか!お前がこの先無駄に生き続けても決して味わえないだろう幸福だ!ポジティブに考えようよ」



白黒の男はそう言った。

楽観的いや、落観的とでも言い換えても良いだろう。




「必ず死ぬってわけじゃないんだし。願いを叶えられないようにしてしまうのも一つの手だし。」



そのために

あの八人の言葉を奪ったんだから。




願いが叶わなければいいのに。


「願いが叶わずに。このまま生きるのか。願いを叶えて自分をやめるのか。二つに一つだね。」





あの男はあまりに究極な決断を提示していた。










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