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51 辺境の教会にはお宝が眠っている

 ハネツグは自分が死んだものと確信した。


 しかし現実は変わらず目のまえに展開していた。


 もしやとキャロラインを見ると、地面にぺたりと座りこみ、毒気をぬかれた顔で「え?なに?」とこちらも生きている。


 なにがあったのか気になり、たまらず鎖の球体ごとふり返った。

 するとハネツグを拘束していた兵士たちや銃殺しようとしていた兵士たちも後方を見ていた。


 そこにはメイドが立っていた。


 頭や胸に包帯をまき、足にそえ木をあて脇に松葉づえを(はさ)んでいるという痛々しい格好だった。

 彼女の手には銃がにぎられていて、空にむいた銃口から煙があがっている。


「ふたりを解放してください」


 疲労の濃い顔に目一杯威嚇(いかく)の色をうかばせてメイドは言った。


 ハネツグが「学者のメイドだ」と言い、同時にとなりのキャロラインが「魔女のメイドだ」と言ってふたりは互いの顔を見た。


 メイドの背後からひとりの男性が走ってきて彼女のそばに立った。


 こちらについてはふたりとも面識がなかったが、この男性もまたメイドに負けず劣らず悲惨な姿である。


 メイドは明らかにそれと分かる親密さで男性に顔をちかづけ何事かを耳うちし、男性は強くうなずいたあと側溝(そっこう)の前まできて兵士たちを眺めわたした。


「ええっと君たち、俺が誰かは知っているかな?」

「もちろんであります」と兵士のひとりが言った。


「盗人街占領作戦の多大なる功労者にして、新政府軍歴代最速の昇進をはたしたユート准将閣下であります」

「うん、そうだ。俺もさっき自分が将軍になったと知って面喰っているわけだが。それはそうと、そのふたりを解放してほしい」


 兵士たちの顔に戸惑いの色が浮かんだ。


「一度でも歯向(はむ)かったやつは例外なく殺すのが新政府軍の鉄則(てっそく)だ。それは分かっている。しかしどうだろう君たち」


 と、ここで勿体(もったい)つけるように言葉を切ってから、ユートは自分が(たまわ)った分不相応(ぶんふそうおう)栄誉(えいよ)を上手に利用した。


「このユートは受けた恩はきちんと返す(たち)でね。それに将軍という立場上、首都の防衛軍や親衛隊といった楽して(もう)かる部署へ君らをねじ込むくらい訳ないのだよ」


 ユートの含みのある言葉に利益のにおいを感じて、兵士たちは彼に敬礼するとその場をぞろぞろ離れて行った。


 メイドはユートにつれ()われながらハネツグたちに近づいた。そして地面にすわり込んでいるキャロラインを見おろした。


「キャロライン、大丈夫?」


 妹を見舞う姉のような親近感あふれる口調でメイドは言った。マジョリカの店で会ったときの石みたいな雰囲気とはまるで違う。


「……ええ」


 キャロラインは困惑気味に答えた。


 メイドはひざを折ってキャロラインと目線をあわせた。それから暖かい笑みをたたえて再び口を開いた。


「辺境の教会にはお宝が眠っている」


 キャロラインはなんの事かと眉をよせる。


「とんでもなく高価なお宝が」


 そこまで聞いて、キャロラインはあっと叫んだ。


「あなたっ!飲み屋のスカベンジャー!」


読んでいただいてありがとうございます。

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