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島の王様の話

 その日は休みだった。

 急な休みだったのでボーっとしてしまった。なぜかと言えば、雇用主が島の北側の仕事に向かったからだ。島の北側は島の人間でないと受け入れられないから行かない方が良いだろう、とのことだった。

 折角早起きしたのにやることがない。すると雇用主の娘さんが、近所のおばあさんが子供たちを預かってお話しするのだが興味あるか、と誘われた。私の研究テーマだし、彼女からのお誘いだ。是非にとお願いすると、お昼からだから家に上がって休むように言われた。何もしないのも悪いのでお昼の準備を手伝った。今日は父親不在なので緊張感はない。彼女と母親の二人と料理を作った。とても楽しい時間だったのであっと言う間にお昼になった。

 彼女に連れられておばあさんの家に行くと、子供たちが沢山集まっていた。その隅に二人で座り、おばあさんの話を聞いた。それはこんな出だしから始まった。




ある国の王様、喋る剣と仲良し。

他にも飛べない、ずんぐりとした体型だけど小さいので仲間外れの竜と

部芸達者な、身の回りを世話する、からくり人形の小間使いがいた。


みんな仲良し。


そこに記憶喪失だと言う、無邪気で子供のような、肌の色が違う小人が現れて、友達になりたいと言った。

王様は彼を受け入れ、家族のように扱った。


まもなく隣の王様が攻めて来て、王様のお城は壊されてしまった。

王様を守ろうと友達たちは戦って、王様をお城の外に出してあげることができた。

隣の王様が帰ったので、王様がお城に戻ると、お城はボロボロに壊されてしまっていた。

王様は友達を探して、名前を呼びながら歩き回った。


小竜よーい

小間使いよーい

我がつるぎよーい


返事はなく、小竜は見つからず、ボロボロに壊れた小間使いを見つけた。

王様は彼女を起こしてあげたが、もう動けない、王様を守ってあげられないと嘆いた。

小間使いが置いていくよう頼むので、剣を探して歩くと、あの小人が、王様の兵隊の持っていた剣をかき集めた剣の山の上に座り込んでいた。

小人は剣の刃を半分くらい飲み込んでは噛み砕き、持ち手の付いた半分を投げ捨てていた。

その中に自分の剣があることに王様は気付き、剣も王様が近くにいることに気付くと、地面に潜ってしまった。

剣が自らを守って逃げた(剣にとっては不名誉であるが)のを見て王様もその場を離れた。

あとで回収することにし、王様は隣の王様の様子を見に行った。


王様が山と山の間の渓谷に差し掛かると、隣の国の兵隊が襲ってきた。

王様は近くの岩の裏に隠れたが、相手は次々に矢を撃ってくる。

王様が身動き取れずにいると、ものすごい勢いで渓谷の壁を走って、兵隊を倒して回るからくり人形が現れた。

それは壊れた人形とは別の、戦えない大人しい人形だったはずだ。

人形は兵隊をやっつけると王様の元にやってきた。

彼女は、壊れた先輩人形から戦えるように技を引き継いだので、彼女と共に王様を守ると宣言した。

王様は大変喜んだ。


王様はまた隣の王様のところへ歩き出した。

今度は巨大な竜が現れ、炎を吹きかけてきた。

王様と人形は近くの鉄の塊の影に隠れた。

でも炎が鉄を徐々に溶かしてしまう。

頭も出せずにいると空から小さな翼を一生懸命動かして飛びかかる者がいた。

ずんぐりとした、お腹の出た小さな竜。

それが自分よりずっと大きな竜に鉤爪を立てて戦い始めた。

大きな竜は堪らず逃げ出してしまった。

小さな竜は、崖から飛び降りながら出ないと飛べないし、突き出たお腹がみっともないが、勇気は人一倍あった。

王様は友達を抱きしめた。


やっと隣の王様の城に辿り着いた。

王様と人形と小竜は、隣の王様のところに行くと、隣の王様は泣いていた。

彼の周りには人一人おらず、またも剣の山の上に座って剣を食べる小人がいた。

王様は、なんでこんなことをあうるのか、と小人に聞いた。

小人は、剣が美味しいからだ、と答えた。

剣を腹いっぱい食べるには争いが起これば良いから、ここの王様に隣を攻めるように言い、そして今度は兵隊達に王様を攻めるように言ったんだ、と言った。

無邪気に笑ってお菓子を食べるように剣を食べる小人を王様は許せなくなった。

誰とでも仲良しの王様にとって初めてのことだった。

でも剣がない。全部小人が食べてしまったから。

するとどうだろう。地面から王様の喋る剣が飛び出してきた。

剣は逃げたが、裏切らなかった。

王様は自分の剣を掴み、初めて人を斬った。

切られた小人はびっくりして森の奥に逃げてしまった。


王様は隣の王様を許した。

そしてもと来た道を引き返した。

朽ちたお城に戻ると王様は壊れた小間使い人形を抱き起こした。

動けず戦えなくなった自分を彼女は捨てるように嘆願した。

自分を守って全てを失った彼女を王様は直した。

王様は見捨てなかった。

王様は直った彼女にこれからもそばにいてほしくてキスをした。


するとどうだろう。人形はヒトになっていた。

彼女は王様を愛していた。

彼女は王様を抱きしめ、共にいることを誓った。


剣は歌い、小竜は踊り、人形は料理を作った。

王様とお妃様は友達に囲まれ楽しく暮らしました。




 彼女の話だと、これは島の北部と南部の昔の争いを今に伝える物語らしい。からくり人形やドラゴン、鉄、そして鉄の剣を食べる小人。SFのようだし、ここに来てからもお城など見たことがない。壊れてしまったのだから後に森に飲み込まれてしまったのかもしれない。ドラゴンは火山の比喩で、鉄の産出がこの島にはあるのだろうか。伝承は作り話ではないことが多く、はるか昔の記憶が形を変えながら現代まで生き続けているものがある。これもその類なのかもしれない。

 なんとなく、南部の王様が物語の主人公で、北部が攻めてきたときの話ではないかと推測もできる。山脈の間を通る道は切通しのように切り立った崖の間を走るので、そこを通って北の王に会いに行けたのだろう。余所者を温かく受け入れる南部と、受け入れない北部。いつか北部に行き、泣いてた王様のお城や、森の小人に会えるのだろうか。

 隣に座る彼女がどうだったかと言うので、とても良い話だった、紹介してくれてありがとう、と返す。また来ましょうね、と微笑んでくれた。この島に来てよかった。夕飯の準備も手伝うよ、と一緒に家に向かって歩くのだった。


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