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三姉妹の話

 仕事を終えて家に戻り、家主の一家と夕食を食べていた。彼らには年頃の男の子が居り、学校に通う学生で、独特の汗臭さというか甘ったるい臭いがする。他にも女の子もいるが、彼が一番活発で元気があり社交的なので夕食の席の中心は常に彼だった。彼には付き合いたての彼女が居て、島の学生のデートの様子は非常に若々しく可愛らしい。学校へはバスで通っているため余程のことがない限り付き合っていることは周囲に知れ渡ることはない。両親も付き合っている彼女に会ったことはなく、島の伝統として未成人の付き合いは婚前交渉などもっての他であり、気が気ではない空気は感じる。それでも彼は楽しそうにデートで公園を散歩した話などを聞かせてくれる純粋な少年だった。そんな彼が思わず彼女の家に入ってしまった話をした。




 放課後、持ち帰る物あった彼女の代わりに荷物を持った彼は、彼女の家に行くことになった。

 彼女の家は二階建てのコンクリートブロックを積み上げた広い家で、一階のピロティから階段で上がったところに居住スペースがあった。

 荷物を持って階段を上がるが、彼女は玄関を通り過ぎ、その先の吹き抜けのようになった場所に向かった。そこにあった階段を更に上ると小さな扉があった。そこを潜ると広い屋根裏部屋に出た。斜めの屋根がそのまま天井になっており、僅かな壁には窓が開いていた。そのため採光は良かったらしく意外にも最初は眩しかったらしい。

 中には3つの布団があり、真ん中の布団が盛り上がっていた。彼女のスペースは一番奥の方で、そこまで荷物を運んであげると、真ん中の布団から人が出てきた。彼女は三姉妹で、彼女は長女、布団から出てきたのは一つ下の妹さんらしい。

 寝巻姿の妹さんに驚いて、大急ぎで目を逸らしつつ、急いで部屋から出た。後から追ってきた彼女からは荷物を持ってくれたことを感謝されたが、どうして姉妹であんな部屋に住んでいるのか気になった。彼女の親は玄関から入るのに、彼女たちは切り離された屋根裏部屋で暮らしているだなんて。でも、広いし、天井も高かったし、日光も入っていたので、彼は少しだけ興奮し、秘密基地みたいでうらやましかったと言った。




 確かに妙な話ではある。三人の年頃の娘が親の目の届かないルートで自室に戻る。しかも屋根裏部屋だ。聞く限り外と隔てるのは小さな扉だけだ。不審者が来たらどうするのか。彼の両親は息子が手を本当に出してないのか気にしているためか、不用心な家の構造は話題にならなかった。

 彼が部屋に戻った後で父親の方に疑問をぶつけてみた。すると恐らく両親は再婚しており、三人の娘はどちらかの連れ子であろうと返ってきた。この島では再婚は良くあることだし、子供を隔てなく愛するが、一方で血のつながらない子を距離を置いて育てるのが一般的らしい。血のつながらない親に対し信頼を寄せれば共に暮らし、亡くなった親への愛情を捨てられないなら無理に捨てさせず距離を置く。亡くなったとしても親の魂は島に帰る。その魂は森の木に変わり、子供たちを見守り続ける。それ故、親への思慕を捨てないことは島では美徳とされ、新しい親は尊重し、彼らが成人し、新しい家族を持つまで責任を持って育てるのだ。

 私の故郷では連れ子を殺したり、逆に手を出してしまうなんて事件があるが、この島の人間は子供たちをかなり早い段階で大人として扱っている。子供たちを守り育てるのが親の責任であり、拘束するものではない。だから子供を信じて敢えて距離を置く。実に凄い教育方針だ。私もそんな親になりたいと思うが、一方で島の大人たちのモラルが高いからこそ成り立つ社会ルールでもある。多様性というのを考えさせられる話だった。

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