創世の話
いつものデートコースと化した、老婆の家にやってきた。彼女と二人で子供たちの邪魔にならないよう端に並んで座り、子供たちが落ち着くのを待つ。しばらくすると子供たちも聞く準備が出来たので、穏やかな口調で語りが始まった。それは彼らの創世の物語だった。
三人の戦士がいた。
一人は男。輝くカードを投げて戦う冷静な戦士。
一人は女。主人に忠実な剣を振るい戦う勇猛な戦士。
一人は獣の顔を持つ男。強固な鎧を纏って爪で戦う仲間想いの戦士。
彼らはここからずっと、ずっと遠い星に住んでいた。
その星の暗い海から湧いて出る敵と戦い、数多の勝利をもたらした英雄だった。
それでも敵は次々と現れ、多くの者が死に、次第に人々の住む場所は狭くなっていった。
生き残った僅かな人々は星から逃げるために大きな鉄の船を作った。
彼らは最初に神様を乗せた。続いて人々が乗った。
その間も敵は次々と湧き出し、地平を覆い尽くしていった。
三人の戦士は人々が乗り込む間、敵をその強力な力で倒していった。
輝くカードを投げると、それは美しい弧を描いて飛び、敵を一掃すると手元に戻った。
剣は主人に戦況を伝えると、女戦士は敵の群れに飛び込んで剣を振るい屍の山を築いた。
獣の戦士が敵に突撃すると、鎧の放つ光に呑まれて敵は粉々になった。
だが、敵は多く、際限なく湧いてきた。
最後の人間が船に乗り込むと、獣の戦士は男と女の戦士に船に乗り込むように言った。
彼らも何とか船に乗り込むが、獣の戦士は敵に囲まれながら船が飛び立つまで戦うことを選んだ。
彼にも乗り込むように伝えたが、彼の光は更に強く輝き、敵の群れの中に飛び込んでいった。
その輝きが暗い海に飲み込まれていくのを見ると、二人は船を空に向かって飛ばした。
真っすぐに、星の輝く空に船は昇っていく。
夜の闇が彼らの星を飲み込んでいくが、彼らの鉄の船は空を駆け、夜の闇の手から逃れた。
彼らは長い時をかけ、夜の闇が届かぬ星に辿り着いた。
神様は水の星に大地を作り、船はそこに降りた。
人々はそこに住み、子を成し、我々が生まれた。
まるでノアの箱舟だ、と思った。ただ、随分とSFのような話でもある。以前の島の王様の話では鉄の存在があった。この話でも鉄の船が出てくる。ネイティブの人々は、港の人々とは異なり、島で長いこと暮らしてきた。彼らがどこから来たのかは分かっていないが、彼らはここではない他の星から来た、と伝えているのだ。世界には多くの神話で洪水の描写があり、僅かな大地で暮らし始めたことが共通している。洪水の描写こそないが、大地をそこに見出した点で共通点がある。受け継がれる話には真実が多く含まれるが、この島の話は突拍子もないものが多い。だが、それを信じて目を輝かせる彼女を見て、その疑念は胸の内に仕舞うことにした。




