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不良と噂の獅子道くんは、  作者: 新羽梅衣
心の窓

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 春といえば、何かと決めなければいけないことが多い季節。委員会もそのうちのひとつだ。ロングホームルームの時間、野井ちゃんが早々に体育委員に立候補するのを横目に、部活に集中したいし委員会は入りたくないなぁ、と他人事のように考えながら、俺は窓の外のグラウンドをぼーっと見つめていた。



 「残り半分か。最初にも説明したが、前期と後期で全員必ず一回は委員会に参加してもらうからな。よーく考えて選択するように」

 「(……え、)」



 やる気のある人がすればいい、自分には関係のないことだと、ずっと聞き流していたのが悪かった。その言葉を聞いて反射的にバッと視線を前に戻すと、運悪く担任と目が合う。目の奥が笑っていない担任を前に、へらと引き攣った愛想笑いを浮かべることしかできない。バレている、俺が話を聞いていなかったって、絶対にバレている。


 黒板に書かれた委員会の一覧。もう人気どころと楽そうなところは大体埋まっている。そりゃそうだ。さっきまで何でこんなに手が上がるのだろうと思っていたけれど、みんな楽な委員会にしたいだろう。さすがに出遅れたし、後期で挽回するか。そう思いかけたところで、楽そうな委員会なのにまだ名前が埋まっていないものがあることに気づく。それがなぜなのか、理由なんて考える余裕もなく、俺は勢いのままに「はい」と手を挙げた。



 「蓮水、立候補か?」

 「はい、保健委員に立候補します」



 そう言った瞬間、クラス中がざわついた。担任の咳払いですぐに収まったものの、よっぽど話のネタにしたいのか、女子たちは目配せしてテレパシーで会話している。



 「他にいなかったからな、蓮水で決まりだ。ありがとう」



 担任の言葉を聞いて、また傍観者に戻る。これで問題なし。ぽかぽかとした春の陽気に誘われて欠伸をしていれば、担任が俺の名前を黒板に書いている隙に後ろを振り返った野井ちゃんが口パクで何かを伝えようとしているのが目に入った。



 「(ん?)」

 「(あ・く・ま!)」

 「(……あ、)」



 たった三文字、それだけで全てが伝わった。どうして保健委員を誰もやりたがらなかったのか。答えは簡単、みんなが恐慄いている悪魔がいるからだ。野井ちゃんは、噂すら知らなかった俺を心配してくれているのだろう。


 だけど、そこまで俺は気にしていない。もし獅子道くんが「保健室の悪魔」張本人なら、きっと大丈夫。だって、俺は知っている。あの人は悪魔なんかじゃない。優しい心の持ち主だってことを。


 もしかして、獅子道くんも保健委員なのだろうか。それなら、また会えるかもしれない。そう考えている自分にハッと気づくまで、口元は少し緩んでいた。



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