表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不良と噂の獅子道くんは、  作者: 新羽梅衣
妬みと嫉み

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

43/43

5


 「かおちゃんってあんなやろ。昔から綺麗な顔しとったから目立つし、みんなの人気者でな。せやのに、幼馴染みってだけで鈍臭い俺の世話をようしてくれとって、事ある毎に助けてもらっとった。こんな人気者が俺の幼馴染みなんやって誇らしかったんやけど……。たぶん、かおちゃんにとっては違うかったんやね。セットで扱われて、鈍臭いのが後をついてくるの、鬱陶しかったんやろなぁ」

 「…………」

 「かおちゃん……、ほんまはずっと俺のこと……、嫌い、やったんかなぁ」

 「そんなこと、」

 「ふふ、分かっとるよ。冗談やで」



 昔を懐かしむみたいに話す獅子道くんは、きっとこれまでのことを思い出しているのだろう。


 そして、独り言のように零された言葉に思わず立ち上がりかけると、獅子道くんは寂しそうに笑って首を振った。本気で嫌っていたら、獅子道くんの手を繋いだ俺をあんな風に睨みつけたりはしない。


 きっと、彼は俺と同類だ。

 ただでさえ歴はあっちの方が長いのだから、敵に塩を送るなんて真似はしたくないのに、今は傷付いている獅子道くんの心を少しでも癒したくて、必死だった。



 「薫さんには言わないんですか」

 「今の俺のこと? 言わん、言えんよ」

 「…………」

 「転校してきた初日にな、クラスのみんなのドン引いた顔見て『あ、間違えたな』ってすぐに分かったんよ。やけど、かおちゃんが俺に間違えたことを教えるわけないって、頑なに意地張ってた俺がアホやってん」

 「獅子道くん……」

 「行かなあかん、遅刻するって頭では分かってるのに、ある日突然学校に向かってた足が止まってな。俺の居場所って、家にも学校にもないんやって思ったら……、教室にはもう行けへんかった」

 「…………」

 「髪色変えるとか、自分から話しかけてみるとか、そうやっていくらでも取り戻すことはできたのに、そうしやんかったのは俺のせい。かおちゃんは悪くない、やから絶対に言わへん。これ以上、迷惑かけたくない」



 薫さんが言ったタチの悪い冗談のせいで、獅子道くんはこんなに苦しんできたっていうのに。それでも尚、薫さんを責めようとはしない健気な姿に、俺の方が苛立ってしまう。


 だけど、そのあまりにも優しすぎるところを好きになったから、「薫さんと関わることをやめた方がいい」と止めるのも、獅子道くんを否定するみたいでしたくなかった。不貞腐れた俺の顔を見て、獅子道くんが柔らかな笑みを零す。



 「蒼人くん、そんな顔せんといてや。……って、俺のせいか。俺、昔からアホやって言われてきたんやけど、何でも素直に受け止めすぎやね。気を付けんと」

 「さっきも言ったけど、獅子道くんはそのままでいいんです」

 「…………」

 「まっすぐで、素直だなんて、長所でしかないじゃないですか」

 「そうやって言うん、蒼人くんぐらいやで」

 「俺の言葉だけじゃ足りないですか? 俺は獅子道くんのそういうところ、好きですよ」

 「っ、」



 貴方が自分を肯定しようとしないのなら、その分いくらでも俺が褒めて、認めてあげる。だから、無理に変わろうとはしないで。そのままの獅子道くんがいいのだから。


 俺の言葉を聞いて、とうとう我慢しきれなくなったのだろう。少しずつ潤んでいた瞳から、ぽろりと涙が零れ落ちる。宝石みたいにきらりと光っているのを見て、ひどく綺麗だと思った。



 「そんな軽々しく『好き』とか言わんといて……」

 「え?」

 「……なんでもない」



 か細い声で吐き出された言葉が知りたくて聞き返すと、涙を拭いながら誤魔化される。やっと吐き出された本音すら、俺はまともに拾えないのか。自分の不甲斐なさに腹が立つ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ