2
部活を終えたって、気分は沈んだまま。気が散って集中力に欠けたせいで、全然ゴールを決められなかった。調子は絶不調。自業自得だって分かっているのに、獅子道くんが待っていなかったらどうしようって不安に駆られる。昼休みが終わる前にメッセージは送ったけれど、既読だけついたまま、未だに返信がない。
度の過ぎた意地悪は止めようと反省しながら、足取り重く裏門に向かうと、見慣れた金髪がぽつんと座っている。たったそれだけで雲の隙間から陽の光が射し込んだみたいにぱあっと気分が晴れるのだから、俺ってかなり単純だ。
駆け足で近寄れば、足音に気づいた獅子道くんが振り返る。その頬は不機嫌に膨らんでいて、まだ怒っているのだと一目で分かった。獅子道くんが口を開くより先に頭を下げて「すみませんでした」と謝罪すれば、今度は獅子道くんが慌てる番だった。
「ちょ、こんなとこでやめて。もう怒っとらんから、顔上げて」
「…………」
「あんな風に他人に触れたらあかんねんで」
「……あんな風にって、こんなかんじ?」
散々反省したくせに、舌の根も乾かぬうちにするりと耳朶を撫でると、顔を朱に染めた獅子道くんがぷんぷんと怒り出す。
「っ、こら! やから、したらあかん言うてるやろ」
「獅子道くんにしかしませんよ」
「そういう問題ちゃう。もぉ、ほんまに、蒼人くんが何考えてんのか分からへんわ……」
健全に不健全なことを考えてますよ。
俺だって、思春期真っ盛りの男子高校生なので。
……とは、さすがに口に出さなかったけれど、俺が何を考えているか察したのか、獅子道くんにはじとりと睨まれた。にっこりと綺麗な作り笑いを浮かべて誤魔化せば、それ以上の追及はされなかった。きっと獅子道くんも学習したのだ。下手に口を出すと、薮から蛇が出てくるんだって。
「さぁ、帰りましょう」
「調子ええんやから……」
獅子道くんが呆れたようにぼやく声を聞きながら、ふと思いついたことを尋ねてみる。
「そういえば、獅子道くんって、休みの日は何してるんですか?」
「んー、別に何もしとらんよ。近所の図書館に行って、勉強するぐらいかなぁ」
「へー、じゃあ今度部活が休みの日、俺に一日ください」
「えっ!?」
「どこかお出かけしましょう。行きたいところ、考えておいてくださいね」
「……うん」
いきなりの提案だというのに、しみじみと噛み締めるみたいに頷かれると、こっちの調子が狂う。嬉しそうに頬を紅潮させているのが、たまらなくかわいい。本当は試合を観にきてほしいって誘いたかったけれど、それはまた今度。
あーあ、早く練習休みの日が来ないかな。高校に入学して以来、こんなことを考えたのは初めてで、自分が思っている以上に俺は初恋に浮かれているらしい。




