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「……好きって、何なんだろう」
「難しいよね」
「……うん」
「別にさ、そこに正解なんてないと思うよ。百人いれば百人それぞれの愛し方があって、恋の落ち方だってみんな違うだろうし」
「野井ちゃんは?」
「えー、何だろう。なんかちょっと照れくさいな。俺も最初はかわいいなぁとか、さりげない気遣いがいいなぁとか、そういうありきたりなところから始まった気がする」
「へぇ……」
「だんだん自分にしてほしいって思うことより、相手にしてあげたいって思うことの方が増えていって、ずっと隣で笑っていてほしいなって思った瞬間に『あ、俺、この子のことが好きなんだ』って気付いたかなぁ」
ほんの少し恥ずかしそうな様子を見せながらも、淡々と思い出話を口にする野井ちゃんにこっちの方が余計に照れてしまう。
「蒼人はどう? 今、頭に思い浮かんでる相手のこと、どんな風に思ってるの?」
「その人は、俺なんかと違って、純粋で素直でまっすぐで……。何やってても、かわいいなぁって馬鹿の一つ覚えみたいに思っちゃう」
「うん、それで?」
「笑ってくれたら嬉しいし、辛い時は守ってあげたいと思うけど、でも、ずっと俺だけに笑顔を向けてくれたらいいのにって、そんな酷いことを考えている自分がいるのが、これは真っ白な恋ではないんじゃないかって思っちゃって……。なんかもう、よく分かんなくなってきた」
名前が付けられない感情のやり場にモヤモヤが溜まって、羞恥心を凌駕する。半日中、同じことを考えていたせいでキャパオーバー。言わなくていいことさえ、野井ちゃんのオーラに釣られて白状してしまった気がする。
言い過ぎてしまったかもしれないとほんの少しだけ後悔していると、とりとめのない話を聞き終えた野井ちゃんがふっと笑みを零した。
「それ、答え出てるじゃん」
「え……?」
「蒼人のそれは完全に独占欲だよ」
「独占欲……」
「好きだから自分だけを見ていてほしいと思うし、他の人と仲良くしてほしくないって思うんだよ。その人の中で、自分を一番にしてほしいから」
「…………」
「まぁ、今ここで俺が何を言ったって、最終的にその感情にどんな名前を付けるかは蒼人の自由だから。その人のことを考えながら、ゆっくり悩みなよ。別に悪くないでしょ? その人のことを考える時間は」
野井ちゃんに言われて、すとんと腑に落ちた。本当はずっと気づいていたはずなのに、はぐらかして、見ないようにして、その感情の正体を確かめようとはしなかった。
獅子道くんのことを考えれば、心の中が暖かくなる。これって、きっと、そういうことだ。




