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さては獅子道くん、勢いのままに言葉を紡いだから、自分が何を言ったのか、ちゃんと分かっていないな。まぁ、つい口から出てしまったってかんじだったからこそ、更に俺を喜ばせているんだけど。
獅子道くんの漏れた本音を緩んだ顔で噛み締めていれば、相変わらず顔を隠そうと必死になっている金色の小悪魔。ぐいっと身を乗り出して顔を覗き込めば、潤んだ瞳と視線が重なった。
「駄目ですよ、俺には見せてください」
「ちょ、近いって……。もっと離れてや」
「獅子道くんが隠し事をしないって約束してくれるなら離れますよ」
「分かった、約束するから!」
今まで見た中で一番と言っていいほどの焦り具合をもう少し見ていたかったけれど、さすがにここは引き下がるしかない。もったいないなぁと残念に思いながら元の位置に戻ると、安堵したように獅子道くんが息を吐きながら呟いた。
「何でこんな俺に構うん……」
「んー、獅子道くんのいろんな顔が見たいからかなぁ」
「顔……?」
「最初は笑った顔がかわいいなあって思ったのがずっと記憶に残ってて……。でもそれだけじゃなくて、いっぱいいっぱいになって照れてるところもかわいいし、今みたいにツンツンしてるところもかわいいし。なんか、ふとした時に獅子道くんのことを考えてる自分がいるんですよね」
窓の外を眺めながら、あの日のことを思い出す。感情のままにくるくる変わる獅子道くんの表情は、見ていて飽きない。その表情の変化を一分一秒も見逃したくはないのだ。独り言のように獅子道くんに構いたくなる理由を述べれば、獅子道くんは再び顔を真っ赤にしながら嘆いた。
「蒼人くんがこんな構いたがりやと思わんかった……」
「ふふ、元々そういう気質があったんでしょうね」
「……知ってたら、近寄らんかったのに」
「本人を前にして、酷いこと言いますね」
「やって、サッカーしとるときはもっと真面目に、ひたむきに頑張っとるやんか」
「別に今だって、真面目に獅子道くんと仲良くなろうと思ってますよ」
「うう……、やけど、なんかイメージとちがう……」
遠慮のない発言に少し失礼だなあとは思うけど、こんなことで怒りはしない。実際、自分でも他人に対してこんな風に執着したことがないのだから、獅子道くんが戸惑うのも当然だ。
「こんな俺は嫌ですか?」
「……ずるい聞き方せんといて」
「俺はただ、獅子道くんに嫌われたくないだけですからね」
「はぁ……、ほんっま、そういうとこや……」
「え?」
「なんでもない! ……もう、そんな簡単に嫌いになれへんから。蒼人くんは、好きなようにしとったらええよ」
「…………はい」
――じゃあ、俺を好きってことですか?
そんな軽口を思いついたものの、ついぞ口からは出てこなかった。それだけは茶化すように言ったら駄目だと、本能が告げていた。




