1話 Re:start
出会った瞬間より、『別れよう』と言った瞬間の方がキミを愛していた。
私はこの言葉が痛いほどわかる。
だって別れて1年経った今も彼を愛してしまっているから。
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「な、なんで俺…?」
そう戸惑う彼の顔を今でも覚えている。
時は3ヶ月前、生徒会長選挙の公募時期の事。
私は応援演説を誰にしようかと考えていた。
親友の如月 彩羽にしようかと考えたが彩羽には普段から沢山助けられてるため、他の人にしたい。
「…奏樹」
ふとでてきた名前を口にする。
奏樹とは1年ほど前に付き合っていた元彼、空音 奏樹の事。
色々あって別れたが私はまだ彼のことが好き。
だからこんな時にも名前が出てきたんだろう。
奏樹は人望もあるしできるのであれば応援演説を任せたいところではある。
だけど気まずいし断られそうで前回も頼めなかった。
「我ながらヘタレすぎるな…」
と自分に嘲笑する。
生徒会に入る度胸は持ってるくせに、こういうところはまだまだヘタレである。
「はぁ…本当にどうしよう…」
結局応援演説は誰にしようか…
前回みたいに彩羽に頼むのもありかもしれない、
だけどこれ以上迷惑はかけたくない。
…なら、勇気を振り絞って誘ってみようかな、奏樹の事。
そうして私は奏樹に応援演説を頼み、たくさんの言い合いの末、無事に応援演説をしてもらえることになった。
好きな人と距離を縮めれた事、そして応援演説が決まったことが嬉しくてその日はケーキを買って帰った。
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これが私率いる79期生徒会の始まりである。
そして、私と奏樹の恋愛が再び始まった時の話だ。