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Perpieta  作者: 大治
9/11

裸足の聖者 (3)



「ひとつ聞かせてもらおう。我々に何ができる?剣一本なくモンスターと戦えと?それはあまりにも過酷ではないか…?」

乞食たちから聖者と呼ばれる老人。身なりはやつれていたが、その目だけは爛々と輝いていた。


「下水道の掃除や家の修理など、やろうと思えばいくらでもあるでしょう。」


「昔はそうだったな…ついてくるかね?見せたい場所がある。」

老人はそう言うと、私の返事も聞かずに身を翻し、路地裏へと入っていった。私は少し迷ったが、何も言わずに老人の後を追った。


「昔、獅子心王アンリ・マリー・ド・ノスフィリアの行列があってな。」

私が後をついていくと、老人は話を始めた。


「喜びに満ちているべき凱旋式で、突然家が崩れたんだ。しかも、運悪くそれが皮なめし職人の家だったのさ。家が崩れると、皮を染めていた赤い水が四方に溢れ出した。そしてその水が王の行列を阻んだ。しかし、王は一度咳払いをしただけで、その赤い水を避けて静かに横を通り過ぎていった。大したことではなかった。いや、実に慈悲深い行動だった。もし彼が悪人であったなら、きっとその皮なめし職人を叱責しただろう。しかし、彼はただ何も言わずにその赤い水を迂回しただけだ。ところが翌日、奇妙な噂が広まったんだ。」


「どんな噂ですか?」

私が適当に相槌を打つと、老人はにやりと笑った。


「行列を妨害したことに王が激怒し、今後は建築に関する許可や規格、材料などを全て含んだ建築法を制定し、それは全てギルドを通さなければならず、今ある家も検査を受けなければならないということだった。安全のために検査を通過できなかった建物の場合は、建て直したり修理したりすることもまたギルドが引き受けると言ってな。」

見慣れた汚い路地を歩きながらも、老人の足取りにはよどみがなかった。そして、途中で老人を見て礼をする乞食たちもいた。


「すると民衆は怒った。神が虐殺を犯した王を糾弾するために家を崩し、その血のような赤い水を撒いたのだとか、だから王はただ踏んで通ればいいものを恐れて迂回したのだとか、王が税金をさらに徴収するために仕組んだショーだとか、とんでもない噂が広まった。しかし、実際にはそれは宰相と公爵たちが手を組んで議会で可決した法案だった。その議会には当然ギルド長たちも属していたから、そんな悪法を作ったのさ。」


「建築法を作ったことが悪法だというのは、少し無理があるように思いますが。」

もっともな言葉だとは思ったが、とりあえず反論してみた。


「ほっほ。そう見ることもできるな。しかし、その法律をどの時代に、誰が、どのように使うかによって悪法にもなりうるのだよ。彼らは他のギルドが作られないように妨害し、新しい技術が出るとそれを真似たり、だめなら雇ったり、もし拒否すれば暗殺したりした。今ではそれさえ面倒になったのか、全くギルドに所属していなければ仕事さえできないようにしてしまったのだ。猫に魚を預けるようなもので、それがうまくいくはずがないだろう?結局、誰が得をしたのか考えてみるがいい。そして、裁判官の連中も全員議会の犬となって彼らの足を舐めているのだから、国が乱れ、民が塗炭の苦しみを味わうのは当然のことだ。あの皮なめし職人の家を崩したのも、間違いなく奴らの仕業だ。いつもそうやって王を陥れ、議会の連中が利益を得てきた。さあ、着いたぞ。」


そこにはかなり多くの子供たちがいた。みすぼらしい建物の中からは、子供たちが何かを学ぶ声が聞こえ、剣術を学ぶ子供たちもいるようだった。


「枢機卿様…あの方は?」

「そういえば、君の名前は何というのかね?」

「シルバーステルと申します。」

「そうか。私の客だ、下がってよろしい。」

「はい…」


枢機卿とは。どの宗教かは分からないが、間違いなく偽物だろう。そして彼は私の心の内を察したのか、再び言葉を続けた。


「ここは子供たちを教える場所だ。ここで教育を受け、保険屋や公職を得た者たちが送ってくる後援金で運営されている。」


こんな団体を作って、自分はきっと裏金を受け取っているのだろう。

「なるほど。一つだけお聞きします。城の外にはとてつもなく広い空き地があります。その後援金で人々をその土地へ送ればいいのではありませんか?」


「その通りだ。君の言う通りだよ。我々もそれを考えなかったわけではない。実際にやってみたこともある。しかし、彼らは一人残らず、いつも、全員がモンスターの襲撃を受けて死んだ。もちろん、それが本当にモンスターの仕業なのかさえ確認できなかった。監視員がいなくなるといつも襲撃されるか、あるいは監視員も一緒に死ぬかだ。そこで考えてみた。一日中畑で働いて、やっと一食にありつける今の悲惨な状況を維持すれば、誰が得をするのかをな。結局、我々は彼らの奴隷なのだよ。そして、奴隷が逃げるのを黙って見ている主人はいないだろう。」


「…国が滅びれば、彼らも無事では済まないでしょうに。」


「だが、もし彼らが敵国から送られた者たちだとしたら?もちろん、国がどうなろうと、彼らに従う貪欲にまみれた者たちもいるだろう。また、ある者はただこの国が憎くて、滅びる様を見たいだけなのかもしれない。」


ある程度、筋の通った話だった。


「ふふ。君が私を疑うのも、ある意味当然だ。そういう世の中だからな。それならば言ってみなさい、どうすれば君は私を信じることができるかね?」


「いいえ。その必要はありません。私は私の道を行きますし、貴方は貴方の仕事をすればいい。ひとまずは、良いことをされていると信じましょう。どうかその初心が変わらないことを願います。もし、その子供たちを虐げているという話が聞こえてきたら、その時は私がここを訪れることになるでしょうから。」

私は柄から親指で剣を少し持ち上げ、再び下ろしてカチリと音を立てた。


「な…なんてことを!!!」

その老人を枢機卿と呼んでいた偽信者の男が、横で目に血走らせながら私を指さした。


「やめなさい。」


「それでは、これで失礼します。」


「少し待ちなさい。この老人の頼みを一つだけ聞いてはくれんか?私のためではなく、あの子供たちのためだ、聞くだけでも聞いてほしい。」


「…何でしょう?」


「最近、誘拐事件が増え続けている。先ほども言ったように、仕事もなく食べるものもないので、人身売買が横行し始めたのだ。」


「ぷっ。それで、誘拐犯でも捕まえてこいと?」


「うむ…その通りだ。」


「依頼料は?」


「ない。ただ、君の憐れみを請うだけだ。」


「どこか他所で探してください、偽物のご老人。そういう、うまくいけば儲けもの、だめでもともと、といったような、できもしない頼み事をしながら、見せかけだけの言葉で人々を騙してきたようですが、私には通用しません。私が若いからと甘く見られたようですが、私は幼い頃から商人や詐欺師にさんざんやられてきたので、一目見れば分かるんですよ。」


「こいつ、こいつ…よくも枢機卿様に向かって!」


「やれやれ…あんたも、あのじいさんに搾取されるのはもうやめて、少しはしっかりしなさい。」


「はぁ?はっ!はははははははっ。君がここまで来たのは、王と貴族の派閥のうち、どちらにつくか悩んでいるからではないか?」

その老人が、遠ざかっていく私に向かって叫んだ。


「すぐに運命が君を訪ねてくるだろう。その時が来たら、もう一度この子供たちのことを思い出してくれ!」


まったく、詐欺師らしく勘がいい。だからあそこで枢機卿と呼ばれながら、自分は働きもせず他人の上前をはねて生きているのだろう。


その後、王と貴族たちが何をしたのか調べるために図書館を探したが、彼らはほとんど図書館が何かも知らなかったので、見つけるのにかなり時間がかかった。調べてみると、図書館は貴族が運営するか、王室、アカデミーが運営しており、閲覧は彼らにのみ許可されていた。エオス城とはあまりにも違っていたので、私は仕方なく兵営に戻り、ルワンダを呼んで役に立ちそうな奴を呼んでもらうことにした。


するとしばらくして、ラクロワ・ルートヴィヒという女性の部隊員が部屋に入ってきた。

眼鏡をかけ、赤色の長い髪をした…ん?長い髪??


「ウィッグです。城の中でそんな格好で歩き回るわけにはいきませんから。」

「なるほど…」

勘のいい奴らはこれだから面倒だ。彼女は私が座れとも言わないのに、私の前の席にゆっくりと腰を下した。


「ふむ。」

彼女は何も言わずにじっと私を見つめていた。その眼差しは、商人が幼い私を見つめていた時のそれと同じだった。値踏みする眼差し。喉が渇いてきて、とりあえず水を飲んだ。詐欺師のじいさんもそうだし、首都の奴らは面倒だな…こいつはまた、私に何を望んでいるんだ?眼鏡をかけた赤毛の少女。その傲慢な眼差しを避けずに見つめ返したが、これ以上沈黙に耐えられなくなり、私から先に口を開いた。

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