表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
85/101

第六節「プロメテウス開戦 ~その3~」 

轟音が響き渡った。

 氷と炎がぶつかり合い、神殿の石壁が溶け、凍り、そして砕け散る。互いの力が拮抗し、一歩も引かぬまま、ただ破壊だけが広がっていった。

 だが、先に均衡を崩したのは――炎だった。

 「――燃え尽きろォッ!」

 プロメテウスが怒号と共に拳を振り下ろした。炎が渦を巻き、巨大な火柱となってアリスへ襲い掛かる。

 氷の女王と呼ばれるアリスであっても、その熱は全身を焼き尽くすほどだった。結界が鳴動し、白銀の盾がひび割れる。あと数瞬で砕け散る――。

 その刹那、影が割り込んだ。

 「退けェッ!」

 ザックの咆哮。

 拳を振るい、影すら焦がす炎を無理やりはじき飛ばす。炎が爆ぜ、衝撃波が走る。だがザックの腕には焼け焦げた跡が浮かび上がっていた。

 「アリスを殺させはしねえ……!」

 苦痛に顔を歪めながらも、ザックは一歩も引かない。

 その横でリューが駆ける。模倣者の眼が、アリスの氷とプロメテウスの炎を同時に映す。

 「……なら、合わせてみせる!」

 リューは両腕を突き出した。氷と炎、相反するはずの力が彼の中でねじれ、せめぎ合い、そして一瞬だけ調和する。蒼炎を纏った氷の槍が生成され、プロメテウスへと放たれた。

 「なに……?」

 巨躯が初めてたじろぐ。槍は肩口をかすめ、灼熱の肉体に白い傷跡を刻んだ。ほんの表皮を削っただけ。しかし――確かに傷を与えたのだ。

 「やれる!」

 カイが叫ぶ。その声に呼応するように、影が爆ぜた。

 「メギ……また勝手に!」

 カイの背後から伸びる黒影が、無数の刃となってプロメテウスを貫こうと襲い掛かる。しかし怒れる炎の巨人は腕を振り払うだけで影を焼き散らし、カイ自身を吹き飛ばした。

 「ぐあああっ!」

 壁に叩きつけられるカイ。呻き声をあげる彼に、プロメテウスの眼が向けられる。怒りと憎悪に満ちた眼光が、ただの人間など塵としか見ていないことを雄弁に語っていた。

 「憎い、憎い、憎いッ!!人間ども――我が炎で灰と化せ!」

 神殿が揺れる。崩落の音が轟き、天井から瓦礫が雨のように降り注ぐ。そのすべてが炎を帯び、避ける暇もなく焼き払われる。

 「下がっていろ!」

 アリスが声を張り上げる。氷の結界が再び張り巡らされ、瓦礫を凍らせ、仲間を守った。

 しかしその代償は大きい。アリスの呼吸は荒く、白い息が苦痛に震えている。額からは汗が滴り、手は小さく震えていた。

 「アリス、もう無理するな!」リューが駆け寄ろうとする。

 だが彼女は首を横に振った。

 「いいや……ここで退けば、終わる。奴は私の氷でしか止められぬ」

 その瞳は、かつて鳥籠に閉じ込められていた少女のものではなかった。国を背負い、仲間を守る意志を宿した、氷の王女の眼差しだった。

 プロメテウスが再び炎を纏う。怒りの咆哮が空間を裂く。

 アリスは一歩踏み出した。足元の氷が砕け、白銀の冷気が迸る。

 「――次は、全力だ」

 その言葉に、リューもザックもカイも頷いた。

 戦場の空気が変わる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ