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第五節「プロメテウス開戦 ~その2~」 

 プロメテウス。

 東部を支配する王にして、かつての神々の火を奪った存在。

 その声は轟音のようであり、同時に耳元で囁かれているかのようでもあった。

 「憎い……憎い……憎い!!!!!」

 咆哮と同時に、灼熱の炎柱が奔流となって襲いかかる。神殿の石壁が瞬時に赤熱し、床は熔岩のように溶け落ちた。

 「下がれ!」

 アリスが両腕を広げ、氷の結界を展開する。烈火と極寒が激突し、轟音と共に大量の蒸気が立ちのぼった。

 熱と冷気の境界は白く霞み、視界を奪う霧と化して神殿を覆い尽くす。

 「こ、これが神……」

 カイは膝を震わせながら呟いた。ザックは拳を握りしめ、その炎圧を全身で受け止める。

 「まだだ……氷よ、我が前に降り立て!」

 アリスが叫び、数十本の氷槍を創り出すと、炎を貫くようにプロメテウスへ射出する。

 巨体を覆う炎の鎧が次々と氷を蒸発させる。だが、数本が燃え尽きることなく到達し、腕と脚に突き刺さった。

 「効いたぞ……!」リューが叫ぶ。

 「やはり氷は奴の力を削ぐ……」ゼノンの戦術どおりだった。

 しかし、プロメテウスは苦痛ではなく、逆に快楽を得たかのように笑った。

 「面白い……貴様らの力、すべて燃やし尽くしてやろう!」

 炎王は両腕を振り下ろし、怒涛の火焔の奔流を叩きつける。

 ザックが前に出て剣を構えた。「リュー、カイを守れ!」

 剣を振るうと同時に炎が爆ぜ、空気が炸裂する。ザックの足が床にめり込み、押し流されながらも必死に堪える。

 「くそっ、重い……!」

 その背後でカイは影を呼び出そうとする。「メギ……! 俺に力を……!」

 だが黒影は暴走しかけ、逆にカイ自身を呑み込もうとした。

 「危ない!」リューが駆け寄り、咄嗟に腕を引き戻す。模倣魔法で防御障壁を張るが、火焔の圧にひびが走った。

 「持たないぞ!」

 蒸気に覆われた空間で、誰もが叫んでいた。

 アリスは冷たく静かに息を吐いた。

 「ならば、押し返すまでだ――」

 両腕を掲げると、神殿全体に氷の円環結界を張り巡らせる。

 炎と氷がぶつかり合い、轟音と共に空間が二分された。片や溶岩のごとき熱、片や極寒の氷壁。

 床はひび割れ、天井から石片が降り注ぐ。

 「まだだ……沈めよ、プロメテウス!」

 アリスが全魔力を解き放つと、氷結界が光を帯びて広がった。

 プロメテウスもまた炎を増幅させ、神殿はまさに地獄と極寒の狭間となる。

 炎と氷がせめぎ合い、拮抗の中で時間だけが引き延ばされたように感じられた。

 蒸気は濃さを増し、ついには視界が完全に閉ざされる。

 「今だ、隙を探せ!」リューが仲間に叫ぶ。

 その瞬間――

 蒸気を割って、プロメテウスの巨大な拳が闇の中から突き出された。

 狙いはただ一人、氷の盾を張り続けるアリス。

 「来る……!」

 轟音と衝撃。

闘いの幕が、いま切って落とされた。

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