表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
53/101

第四章 新たな大地の神 第一節:鉄の拳


"When it's time to party, we will always party hard"

「宴のときが来れば、俺たちは全力で騒ぎ続ける。」

— Andrew W.K.「Party Hard」


研究所に戻ったリューは、シーカツカの戦いで得たダークエネルギーのポッドをゼノンへと手渡した。

 「召喚の準備を始める」

 ゼノンの声とともに、演算柱が起動し始める。ラボの照明が落とされ、六角の召喚台が床から滑り出てきた。ガラス管の中には既に“器”が配置され、魔力伝導のパターンが円環を描くように光り始めている。

 「誰が来てくれるか」

 ゼノンは小さくうなずいた。

 「魂と器との適合率によって自動的に引き寄せられる。制御はできない」

 リューは黙って頷いた。いずれ誰を呼び戻すか選べる日が来るのかもしれない。だが、今はその余裕もなく、可能な限り戦力を補わねばならない局面だ。

 やがて、空気が震えた。魔法陣が淡く脈動し、黒い霧のような魔素が降下する。召喚台の中心が軋み、浮かび上がるように人影が現れる。

 土気色の肌、隆起した筋肉、まるで岩石のような肉体の男が、膝をついていた。呼吸は深く重く、まるで地の底から這い上がったような存在感だった。

 「……ここは……どこだ」

 低く掠れた声が漏れる。男は頭を持ち上げ、まっすぐリューを見据えた。

 「……お前の顔、まさかリューか…」

 「ザック……間違いない」

 リューが呟いたそのとき、彼の腰に帯びた魔剣グラムが共鳴し、低い声を響かせた。

 『この神威……まるでヘラクレス。だが、粗い。鍛えきれていない剛力か』

 「なんだ、こいつは」

 ザックが警戒を強める。グラムがさらに語気を強めた。

 『我が刃に耐えられるか……この身で確かめたくなったぞ』

 「剣が喋ってるのか。面白れぇ……いいぜ、やってやろうじゃねえか」

 ザックはゆっくりと立ち上がり、拳を鳴らす。実験室の床がわずかに揺れた。足元にはひび割れのような小さな亀裂が走り、重圧が空間全体を満たしていく。

 「ちょっと待て。ザックは召喚されたばかりだ。肉体も精神もまだ不安定な状態で、やる気なのか?」

 ゼノンが慌てて制止の声を上げる。しかし、ふたりの目はもう交差していた。

「問題ない」

 ゼノンは呆れたように言う。

「地下試験区画、D-7なら。あそこなら多少暴れても崩れはしない勝手にやればいい」

 ゼノンは短くため息をつき、装置のロックを解除した。

 「……やれやれ。こちらの計画はお前たちの本能で狂わされるな」

 数分後、地下の広大な演習空間に二人は立っていた。天井は高く、壁は魔力を反射する特殊合金で覆われている。魔法と肉体、両方の力がぶつかり合うにはうってつけの場所だった。

 「手加減は?」とリューが問うと、魔剣グラムは静かに答えた。

 『不要だ。我は試す。剣としてではなく、魂として。こやつの“真価”を』

 ザックもまた、肩をぐるりと回し、笑みを浮かべた。

 「どれほど鍛えても、鈍った剣にゃ興味はねえ。だが、本物の刃なら話は別だ」

 次の瞬間、魔剣の刃が走った。閃光のごとく飛来した一閃が、空間を裂く。ザックは微動だにせず、その拳で剣閃を受け止めた。

 「ほう……悪くねえな」

 手から火花が散る。拳が、魔剣の斬撃を止めたのだ。

 「受け止めるか、懐かしきヘラクレスの神威を持つものよ……だが、その強度、測らせてもらう!」

 グラムが跳ねた。ザックが吼えた。

 地が砕け、空気が爆ぜる。

 その戦いは、もはや試し合いという言葉では収まらなかった。

 魔剣グラムとザックの戦いは、まさに圧巻の一言だった。

全てを断ち切るはずの魔剣の刃を、ザックは土と鍛え上げた肉体のみで遮断してみせた。 一撃ごとに壁がひび割れ、重力が軋み、魔力の衝突波が空間を歪める。

勝敗はつかず、両者ともに本気を出し始め、もはやどちらかが滅びるまで止まる気配すらなかった。

 「もう限界だ……!」

 ゼノンは苦い顔で呟くと、手元の端末を操作し、演習場全体に吸魔器具を展開、同時に重力制御を最大圧に設定した。

 金属音とともに天井から降下するリング状の装置が発動し、空間を包む魔力が強制的に吸収されていく。

 「……終了だ」

 ゼノンの一声により、闘気のぶつかり合いが急激に収束し、二人の姿が静かに沈黙の中に消えていった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ