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第七節・後編:リザレクション

 その場にいた誰もが、目の前の光景を理解できずにいた。

 神魔メランドとフレアは、まるで意思を失ったかのように身を震わせ、黒煙を吐きながら跪いていた。体からはダークエネルギーがじわじわと漏れ出し、空間に渦を生み出していく。

 カイはゆっくりと歩み寄り、まるで導くように両手を掲げた。

「あなたたちと争うつもりはない……ただ、僕と一つになって」

 その言葉に、メランドもフレアも抵抗を見せなかった。

 むしろ、恐怖に似た震えとともに、体が勝手に動いているかのようだった。

 それは支配でも命令でもなく、根源からの“帰属”だった。

 グラムが低く呻く。

『これは……神威の強制ではない。』

「どういうことだ?」

 リューが問うと、グラムは答えた。

『極めて古く、神々の起源に連なる力だ。全知の一端に触れし者が、ごく稀に持つ、“存在の構造そのものを書き換える声”……まさか、この少年が』

 ダークエネルギーの流れが凝縮し、メランドとフレアの身体はゆっくりと崩れ、光と影の粒子に変わっていく。そして、それらが一つの形をなして融合し始めた。

 ——そこに、生まれたのは、一体の新たな存在。

 異形でありながら、どこか人型を思わせる構造を持つ。両腕は細く長く、背には半透明の羽のような装飾が浮かび、瞳は黒く深い光を湛えていた。

 その存在はカイを見つめ、静かに口を開いた。

「ワレ、主ニ仕エルモノ……名ハ、メギ。主ノ影ニ棲マウ者」

 その言葉と同時に、メギはゆっくりと影に溶けるようにしてカイの背後へと消えていった。

 カイはその間、ただ静かに立っていた。意識はあるのか、ないのか……判断できないまま。

 リューが思わず駆け寄ろうとしたその時、グラムが低く告げた。

『……リザレクション』

「何だって?」

『再誕だ。神魔の魂を“同調し新たな神魔を誕生させる”など、本来不可能な行為だ。……これは、原初神の技だ、しかも新しく生まれ変わった存在は中級どころの存在ではない…』

 カイはゆっくりと膝をつき、そこでようやく目を覚ました。

「……あれ……? 終わった……の?」

「おい、カイ!」

 リューが駆け寄り、肩を支える。その身体は微かに震えていたが、意識ははっきりしていた。

「お前……何をしたんだ? あれはどういう——」

 問いを遮るように、カイが微笑む。

「わからない。でも……怖くはなかった。あの声が……『迎えに来た』って。あの時と、同じだ」

 その言葉に、リューは少しだけ表情を曇らせた。

 あの“声”——カイが夢で見たという女性。今や、それが神メジェドに繋がっている可能性は濃厚だった。

 ゼノンの声が通信越しに届く。

『エネルギー回収完了。格納成功。これで必要数は揃った』

「……そうか。とりあえず、目的は達成したか」

 リューはカイの頭にそっと手を置きながら、深く息を吐いた。

 深まっていく謎。

 だが今は、戦いが終わったことに、ただ安堵した。


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