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第3節「炎と氷、天より降りて」 

 戦場に、ふたつの極が降臨した。

 ひとつは紅蓮の炎。すべてを焼き尽くす破壊の熱。

 もうひとつは純白の氷。命を凍てつかせる沈黙の刃。

 まるで天地がぶつかり合うように、南と北から援軍が現れた。

「煉獄軍、展開せよ! ここを火の海に変えろ!」

 アレン将軍の号令が轟き、赤黒の装束に身を包んだ戦士たちが次々と舞い降りる。

 信徒たちの列に炎が走り、祈りを捧げていた者たちが次々と火達磨になって崩れ落ちた。

 一方、戦場の反対側には、冷たい風が吹きつける。

 氷の結晶を撒き散らしながら、白銀の騎士たちが列を成す。その先頭に立つのは、雪豹姫——アリス。

「塔の魔力異常。干渉はもう止められない段階だ」

「……来てくれて助かった」

「お前のためではない、プルートを引き取りにきただけだ」

 リューとアリスが目を合わせる。だが、余韻を与える時間はなかった。

* * *

「光の使徒に手を出すな。これは、神に抗う愚行だ」

 鋭い声と共に、空から疾風が舞い降りた。

 風と光をまとい、双剣を構えた仮面の男——四天王、グリフィン。

 「炎舞惨惨!!」アレンが剣を構えると、彼の周囲に炎が走った。

「俺が相手だ。空の王気取りの刃が、地上の炎に耐えられるか見せてみろ!」

「試すまでもない。風は常に、火より速い」

 瞬間、両者がぶつかり合う。

 グリフィンの双剣が目にも留まらぬ速度で迫り、アレンの剣がそれを受け止める。

 空中と地上、旋風と爆炎の真っ向勝負が幕を開けた。

* * *

 その頃、塔の西側では、大地が軋んだ。

 巨躯の男、バルバトスが斧を肩に静かに歩み出ていた。

 重力と光の魔法を操り、足元に歪む重力場は、周囲の信徒すら圧倒してひれ伏させる。

「おい、でかブツ。まっすぐ来るとは偉いじゃねぇか」

 応じるのは土竜ザック。

 拳を固め、大地の石をまとわせると、笑みを浮かべた。

「俺は殴り合いに関しては自信しかねえ。てめぇの斧がどんなに重かろうが、俺の拳は折れねぇ、土怒恕拳骨!」

 両者が地響きを立てて突進し、激突する。土の壁が砕け、重力波が飛び交う。防御と制圧、二つの力がせめぎ合う中、地面は抉れ、塔の根本すら揺らぎ始めていた。

* * *

 一方、東側。

 闇と炎が交錯する、異質な気配が渦巻く一角。

 そこには、燃え上がる大鎌を手にした男、シェイドが立っていた。

「影の縫い手……ザギか。思い出した…再び会うとはな」

 その言葉に、黒衣の青年は静かに顔を上げる。

「……かつてのあの日。あの村を焼いたのは、お前だったな」

「正義の名の下に処刑したまでだ。闇は光に焼かれる運命だ」

 ザギの影が地を這い、周囲を覆い始める。

 それをシェイドの白炎が焼き払う。火と影、光と闇。最も相性の悪いふたりが、互いの魔法を以て真っ向から激突する。

「……今回は逃げないのか?」

「もう黙れ…骸超迷宮、闇夜よ闇夜よ、光が憎けば、この指とまれ…」

 ザギが低く呟き、すべてを飲み込みそうな、影の小さな球体を展開し、球体に飲み込まれていく。

 地に伏していた信徒たちが逃げ惑い始めるが、彼の瞳はただひとつ、目の前の敵だけを見据えていた。

* * *

 そして——塔の北斜面。

 白銀の結界を突き破るように現れたのは、雷と光を纏った四天王の一人、ロラン。

 仮面越しでもわかる鋭い目つきで、彼は静かにアリスを見据えた。

「雪豹姫アリス。光の意志に従うかと思っていたぞ」

「…」アリスは醜い虫でも見るかのような眼差しでロランを先を見つめる。

「無視か…」

 ロランの鎖が唸りを上げ、雷光が空を裂いた。

 対するアリスは氷の壁を立ち上げ唱える、「零虚逝睡」その一撃を見事に封じ込める。

 雷と氷が交錯する激しい一騎打ち。

 速さと反応、制御と判断。両者は一歩も引かず、戦場に美しき閃光と白銀の破片をまき散らしていた。

 それぞれの戦いが、戦場の各地で展開されていた。

 アレンはグリフィンと、ザックはバルバトスと、ザギはシェイドと、アリスはロランと。

 だがその中心、塔の最上層では——

* * *

「……カミュー」

 リューがその姿を見つけ、言葉を失った。

 カミューは静かに封印の扉の前に立ち、青白い光に包まれた子供たちを前に、両手を広げていた。

 子供たちは意識を失い、魔力の“器”として封印を解くための“鍵”として組み込まれている。

「止めなきゃ……!」

 リューとカイが駆け出す。だが、遅かった。

 扉が“きい……”と音を立てて軋み始めた。

 それは、永きにわたって封じられてきた“何か”が、いままさに目覚めようとしている兆しだった。



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