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真夜中の襲撃者

 深夜、部屋の扉を何度もノックする音で起こされた。仮眠室から出た俺の前には焦った様子のアキヅキ。彼女は戸惑っているように見える。何か、まずいことが起きているみたいだ。面倒な。


「アキヤ君。ヤバイよ。島の人たちがおかしくなっちゃった!」

「おかしくなったってどんな感じに」

「とにかく! 戦闘の準備をしてすぐにロビーまで来て!」

「了解」


 ただ事でないのなら、急がねば。すぐに鎧を着込み、愛剣ツラヌキを腰のベルトに差す。監理局のロビーへ向かうと、そこには何人もの人間が手足を縛られた状態で転ばされている。確か、彼らは……監理局の職員たちか。近くには、ハルカさんたちが困った顔で立っている。ウイカゼさんが特に困惑している様子で……彼女は落ち着くまでそっとしておくべきかもしれない。


「皆、今どういう状況だい?」

「アキヤさん! 突然監理局の人たちがおかしくなったんだぜ。たまたま起きていた私とアキヅキさんで襲いかかってきたやつらは全員拘束した。が、眠っていたままのところを襲われてたらと……想像したらゾッとするよ」

「なるほど……」


 それは確かにゾッとする。というか、どうしてこんな状況になってる。島民たちへの疑いはシロだったんじゃ……いや、違うな。彼らの精神に干渉できるならいつでも俺たちを襲わせることも可能だった……ということ……か?


「監理局の職員たちを鎮圧した後で、アキヤさんたちを起こして回ったんだ。ほんとに、さっきはびびったよ」

「私、ハルカちゃんが起こしてくれるまで、スヤスヤ寝てました。ダメな騎士でゴメンナサイ」

「気にすんな。今こうしてサナたちがここに居てくれて心強いぜ」

「ハルカちゃん……!」


 サナとハルカさんのやりとりを聞きながらも、ひっかかる。いくら寝ていたとはいえ、敵意を持った者が近づけば、俺もサナも気付けるはずだ。何か特殊な状況だったのか?


 島民たちの様子を見ると、何人かは、もぞもぞともがいていた。けれど、そんな彼らは皆虚ろな顔をしていて、その顔からは意識があるようには感じられない。なんだか、見ているだけでも気分を害するような……そんな表情だった。


「アキヤ君……たぶんだけど、今の彼らに意識は無い。つまり、敵意も無い。彼らは、普段通りそこに居て、突然無意識で私たちの寝込みを襲おうとしてきた」

「なるほどな。それで、俺やサナたちは起こされる時まで反応ができなかったわけだ」


 ……納得はいくな。ともかく、一旦状況は落ち着いている……というわけでもなさそうだな。ロビーから見える建物の入り口には簡易的なバリケードが作られている。ハルカさんたちが作ったものだろうか。助かるかもだが……それが必要な状況は嫌だなあ。でも今はおそらく、そういう状況なんだよな。


「……とにかく、詳しい状況が知りたい」

「その点はハルカちゃんから報告するぜ。まず、監理局の職員が暴徒化。もしやと思って、建物の屋上から外の様子をうかがってみたんだけど、外の島民も同じような状態だ。鎌とか包丁とか持って、ゆっくりこっちに向かってきている」


 ハルカさんの言葉を聞いて、意識を建物の外に向けてみる。確かに、のろのろこっちに向かってきている気配があるな。それも、いくつも。その気配のどれからも敵意を感じないのが……不気味に思えた。


「はい! はい! 私からも報告があるよー!

 アキヤ君!」

「良い報告? 悪い報告? どっちだい?」

「悪い報告しかないよっアキヤ君」


 だよねえ。冗談を言ってられる状況では無さそうだ。ここはアキヅキからの報告を真面目に聞こう。


「タマちゃんから連絡があってね。クトゥルフが動き出したみたい。海中を大きくカーブしながら、こっちに向かってきているよ」

「まじか……タマちゃんは無事?」

「クトゥルフはタマちゃんには興味ないみたい。完全に無視されてるのは、ある意味助かるけれど、ともかく、タマちゃんはクトゥルフを観測中! 報告によると、じきにここは襲われる」


 洗脳された島民たちからの襲撃と、クトゥルフの移動、たぶんディープワンどもも動いていると考えるべきだろう。俺たちが北の漁村を調べると勘づいて、このタイミングで先制攻撃を仕掛けてきたか……向こうからしたら島民の目や耳を通して、こっちの情報は筒抜けだったのかもしれないな。そういうスキルをいくつか知っている。今回の相手は厄介そうだぞ。


「洗脳された島民と、大型の魔物が同時に動いてる。俺たちを見張ってた魔物の集団も動いていると考えるなら……」

「考えるなら……?」


 サナたちの注目が集まる中、俺は面倒な想像をしていた。それが今回の敵の狙いだろうし、そのせいでただ勝つだけで良い戦いではなくなってしまった。ほんと、敵の卑怯なやり方には虫唾が走る。


「ここにこもっていれば建物ごと俺たちは大型で正体不明の魔物に潰されるだろう。外に出て戦うにしても、洗脳された島民たちを守りながら戦うことになる。戦いには魔物の群れの乱入も考えられる」

「……つまり私たちは人々を守りながら魔物と戦う。シンプルだな。アキヤさん!」


 ハルカさんはこんな時でもポジティブに考えてくれるな。それは凄く、勇気をもらえる。ああ、そう考えるなら俺たちのやるべきことはシンプルだ。


「そうだ。やるべきことは単純。俺たちは島民を守りながら魔物と戦うだけだな。やるぞ!」

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