海産物を調理しよう
フタグン島支部のキッチンを借りた。こういうところが非常に緩いのはここが離島のダンジョン監理局だからだろうか。
サナたちは数尾のアジを買ってきた。新鮮な海の幸からは潮の香りがした。今日は、これを調理する。というわけで、始めようか。一緒に調理をしてくれるハルカさんのためにも頑張りたい。
「アキヤさん、今日は何を作るんだい?」
「そうだな。刺身となめろう……あとは、あら汁を作ろうか。米と一緒に食べたいね」
「それは良い。じゃ、私は米を炊いておくよ。後であら汁は私が作るから、アキヤさんは刺身と、なめろうをお願いしたいぜ」
「了解、役割分担だね」
ハルカさんが米を炊く準備を進めている間に、俺もアジの下処理を進めていく。まずは、ゼイゴとも呼ばれる固いウロコを包丁の刃先でこそぎ落とす。この時のウロコを落としていく感覚には、なんとも言えない気持ち良さがある。
続けて、アジの内蔵やエラを取ったり、水気を抜いたり、三枚におろしたり、といった作業。少し面倒だが、魚を美味しく食べるための、大事な行程だ。途中からハルカさんが戻ってきて、手伝ってくれる。彼女と一緒に料理を作るのは、楽しい。
さて、下処理も終わったし、本格的な調理を進めていこう。ハルカさんにはあら汁を作ってもらうとして、俺は刺身となめろうを作る。まずは、刺身からだ。魚の身は振れると、ひんやりとしている。なるべく、俺の手から魚に熱が移らないよう、調理は急ぎたい。
魚に限らずだが、多くの食材は力で切るのではない。包丁をスッと入れて、スッーと引く。そのようにして切るのだ。刺身はなるべく冷たい状態にしておきたい。包丁を入れながら、気持ちは焦る。
急ぎ、刺身は切り終えた。薄く、それでいて、弾力のある刺身はきっと美味い。もう、これを摘まみながらビール飲みたいもんね。流石にしないけども。
刺身を切り終えたら、次はなめろうだ。それを作るために必要な薬味や味噌などは、キッチンにあったものを使わせてもらう。支部の人には「良いですよ」と言ってもらえていて、ありがたい。
長ネギ、生姜、大葉といった薬味を切り、それから、なめろう用に切っておいた身に全て乗せた。そしたら、後はトントン叩いていく。切るというよりは叩く、だな。ある種の打楽器を叩いているような楽しさがある。これを、好みの食感になるまで叩いていくぞ。今回はお米に乗せる前提で、しっかりと細かくなるまで叩く。
「……アキヤさん、こっちの準備は良い感じだぜ。そっちはどうだい?」
「こっちは良い感じだよ。もうすぐ終わるから、そっちを手伝う?」
「ありがとう。でもこっちは大丈夫。アキヤさんは、そっちのやることが終わったら、休んでてくれ」
ハルカさんの優しい言葉が嬉しい。なら。
「ハルカさんが料理するところを、見てても良いかな?」
「そりゃ良いけど……ちょっと恥ずかしいぜ」
ハルカさんは照れながらもオーケーを出してくれた。調理を終えた俺は、彼女が料理するところを見ながら、静かに時間が経っていくのを感じていた。




