ハイドラ釣り
釣糸を水面に垂らしながら、サナたちは配信画面に向かって楽しそうに話している。彼女たちが楽しいならそれが一番嬉しい。
「ハイドラってギリシャ神話に登場するヒュドラみたいな見た目なのかな? その辺はどうなんです? おじさん」
サナから質問されて、ハイドラの見た目については説明をしていなかったことに気づいた。そうだな、そこは重要なところかもしれない。大事な情報は共有するべきだ。
「母なるハイドラは巨大な魚人のような姿をしています。昔、仲間と共にこのダンジョンへ来た時は、皆でハイドラの見た目を予想しあったもんだよ」
「へえー! 魚人みたいな見た目なんだね。私は、ギリシャ神話の怪物みたいに、頭がたくさんある灰色の生物を想像してた」
「俺も、昔はそう思ってた。だから予想が外れて、その時は皆に料理を作ることになったんです」
「今やってる賭けみたいに?」
「そう、今やってる賭けみたいに」
・誰が魚人を吊り上げるかな?
・皆がんばれー
・釣りができるダンジョンって他にもあるのかな
・釣り楽しそう
・釣れるのは魔物だけ?
配信画面では多くのコメントが流れている。賑わっているのは良いことだ。サナと共にコメントへ反応していると横から「お!」と声が聞こえた。声のした方へ顔を向けると、ハルカさんの釣り竿に反応があったみたいだ。ひいてる! ひいてる!
「あ、アキヤさん! こいつはでかいぜ!」
「ファイトですよ! ハルカさん!」
・ファイト!
・がんばれー
・大物だ!
・釣れろおおおおおお
・いっけえ!
流石に、ハルカさん一人でハイドラを吊り上げるのは大変だ。なので、俺は彼女を手伝う。ハイドラを釣り上げたならすぐに戦闘が始まるため、サナとウイカゼさんは釣りを中断して臨戦態勢になる。
そして、俺とハルカさんとでハイドラを釣り上げた! 水面から姿を表したのは灰色の肌をした巨大な魚人。そいつは釣糸を噛みちぎりながら、濁った眼科をこちらに向けてくる。俺はどうも、あの目が苦手だ。
・釣れたあ!
・釣れたぜ
・でっか
・でかあああい!
・これは大物ですねっ
いかんいかん、魚人の目を見るのが嫌で、配信画面の方に視線を向けてしまった。視線を戻すと、すでにサナが動いていた。
「影鳥!」
サナは、自身の影から呼び出した黒い鳥たちを足場にしながら軽々と跳ね回る。元々、身軽だとは思っていたが、今の彼女は惚れ惚れするような動きを見せてくれる。
鳥から鳥へ飛び移り、サナはハイドラの頭上をとった。そして、これはサナの必勝パターンだ。戦闘は始まったばかりだが、すでに勝負はあっただろう。頼むぞ、サナ。
「重圧剣!」
サナの剣が一直線にハイドラを切り裂いた!




