敵を蹴散らせっ
「前方に潜む敵はショゴスだと思われマス。その他、生体関知レーダーに複数の魔物を確認できていマス」
タマちゃんの報告は正しい。前方に潜む魔物の気配に加え、更にダンジョンの奥から複数の気配が迫っている。正面から迎え撃って倒すだけだ。恐れる必要はない。
「前衛は俺とサナで受け持ちます。ハルカさんは後方からの攻撃担当。ウイカゼさんは万が一の時に備えていてください。つまり、いつも通りです」
「「「了解!」」」
ハルカさんたちが俺の言葉に応え、臨戦態勢になる。その動きには無駄ひとつ無く、とても頼もしい。皆、立派になったなあ。
臨戦態勢のまま前方へ進む。ほどなくして前方から複数の魔物が姿を現した。大人の背丈ほどはあろうかというスライム状の魔物と、タコの触手みたいな口をした小型のコウモリ。どちらも、俺たちなら楽に倒せる相手だ。けれど、あまり相手をしたい魔物ではない。うー、えんがちょ。
スライム状の魔物の方がショゴス。スライムに似た魔物だが、危険度はただのスライムよりは高い。それは良いのだが、その体にいくつも魚の目のようなパーツがあり、気持ち悪い見た目をしている。触手コウモリは言わずもがな、ここの魔物は正直言って……見た目がキモいのだ……!
「……影踏み!」
見た目が苦手だからという理由で戦わないのは、俺の中では無し! とはいえ、キモい! 影を踏まれて動きの止まった魔物に、容赦してやる理由はない。悪く思うなよ。
「皆さん、さっさと倒しちゃいますよ」
「任せてよ、おじさん。私の格好いいところを、見せちゃうよー!」
「お願いします!」
「せーの! 重圧剣……!」
サナが長剣を振りかぶった。刃を潰された分厚い長剣。それを、振り下ろしながら、彼女は叫ぶ。正直、必殺技みたいで格好良い!
サナの長剣に取り付けられた魔石はSランクの魔物ベヒモスの物。効果は魔石を取り付けた武器の重さを自在に変化させられるというシンプルなもの。けれど、これが強いのだ! 俺もたまにで良いからあの武器使わせてほしいんだよね。
瞬間的に重みを増した長剣が、ショゴスを一刀両断する! そのまま地面に剣が叩きつけられ、地面が割れた! あの攻撃は、流石の俺でも相当痛い。くらいたくはないな。
その時点で戦闘は終了していた。複数居た触手コウモリはハルカさんが全て倒してくれていた。流石、いつもながら仕事が速い。
「皆さん、お疲れ様です。ひとまず、戦闘終了。この調子で行きましょう!」
「「「はい!」」」
・流石です!
・やっぱ安定感あるなあ
・Sランクパーティはやっぱ違うわ
・強い!
・ナイスー
探索配信に寄せられるコメントも、盛り上がっている。苦手な見た目の敵が多いダンジョンだけど、頑張っていこう。頑張って……帰ったらビール飲むんだ……! だから弱音は吐かないぞ……!
その後もダンジョンを探索しながら内部の様子を撮影していく。配信のため、というのもあるが、このダンジョンの調査のためでもある。元々この島へは、ダンジョン周辺に現れたという大型の魔物について調べるために来たのだからな。忘れてはいけない。気をつけているよ、うん。
道中、何度か魔物と戦闘することはあっても、特に変だと感じることは無い。何も無ければ、何も無いで良いのだが、さっき、港でアキヅキに言われたこともあって不安は感じる。
何か妙なところはないかと意識すると、全てが妙なように思えてくるし、疑いだすとキリが無いな。そうこうしているうちに、すでにダンジョンの最深部までやって来てしまったようだ。
ダンジョンの最深部、そこには大きな湖がある。ボスモンスターの姿は見えず、辺りは静かだ。が、ここに、確実にボスモンスターは居る。ちょっと面倒な手順を踏まねばボスに会えないのだけど、その面倒すら楽しんでいこう。
「タマちゃん、用意していたものを出してください」
「了解デス。それデハ皆サン。ドーゾ」
タマちゃんが収納スペースから取り出したのは釣り竿やルアー。そう、ここで今から釣りをする。このダンジョンのボス、ハイドラは釣ることで出会うことのできる珍しい魔物なのだ。
皆に釣り道具を渡す中で、ウイカゼさんは不安そうにしている。彼女、釣りは初めてらしい。分かるよ。初めての挑戦は、なんだって不安なものだ。
「大丈夫、分からないことがあれば教えますよ」
「おじ様、釣りもできますのね。頼りになりますわ」
「どういたしまして」
ウイカゼさんに釣りの仕方を教えている間に、ハルカさんも、サナに釣りの仕方を教えている。ハルカさんとは、結構いろんな所に出かけて、共にアウトドアを楽しんでいる。釣りには、ハルカさんの方から誘われて、始めた。そのお陰で、前よりは魚介類の見た目に対する苦手意識はマシになってきたと思う。その点は、感謝だな。
「さ、準備ができたら、釣りを始めますよ。誰がボスモンスターを釣れるか勝負です」
俺がそう言った時に「だったらさ!」とハルカさんが手を上げた。彼女はニヤリと笑って言う。
「だったらさ、ボスモンスターを釣れたらご褒美がほしいぜー」
「ご褒美ですか?」
「ああ、例えば、アキヤさんの作った手料理とか!」
「まじかー、良いですよ。面白そうだ。けれど、俺が買った時は、ハルカさんの手料理を食べさせてもらいますからね」
「良いぜ良いぜ。それじゃー勝負な!」
そのやり取りに対し、サナとウイカゼさんが呆れ顔で笑っている。い、良いだろう別に。
「ま、良いんじゃない? 私もおじさんの手料理には興味があるし」
「その勝負、乗りましたわ。というわけで、釣り勝負の間の見張りは貴方にお願いいたしますね。タマちゃん」
ウイカゼさんの言葉にタマちゃんが「お任せ下サイ」と反応し、釣り勝負が始まった。せっかくやるんだ。本気で勝ちに行くぞ!




