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クニハラと食堂で

 冒険者協会のトレーニングルームから食堂へ移動し、そこでうどんを食べている時だった。俺の前に座る人物が居たので、そちらを向くとクニハラの姿があった。彼も、うどんを持ってきている。こっちの彼は本物だよな。と、変に不安になった。


「聞きましたよ。俺のコピーをぶっ倒したそうじゃないっすか。やっぱ先輩にはかなわねーっすねえ」

「本物のクニハラだったら勝負は分かんなかったよ」

「……そう言われると、照れるっす」


 照れ笑いのクニハラだったが「ところで」と声のトーンを変えてきた。真面目な話か? それなら俺も真面目に聞くぞ。


「いよいよ明日っすね。TAMAGUMOプロジェクトの説明会」

「ああ、その話か。そうだったな。冒険者協会からメッセージは受け取ってるよ」


 俺だけでなく、他にも、協会が信頼できると判断した数少ない冒険者が明日の説明会に参加するそうだ。全部で何人の冒険者が参加してるのか。詳しい数字が気になるぜ。聞きはしないが。


「明日の説明会は三回に分けて行います。十二人のメンバーを四人ずつに分けるんす」

「クニハラ。そんなこと今教えちゃって良いのか?」

「あー大丈夫っす。俺、アキヤ先輩のこと信頼してるっすから」

「お前なあ……」


 辺りを見回す。今、俺とクニハラ以外に人の姿はない。とはいえ、どこで誰が聞き耳を立ててるいるかなんて分からないじゃないか。と考えてしまうのは、心配しすぎなんだろうか。


「大丈夫っすよ。先輩、近くに聞き耳を立ててる奴なんて居ません。そこは俺の、忍者としての能力を信頼してほしいっす」

「いや、まあ……それなら……良いが……」


 俺が情報を漏らすなんて心配は、されてないんだろうな。それは俺がしっかり信頼されているということで、素直に嬉しい。


「じゃあ……少し気になったこと聞いても良いか?」

「良いっすよ。今、答えられることであれば」

「聞くけどよ。説明会の参加者が十二人なら、一度に説明を終わらせてしまえば良いんじゃないかと、俺は考えるわけだが……」

「もちろん、説明会を分けておこなうのには理由があります。まあ、ちょっとしたセッティングが必要なんす。迷惑はかけませんので、楽しみにしていてください」

「なるほど?」


 答えになっているような……なっていないような……まあ、良いか。ここはクニハラのことを信じて明日を楽しみにするとしよう。


 それから、二人で黙々とうどんをすする。美味い……うどんを食べ終わり一息ついたところで再びクニハラが話しだす。なんてことはない世間話。俺は彼の話を楽しんで聞いていた。


「……んで、先輩。最近は先輩だけでなくて、あの子たちも大活躍じゃないっすか」

「……サナたちのことか?」

「そうっす。今、A級冒険者の中で最もS級に近いのはあの三人なんじゃないかって噂が立ってるくらいっすよ」

「サナたちもだいぶ強くなったからなあ。S級に最も近いA級はお前じゃないか? クニハラ」

「そう言ってもらえると嬉しいっすけどね。今、最も若いパワーを感じるのはサナちゃんたちっすよ。俺からは、そう見えるっす」

「冒険者協会の会長からそう言ってもらえたらサナたちも喜ぶだろうな」

「じゃあ、アキヤ先輩から伝えておいてもらっても良いっすか?」

「いや……そういうのは自分で伝えてくれ」


 その後も、クニハラとの楽しい話は続いた。彼とまたそのうち食事をする約束をして俺は食堂を後にする。冒険者協会を出て、帰りにドブロクさんに会いに行ったりした。夕方くらいには自宅へ帰る。程よい疲れを感じている。


 家のパソコンを起動して、最近の冒険者たちの間では、どんな話題が流行っているのか調べてみたりする。


 クニハラが言っていた通り、サナたち三人が次のS級冒険者に選ばれるんじゃないかとネットでは盛り上がっているようだ。俺のことではないのに、俺も嬉しくなってしまう。


 サナたちと冒険をするようになって、何度も一緒に戦った気がするけれど、実際にはまだ三ヶ月も経っていない。そう考えると、三人は凄く頑張っている。これからも、彼女たちをサポートして、応援をしていきたい。


 今や、彼女たちは次のS級じゃないかと注目されるくらいに成長している。彼女たちの成長を見るのは、ほんとに楽しい。


 十六年前、俺が冒険者になってからS級冒険者まで昇格するにはどれくらいの期間が必要だったろうか。一年以内にはS級まで上がっていたはずだが、細かいところまでは覚えていない。


 あの頃の俺は、とにかく新しいダンジョンを攻略することに夢中だった。パーティの仲間たちを守り、仲間たちと共にダンジョンを制覇する。それが最も重要で、気付いた時にはS級冒険者になっていたと思う。


 ああ、そうか。今の俺は、あの頃の楽しさを感じているんだ。十六年前、仲間たちを守って、一緒にダンジョンを攻略していく。そして一緒に成長していく。その楽しみが今の俺にはあるんだ。


 そう思って「フフッ」と小さな笑みがこぼれた。明日はTAMAGUMOプロジェクトの説明会だ。それも楽しみにしつつ、今日は早めに眠るとしよう。

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