打ち上げ会と反省と
ウイカゼさんのスキルは便利なもので、甘いジュースから消毒用のアルコール液まで、必要なものをその都度作ることができるようだ。しかも、魔力の消費量はかなり少ないらしい。便利なスキルを手に入れたね。使いようによっては悪いこともできそうで、夢が広がるな。
「私のスキルだと、解呪の嵐と組み合わせることができるかもしれませんわ。雨を治癒薬に変えることで回復スキルとして運用したり……だとか」
「冒険者協会が所持を認めてる範囲なら、毒を作って持っておくのも良いんじゃないか。というか、私の矢に毒塗って使うってのも有りだよなー」
「ハルカさんの矢は、もはや大砲のようなものなので、毒が必要なのでしょうか?」
「そうかなー? ま、その能力使い道が豊富すぎる。悪いやつにはこれから一層注意する必要があるぜ。その時はアキヤさんが守ってくれるだろうけどよ」
ウイカゼさんとハルカさんが話し合っているのを聞きながら、俺もウイカゼさんのスキルの利用法を考えている。というか今、俺に結構な責任を負わされた気はするんだが、気のせいではないだろう。とりあえず水の入ったペットボトルを持ち運ぶだけでも、その場その場で万能に使える。ウイカゼさん、より頼もしく成長してくれて嬉しいよ。
「皆、何の話をしてるのさー」
サナが料理を運んできた。ミートソースのスパゲッティ! 良いね! 好物なんだよ。
「ありがとうサナ。食器は後で俺が洗うよ」
「それならハルカちゃんも手伝うぜ。アキヤさん」
そう? ハルカさんも手伝ってくれるなら助かる。食卓に料理が並び、食事を楽しみながらの打ち上げが始まる。サナがキッチンに居た間に話し合っていた情報を共有し、サナにも能力の使い方を聞いてみる。何か有益なアイデアが出るかもしれない。姪の発想に期待したいところだ。
「……そうだなあ。ウイカゼちゃんの能力の発動って容器越しでも可能って話じゃない?」
「その通りでしてよ」
「だったら生物に触れたら肉体越しでも血液を変化させて一撃必殺ぅ……なんつって……」
食事中に出て良い話題であったかは置いといて、そうか……そういう使い方もあるか。サナは隣に座るウイカゼさんの手に振れて「できる?」なんて聞くものだから、ウイカゼさんの方がびっくりして離れてしまった。いや、俺がウイカゼさんの立場でも今のされたらびっくりするぞ!? サナさん……?
「間違っても、そんなことしませんわよ!?」
「うん、私はウイカゼちゃんのこと信頼してる」
「ハルカちゃんも信頼してるぜー」
「俺もです」
「あ、あなたたち。味方とはいえスキルを恐れないのですね……?」
恐れないんじゃなくて、信頼してるんだが。まあ良いか。ウイカゼさんが困ったように肩をすくめるのを見て、安心する。もしかしたら、俺たちの間に不和が生まれるかもしれなかったからな。その状況をサナが上手くまとめてくれた。今日のダンジョンでも思ったが、やはりこのパーティの精神的な支柱はサナだな。
そうして、打ち上げは和やかな雰囲気で進んでいき、食器も空になろうかというタイミング。テレビのニュース番組に、とんでもない情報が映った。少なくとも、俺にとってはとんでもない情報! びっくりしてしまう。
「冒険者協会は一部のダンジョンのランクを改め、変更しました。対象となるのは日本全国にある十七ヵ所のダンジョンとなります」
ダンジョンのランクが今朝、一部変更されたらしい。そしてその中に今日潜った千代田ダンジョンの名前があった。驚異度をBランクからAランクに変更とのこと。これは……どうしたものかな。額を嫌な汗が流れる。だが、こういう時にすべきことは一つ!
「皆、すまんかった!」
「え、ええ!? なんで叔父さん謝ってるの!?」
サナが困惑しているが、いや、しかし。俺としては謝るべき案件だと、思うのだが。
「俺は、皆にBランクの迷宮として千代田ダンジョンを紹介した。が、実際には今朝にダンジョンの難易度は改められていた。今回は皆無事だったけど、俺の確認ミスだ」
「まあ、それはそうなんだけど……叔父さん。考えてもみてよ。ダンジョンの難易度が改められたのは、今朝のこと。叔父さんはそれより前から、私たちがここに挑めると判断してたし、私たちもそのための準備はしていた。それってミスになるのかな?」
「さ、サナ。しかしだな……」
「こうして私たち全員、無事に帰ってこられたのが、挑戦しても大丈夫だったっていう何よりの証拠じゃない? まあ、もしそれでも叔父さんの気持ちが晴れないっていうのなら」
「晴れないっていうのなら?」
「今度、私たち皆に美味しいものでも奢ってよ。それで、今回のことはチャラ。そういうことに、しようよ!」
サナは屈託の無い笑顔でそう言った。やはり、この子がパーティの精神的な支柱だ。分かった。サナは俺のことを責める気はないらしい。ウイカゼさんとハルカさんの顔も見たが、彼女たちもサナと同じ気持ちのようだった。だとすれば、俺もいつまでも、くよくよしてはいられない!
「なら、明日美味い店を紹介するよ! 何が食べたい!」
「寿司!」
「スキヤキ!」
「天ぷら!」
「見事にバラバラじゃねえか」
打ち上げ会と反省と、明日の夕食は何にするかをかけての、じゃんけん大会は、和やかにおこなわれていった。




