機械仕掛けの闘牛
千代田ダンジョンを探索し始めて数十分。顔を上げると非常に高い天井と、その下で漂う火の玉たちが見える。このダンジョンは多くの火の玉によって照らされているのだ。色とりどりの火の玉たちは、なかなか綺麗に見える。確か、ウィルオウィスプと言うんだったか。
なんて考えていたら、再びマジックブックが出現する! 今度は電撃を放ってきやがった! ここの敵は色んな魔法を使ってきて飽きないよ。ほんと。
「ハルカさん!」
「任された!」
俺の呼び掛けに、ハルカさんはすぐ応えてくれた。鋭い矢が敵を撃ち抜く。このダンジョンの魔本たちをハルカさんなら一撃で倒せる。単純な火力が高いってのは良いね。正直、羨ましい。
千代田ダンジョンは魔本の奇襲と、時々降りてくる火の玉に気を付けていれば、半分くらい進める。ただ、千代田ダンジョンの後半には、また別の魔物が増える。図書館の見回りとでも言うべきか。結構強力なフィジカルモンスター。なんて思っていると……出てきたな。やつが持つ手斧はギラリと光り、こちらへの殺意を感じさせる。が、問題ない。
「……こりゃまた、随分と図書館には似合わない魔物が出てきやがったぜ。ハルカちゃんの矢は通用するかな?」
「大丈夫。ハルカさんの矢なら通用しますよ」
現れたのは牛の頭を持つ大男。ミノタウロスだ。あるいは牛頭という者も居るな。パワーとスピードをあわせ持ち、しかもタフ。おまけに鎧まで着込んでやがる。急所を突けるだけここのボスよりはましだ。こいつに苦戦するようじゃここのボスには絶対勝てない。というわけで、さぁ! やるぞ!
ミノタウロスは力強く踏み込み、こちらへ突進を仕掛けてくる。俺は盾を構えて待ち構える。その時、後方で「後方! 魔本の奇襲!」とサナが叫んだ。緊急事態か。困るよね。
「サナ、そっちは任せる!」
「了解!」
魔本を止めておくぐらいサナにとっては簡単だ。俺は目の前の敵に集中! 眼前に迫るミノタウロスの手斧を素早くパリィした。体制を崩した敵の頭にオーラをまとった矢が刺さって、爆発する。ハルカさんが放つ必殺の一撃だ!
ミノタウロスを撃破し、後方に意識を向ける。お、すでに勝負あったか。魔本はサナの剣によって串刺しになっている。どうやらサナのステータスは俺と比べると攻撃寄りっぽいんだ。良いね。
この調子なら、ボスの場所まで行くのに問題は無さそうだ。そうこなくてはな。千代田ダンジョンを攻略して、近いうちに浅草ダンジョンも攻略するぞ。
「二人とも。良い戦闘でした。このまま油断せずに進んでいきましょう」
俺の言葉にサナとハルカさんは嬉しそうに頷く。ウイカゼさんは困り顔だ。彼女、今日はあまり活躍していなくて気にしてるみたいだ。俺も彼女の立場なら結構気にしてると思う。
「私、今日はまだ良いとこ無しですわ……」
「ウイカゼさんはいざという時のために控えていてください」
「はい……でも、役割が来た時には活躍しましてよー!」
あ、ウイカゼさん。撮影ドローンに向かって、凄くアピールしている。頑張れ! ウイカゼさん! でも皆ウイカゼさんが治癒魔法を使えるから、安心して戦えるんだからね。それはまじでサナとハルカさんにとっては大きなものだと思ってる。皆もそれは分かっているはずだよ。
・焦らず行こー
・ウイカゼちゃんの治癒に皆助かってるはず
・ウイカゼ先生の活躍楽しみ!
・がんばれー!
・気負わず行こうぜ
「そうだぜー。ハルカちゃんたち助かってるよ」
「うん。ウイカゼちゃんが控えてるから、私たちは安心して戦えるんだよ」
「み、皆さん! 私頑張りますわー!」
配信のコメントとサナやハルカさんの言葉でウイカゼさんは勇気付けられたみたいだ。さっきも感じたけど、サナがパーティのリーダーとして上手く動いてる。ハルカさんの気遣いも流石だ。
「リスナーの皆さんが言っているように、気負わず進んでいきましょう」
「「「はい!」」」
俺たちは本棚の迷路を進んでいく。時々現れる敵に対応しつつ、確実にボスへと近づいていく感覚は気分を高揚させる。アドレナリンが出ているのだろうか? 戦闘をする度テンションが上がっていくのだ。だが、決して自制心を失ってはいけない。感情がハイになりすぎないように途中で小休憩を挟んだ。数分の休憩だけど、気持ちを落ち着ける効果は確実にある。ある程度のリラックスが大切なのだ。
そうしてダンジョンを進んでいき、やがてボスの縄張りに到着する。円形の広場は本棚に囲まれて、闘牛場を思わせる。上から火の玉による明かりが届いている。その広場の中央に、その魔物は陣取っていた。全身を金属の鎧に覆われた巨躯の怪物。機械仕掛けの闘牛ファラリスは、なかなか厄介な敵だ。
・ファラリスの牡牛!?
・かっけえ!
・つよそう
・こりゃまた強力そうなのがでてきたな
・皆負けるなー!
ファラリスの口が大きく開いた。来るぞ! 強力な攻撃を予感させるが、俺なら耐えられる! 味方を守ることにかけては自信があるんだよ!
ファラリスの口から勢い良く青い火球が放たれた。俺はその攻撃を盾で受け止め、開かれた口に向けて弾き返す! 火球を呑み込んだファラリスに大したダメージは与えられていないが、手応えは感じた。大丈夫だ! 問題ない!
「さあ! 皆さん! やりますよ!」




