決意を新たに
池袋、祭門の個室にて。
「それじゃ、改めて。おめでとー!」
「おめでたいですわー!」
サナとウイカゼさんから、祝福されるのは嬉しいけど、照れるな。ちなみに、ここの支払いは俺持ちになっている。ハルカさんと付き合っていたことを今まで黙っていたことへのペナルティだとか。ま、甘んじて受け入れよう。俺も悪かったと思う部分はあるしな。
個室に運ばれた寿司を食べながら、サナたちから俺とハルカさんのどっちが先に告白したか、とかデートはどうだったか、とかについて聞かれる。俺やハルカさんが、話しにくそうにする話題に対しては深入りしてこない。親しき仲にも礼儀ありということだろう。ありがたいね。
そうして話をしているうち、サナが特に、気にする話題があった。俺とハルカさんが付き合う手助けをした存在。魔王リリスについてだ。そこは、俺も気にはなってはいた。
「……なんで、リリスはアキヤ叔父さんたちの恋路を助けるんだろうね?」
「さてな。やつ曰く、これで仮は返したということらしい」
「なんだか……」
サナの口が止まった。彼女は、続きの言葉を話すべきか迷っているようだった。迷うことなく、続きを聞かせてほしい。話が気になるし、俺は受け入れるからさ。
「サナ、話しにくいことか?」
「いや、話しにくいというか……ちょっと、思ったというか」
「言ってみてほしい」
サナは感が良いからな。彼女の話をぜひ参考にしたい。
「なら、話すよ。えっとね……リリスは叔父さんに恩を売ってるんじゃないかな?」
「あーね」
それは、俺も考えた。リリスは、俺に恩を売っているんじゃないかと。なんのために、そんなことをするのかまでは、良く分からないが。
「……もしかしたら、なんだけどさ」
「もしかしたら?」
「魔王ってさ。まだまだいっぱい居るんじゃないかな?」
それは……そうかも。白漂のやつが大魔王を名乗っていたし、リリスもまた魔王を名乗っていた。となれば、やつら以外に魔王とかいう存在が居る可能性は考えられる。ハルカさんとウイカゼさんも、その可能性を聞き、気を重くしたようだった。まあ、白漂みたいなのが何人も居たら嫌だよなあ。俺も嫌だ。
「なるほどな。んで、魔王がたくさん居ると、どうなると思う? サナ」
「叔父さん、これはあくまで私の考え。もしかしたら、突拍子もない考えでしかないんだけどさ」
「大丈夫、話してくれ」
俺の言葉に、サナは少し安心したように頷いて答える。俺もちょっとは、彼女が話しやすい雰囲気を作れているだろうか? そうだったら良いが。
「もしかしたら、私たちの知らない水面下で、多くの魔王たちの戦いが起こっているのかもしれない。なんて、考えちゃったんだ」
「なるほど?」
「リリスは、魔王同士の戦いに叔父さんたちを利用したいんじゃないかって。これは、ほんとに突拍子もない妄想みたいな考えなんだけど……」
そこまで話してサナは恥ずかしそうにうつむいてしまった。突拍子もない考えだなんて思わないよ。サナ、その可能性は充分にあり得る。俺は、そう思う。
「もしかしたら、魔王たちが水面下で争っているのかもしれないし、リリスは、俺たちを利用しようとしているのかもしれない。白漂の支配がなくなった世界で次の席を狙っているのかもしれない。サナはそういうことを言いたいんだな?」
「うん……」
サナは俺に、不安そうな顔を向けた。ハルカさんとウイカゼさんも同様だ。皆が心配になる気持ちは分かる。俺だって少し心配になる。でも、この場に、そんな顔は似合わないな。今は俺とハルカさんのことを祝う席だぜ? だから皆を安心させてあげたい。
「大丈夫、俺が居る」
これまでの経験で、自信がある。誰かを守ることにかけては。
「何があろうと俺が皆を守る。これまでずっとそうしてきた。これからも、大切な全てを守り抜く」
「……アキヤ叔父さん」
「ただ、俺は守る専門だ。他の多くのことは皆に頼るかもしれない。その時はよろしく頼む。皆のことは、最高の仲間だと、信頼しているから」
俺の言葉に、サナたちは三人で顔を見合わせる。ちょっと、今の言葉はくさすぎたかな? 自分で話してて恥ずかしくなってきた。そんな俺を見て、サナは面白そうに笑った。やがて、ハルカさんが頷き、話す。
「ああ。アキヤさん、任せてくれよ。アキヤさんが守ってくれるから、私たちは安心して戦えるんだ」
ハルカさんに続いてサナとウイカゼさんも頷いた。彼女たちの頼もしさが伝わってきて、嬉しい。
「だね! 新しい魔王が来たって、皆でなんとかしよう!」
「その域ですわ! まあ、新しい魔王がやってくるかは分からないのですけれど」
新しい魔王がこの世界にやってくるのか、分からない。けれど、準備をしておいて困ることはないのだろう。俺ができることは限られているけど、皆のためにできることをしたい!
それはそれとして。
「皆、今日は祝いの席だ! じゃんじゃん注文してくれよ! 金は俺が出す!」
「「「おー!」」」
そうして、その日は皆で楽しい食事の時間を過ごした。




