カラオケミーティング
翌日の水曜日、夕刻。
パーティの皆でカラオケ店に集まって、揚げ物をつつきながら、会議を始める。議題は冒険者協会の新しいプロジェクトについてだ。こういう話し合いってのはドキドキするな。緊張してるっていうよりは、ワクワクしてる。
「……皆に集まって貰ったのは、例のプロジェクトについてだ」
「例の……って言うとTAMAGUMOプロジェクトだよな? おじおじ」
「そうだよ。ハルカさん」
今日のハルカさんはいつものモードか。ちょっと寂しく感じるものの、あからさまにお姫様モードにすると皆に付き合ってることがバレるもんね。とも思ってしまう。いや、バレて不味いことがあるわけでも無いんだけど。なんとなく、今の関係を明かすタイミングが無い。
「……おじおじはTAMAGUMOプロジェクトのことは知ってたのか?」
「プロジェクトの名前だけはね。でも詳しく知ったのは昨日の配信を観てからだよ」
「そうなんだ。S級冒険者だからって教えてもらえるわけでもないんだなー」
そういうこと。で、そろそろ本題に入りたいんだけど、構わないだろうか?
「皆にもTAMAGUMOプロジェクトのテスターのお願いが来てると思う。俺としては参加したいが、皆はどうだろうか?」
俺の言葉に三人は揃って「「「もちろん!」」」と答えてくれた。おお、そうか。そいつは嬉しいね!
「そうか。オーケーをもらえるか。ありがとう」
「一応、今のところは、だけどなー」
「そうですわね。冒険者協会に詳しい話を聞いて、改めて結論を出しましょう。とはいえ皆参加したいという方向で考えて良いと思いますの」
「そうだね! 叔父さんも、皆も、せっかくもらえた話だもん。乗らないのはもったいないよ!」
皆、乗り気だね。新しい冒険者協会を盛り上げていきたいという気持ちは、この場の全員が同じなのだろう。なんだか一体感を覚える。
ひとまず、TAMAGUMOプロジェクトへの参加は皆肯定的だと分かった。詳しいことは改めて冒険者協会で聞いてから、参加を決める。それまで期間はあるだろう。ダンジョンの一つや二つくらいなら、攻略できると思う。そろそろ、サナたちにはAランク相当のダンジョンに挑ませても良いだろう。東京にあるAランクダンジョンは二つだが。さて、どっちにするか。悩みどころだな。
「一つ話がまとまったところで、もう一つの議題に移ろうと思う」
「了解だぜー」
「うん、ハルカさんや、皆にも了解は貰えたと思うから話す。そろそろ、皆にはAランクのダンジョンに挑戦してもらおうと思う」
「「「おー!」」」
皆乗り気だな! 良いね! こっちのやる気にも繋がるってもんだ。
「じゃあ、東京に二つあるAランクダンジョン、浅草ダンジョンと港ダンジョンについて説明するぞ」
サナたちが揃って頷いた。こっちも、しっかりと説明するぞ。情報も可能な限り更新してるし、また近いうちに下見へ行くつもりだ。ダンジョンは危険だ。が、なるべくその危険は排除したい。そのために前情報は役に立つ。
「東京には二つのAランクダンジョンがあるわけだが、単純に魔物が強力なのは浅草ダンジョンの方だ」
「その言い方ですと、港ダンジョンの方は別の理由で厄介ですの?」
「ナイスな質問だ。ウイカゼさん。察しが良くて助かるよ」
俺の返事に対しウイカゼさんは「えへへ」と笑う。その顔を可愛いと思っていたら、ハルカさんにジト目を向けられた。ええ、見すぎってこと!? それとも俺の言動に気持ちが出すぎていたか。俺の顔も笑ってたとか、あるかもな。気を付けよう。
「……えっと、説明を続けようか。港ダンジョンは珍しく下へ向かっていくダンジョンだ。というか水中へ潜っていくことになる。つまり、ダイビングだ」
「ダイビングダンジョン!? 面白そう!」
サナは楽しそうだけど、どうしたもんかな。とりあえず、説明を続けよう。港ダンジョンの厄介さを分かってもらえるはず。正直言うと、港ダンジョンは、何度も潜りたいダンジョンではない。
「水中へ潜っていく必要があるし道中には魔物も出現する。道中は暗くて迷いやすいし……その……俺はあそこの魔物がちょっと苦手なんだよな。見た目が怖いから」
そんな俺の言葉にサナとウイカゼさんはきょとんとしていた。な、なんだよ……おじさんだって苦手なものの一つや二つくらいあるって。
「俺、魚介類の目ってそんなに得意じゃないんだよね。学生の頃に見たクラーケンの絵がトラウマで」
「へえ……叔父さんも可愛いところあるんだねえ」
「可愛いって……俺の真剣な悩みだぞ」
「ごめんごめん。でもそうだとしたら港ダンジョンはよしておいた方が良さそうだね。二人もそれで良い?」
サナの提案にハルカさんとウイカゼさんが了解した。そうしてくれると、俺としても助かる。
「ハルカちゃんも怖いのは苦手だからなー。助かるぜー」
「……ああ、そういえばこの前会った時もそんなことを言ってたね。ハルカさん」
その瞬間、ハルカさんは焦った様子になり、サナとウイカゼさんがジト目を俺に向けてきていた。俺もすぐに、今のが失言だったと気付く。が、もう遅い。
「この前会った時?」
「それはいったい。いつですの? 叔父様、何か隠していますわね?」
こ、これは……観念するしかないかもしれない。




