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新宿デート

 渋谷ダンジョンでの配信を終えて、日曜の夜。


 皆とは一度その場で解散したのだが、その後新宿のバルトシックスでハルカさんと合流した。彼女が、気になる映画があるとのことで、一緒に観るために来たのだ。


 今日観るのはアルファトゥエンティシックスという配給会社のホラー映画だとか。俺はそれほど詳しくないというか、ホラー映画はそんなに得意な方ではないんだよな。子どもの頃そういう映画を観るとトイレに行けなくなってた。今はそんなことは無いけど、平気かと問われれば、不安だと答える。でもハルカさんの前では、かっこ悪いところは見せられないな。


 とりあえず、チケットは購入してある。チケットに書かれた【巻死因】というタイトルが短いながらもおどろおどろしく感じられる。そんな俺に、ハルカさんが楽しそうに言う。


「アキヤさん。びびってる? 怖いなら、私の手を握ってても良いよ」

「ん……平気ですよ。でも、ありがとう」

「そっか……」


 ハルカさんは俺の返答に対して、残念そうな顔をした。返事をミスったかな? かっこ良いところを見せたいという気持ちが裏目にでたか。デートって難しい。というか、今のハルカさんは、お姫様モードなんだろうか? そんな雰囲気がある。


「……映画が始まるまで時間が微妙だ。でも、お腹は空いてるんだよね」

「だったら、軽く食べられるものが良いかな。映画館で何か買うって手もあるけど。ハルカさん。どうする?」


 俺の問いにハルカさんは、少し考えてから「ハンバーガーでも食べに行こうぜ」と言った。俺から異論はない。それなら軽く食べて、すぐ戻ってこられそうだ。


「良いね。そうしよう」

「じゃあ、行こう。アキヤさん」


 それから、近くの店で軽く食事を済ませて、映画館に戻った。特に問題なく予約した席に着くことができ、いくつかの新作映画の予告が流れた後、映画の本編が始まる。


 これは……なるほど……霊とかモンスターではなく殺人鬼が暴れるタイプの映画か……これなら、思ったよりは平気だ。いざ俺が映画と同じ状況になっても殺人鬼なら撃退できる。そう思えば心にいくらかの余裕はできた。とはいえ、映像や音といった演出が恐怖心を刺激してくる。なんて考えていると、手をぎゅっと握られる感覚があった。それがハルカさんの手だということはすぐに分かった。柔らかく、しなやかな手を握り返す。映画が終わるまで俺たちは共に手を握り合っていた。


 やがて、映画が終わり、俺たちはシアターを後にした。今も、ハルカさんと手は握ったままだ。どうしようか、そろそろ手洗いに行きたいのだが……それは素直に話した方が良いよな。


「ハルカさん、ちょっと手洗いを済ませて来たいんだが」


 俺がそう言うと、ハルカさんは少し困ったような顔をしたが「うん……」と言って手を離してくれた。普段見られない、不安そうな顔のハルカさんを見るとちょっと心苦しい。


「すぐに戻るから」

「ありがと。あの映画、思ってた以上に怖かったよね」

「ですね。ほんと、すぐに戻ります!」


 手洗いは急いで済ませて、元の場所に戻った。俺の姿を見たハルカさんはホッとしたように、表情を柔らかくした。なんというか、あざとい。普段は強そうな面ばかり見せている子が見せる、こういう面に俺は弱いのだ。俺が守らねば! という気持ちが強くなる。そういう、女の子を意識しての気持ちの変化はなんだか、まだ慣れない。


「……アキヤさん。戻ってきてくれて良かった」

「戻りますって。戻るって言ったんだから」

「そうだよね。いや、私……ホラー映画を観たから、不安になっちゃってるんだ。こういうの、子どもっぽいって思う?」


 上目遣いに尋ねてくるハルカさんに、俺はなんと答えるべきだ……肯定か、否定か、考えた後。返事を間違っていないように祈りながら、答える。


「大人でも怖がりな人は居るし、子どもでも怖いのが平気だって人も居るよ。だから、大人っぽいとか子どもっぽいとか、気にしなくても良いんじゃないかな。ただ、俺はハルカさんの見せるどんな面も、好きになるし、受け入れると思うよ」

「……そこは、思うじゃなくて、受け入れると言いきってくれた方が嬉しかったな。けど、ありがとう。アキヤさんの前じゃ、あまり気にしないようにするよ」

「うん、俺はハルカさんのどんな面も好きだから」

「何度も言わなくても、分かったって」


 ハルカさんは、嬉しそうに笑って、いくらか安心したようだった。


「ごめん。ちょっと私もお手洗い」

「うん、待ってる」

「待っててね」


 その後で、戻ってきたハルカさんと、今度は喫茶店に向かった。映画館近くの喫茶店で雑談を楽しんだ。普段はどんな映画を観るのかと、ハルカさんに聞いたら、彼女は色々と答える。それから彼女は少し考えて、恋愛とアクションの比率が多いと教えてくれた。たまに怖い映画を観たくなる時もあるらしい。彼女のことが、またひとつ知れたようで嬉しい。


「今度から、ホラー映画を観る時はアキヤさんの家にしよう。というか、そうでなくても私、またアキヤさんの家に行きたい」

「えっ!? 俺の家で!?」

「だって、その方が色々安心だから」

「安心かなあ?」

「前にもアキヤさんの家には言ったことあるんだし、良いじゃん?」


 いや、まあ良いけど。付き合ってるんだし良いんだけど……良いのか? 前みたいに、他の女子と一緒ならともかく、彼女一人で俺の家に? 良いのか?


「うん、決めた。今度のデートはアキヤさんの家でしようよ。そのうちさ」

「俺の家で……」

「約束!」


 なんというか、関係が進んでいくのが早くない!? いや、世の男女の交際ってこんなものなのか? 分からない。俺には、分からない。

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