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渋谷のボスとEOE

 渋谷ダンジョンのボスであるビッグエイプはCランク相当の魔物。落ち着いて戦えば、トラブルでも起きない限り苦戦することはないさ。そう思っていたのだが……トラブルが発生した。こいつは困ったね。


 空気が振動している。そしてビッグエイプの頭上に空間の割れ目が発生していた。ボスモンスターと戦闘のタイミングでEOEが出現するとは、まじで運が悪い。が、起きてしまったものは仕方ない。対応してみせる。それくらいは、できる。


※空間が割れてる!

※これってEOE?

※やべーぜ

※ボスが増えるってこと!?

※魔物同士は争わないから、これは良くないぞ


 敵に迂闊な動きを見せるべきではない。今はイレギュラーな事態。冷静さを失わないことが重要だ。俺は急ぎ、サナたちに指示を飛ばす。

 

「皆さん! 守りを固めます。まずは様子見でいきますよ!」

「「了解!」」

「私の守りの加護は今も、おじ様たちに、かかっていますわ」


 俺はウイカゼさんに頷き、前を見た。空間の割れ目から一体の魔物が降りてくる。そいつは二足歩行をする狼のようで、物語に語られる狼男を思わせる。ライカンスロープ。総合評価はBランク相当の魔物だ。動きが非常に素早くて並の冒険者には厄介なんだよな。あいつ。


 ライカンスロープもとい人狼は瞬時に加速! こいつも、練馬ダンジョンの魔物と同じようなスキルを持っている。そのうえ、こっちはより立体的な動きをしてくるのだ! だが、おまえの動きは、俺の目には見えてるぞ! やられては、やれないな。


「サナさん! 右です!」

「――はい!」


 俺の言葉に、サナは瞬時に答えた。そして、彼女の右側から迫る攻撃を盾で防ぐ! よし、うまいぞ! だが、サナは攻撃を防御することで手一杯になっていた。彼女の反撃の前に人狼は再び加速。俺たちから飛び離れる。


「あぁっ!? 速い!」


 サナが叫ぶ。彼女は人狼を探そうとしているが、彼女には人狼が補足できていない。俺が、フォローしないとまずいかもな。だなんて考えてる場合じゃない。奥から一メートルは越えてそうな大きさのブロックが飛んできているな。こいつは、厄介なやつらが相手になったのかもしれない。


「――パリィ!」


 俺が盾で、飛んできたブロックを弾き飛ばす。奥からビッグエイプがブロックを投げつけてきたのだ。人狼と大猿のコンビ。面倒だねえ。


「影犬!」


 俺は二匹の影犬を呼び出して後方へ走らせる。ウイカゼさんの背後をとろうと人狼が移動していたからだ。俺には魔物の動きは見えてるんだよ。ウイカゼさんに、バックスタブを決めようとしてるんじゃないよ。まったく。


「「ウォン!」」


 影犬たちが吠え、人狼が一瞬怯む。その隙を突くように、ウイカゼさんの近くに居た人物が動いた。ハルカさんは大弓を構えるのではなく、手に持った矢で直接、人狼を刺そうと動く。良い判断だ。今の彼女と人狼との距離なら、直接刺した方が早い。


 ライカンスロープは素早さだけならAランク上位相当の魔物。咄嗟に防御してハルカさんの攻撃をしのぐ。矢じりが人狼の腕に刺さり、血が飛び散った。人狼は再び、俺たちから距離をとる。今のは惜しかったぞ。やはりハルカさんはセンスが良いな!


 また、俺たちを狙うブロックが飛んできた。俺はそれを防ぎ、サナたちに「近くで固まって」と指示を出す。少し戦っただけだが、色々分かった。正直、この状況は苦しいが、かなり美味しい。サナたちが戦闘の経験を積む相手として、このコンビはまじで良いやつらだ。

 

「ハルカさん。反撃はもらってませんよね?」

「ああ、わりぃ! やつの片腕を負傷させるので、やっとだった! 反撃はもらってないぜ」

「上出来。良くやってます」

「そりゃどうも。しっかし、犬猿の仲って言葉は嘘だな。やつらは、めちゃくちゃ良いコンビネーションだぜ」

「ええ、即席のコンビとは思えないほどに」


 人狼は俺たちの周囲を跳び回り、大猿はブロックを構えてこちらの隙を狙っている。俺の方も様子見をしていたが、そろそろ反撃に移る時だ。作戦は俺の脳内で出来上がってる。自信はあるさ。


「皆さん、手短に作戦を説明しますよ」

「「「了解!」」」

 

 簡単に作戦を説明し、すぐに動く。魔物の方も、動きだそうとしていた。大猿は肩を後方に伸ばし、投擲の準備中。人狼も、大猿の投擲に合わせて攻撃を仕掛けてくるだろう。敵の攻撃よりも一瞬速くウイカゼさんが動いた。良いね。作戦通りだ。


「灯火!」


 強い光が、遺跡内に広がった。単なる目眩ましでも効果はバツグンだ。人狼は脚を止めて、そこへハルカさんの矢が迫る。オーラをまとった矢は一撃で人狼の頭を吹き飛ばした。


「陰の模倣者! 魔力の矢!」


 サナが力一杯に遺跡の奥へ剣を投げつける。女の子とはいえ、Aランク冒険者相当の身体能力を持っていることは協会のテストで証明済みだ。ならば、剣を投げつけて、遠くの大猿に当てることだって、できる! サナが放った剣は、大猿の頭に直撃! その頭を吹き飛ばした! 毛むくじゃらの巨体が、持ち上げていたブロックの下敷きになる。


 二体の魔物が塵になって消えていき、後には、俺たちだけが残される。ひとまず、サナたちと一緒に勝てて安心だ。彼女たちの成長がしっかりと、感じられる一戦だった。


※勝った!

※ないすー

※ないすー!

※やったぜ

※皆頑張った


 思わぬトラブルはあったが、サナたちにとっては良い経験になっただろう。サナの剣を回収したら、気をつけて帰ろう。

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