六月の渋谷ダンジョン
俺がハルカさんと付き合うようになり、なんだかあっという間に五月は過ぎていった。五月の間に板橋区と大田区のBランクダンジョンを攻略し、サナたちのレベルも上がった。今日の配信では渋谷区のダンジョンでサナたちの新たなスキルを確認する。ついでに渋谷ダンジョンの攻略もしてしまおうという企画だ。ワクワクするね。
「こんサナー。本日は快晴の日曜日。ダンジョン内では外の天候は関係ないんだけど、それはそれ! 気分は上々です!」
「ハルカちゃん。準備できてるぜー」
「こちらウイカゼ。いつでも行けますわ」
「俺も準備できてますよ」
※こんサナー
※こんサナー
※おじさんもこんにちは
※ハルカちゃん今日もかっこいいです
※ウイカゼお嬢様頼りにしてます
撮影ドローンの画面にはコメントが流れ、俺たちと周囲の森を映している。渋谷ダンジョンは、あまり難易度の高いダンジョンではない。油断は良くないが、気負わずに進んでいこう。
ダンジョンの探索を始めてほどなくして魔物と遭遇。大きなブタさん、ワイルドピッグ。新スキルを試す相手としては申し分ない。というわけでかっこいいところを見せてくれよ。皆、期待してるからな。
「皆さん。ここら辺で、新スキルのお披露目といきましょう」
「「「了解!」」」
サナが前に出て、俺も横に並ぶ。今回の戦闘では主役になるのはサナたちだ。俺はサポートに回る。彼女たちが活躍するところを見られるのは、俺も嬉しい。
「皆さん、援護しますわ! 守りの加護!」
ウイカゼさんの杖が光って、俺たちの体からオーラが発生する。これはサナの硬質化スキルを味方全体にかけるような能力だ。味方にこのスキルを持つ者が居ると心強い。
※おおーなんか強そうなスキル
※守りの加護か。便利だな
※ウイカゼお嬢様サポーターとして頼もしい
※準備万端!
※皆安心して戦えるね!
ウイカゼさん流石だね。次はサナの番かな?
「今度は私の番! 影猿!」
サナの影から真っ黒な猿が現れる。三匹、呼び出された猿たちはワイルドピッグに向かっていく。影猿の戦闘力は低く、ワイルドピッグの気を引くのでやっとだ。とはいえ足止めをするには充分な能力! 便利だと思う。
※猿!
※うきー!
※おじさんの犬と会わせたら、犬猿鳥が揃ったのか
※猿君頑張れ
※あーこの猿ワイルドピッグは倒せないくらいなのか
「あとはお願い! ハルカちゃん!」
「おう! 任せとけー」
ハルカさんが大弓の弦を引き、そして矢を放つ! 矢は勢い良く飛んでいき、形を変える。矢は、網のように変化して、ワイルドピッグの体を包み込んだ。魔物を倒したわけではないが、無力化に成功。これも汎用性のある技かもしれない。
※捕獲
※ブタさんは出荷よー
※そんなー
※魔物だから持って帰っても食べられないんだよな
※便利な技……なのかな?
「網は数時間は持つはずだぜー。こいつは、とりあえずその辺に転がしとくか」
今のサナたちがDランクの魔物を倒しても、経験値はそれほど入らないからな。放置しても良いと思う。
※ブタさん命拾いしたな
※魔物との戦闘ってこういう決着の仕方もあるのねー
※戦闘おつかれー
※ないす
※ないすー!
サナたちは皆、新たなスキルを使いこなしているな。じゃあ、このままダンジョンを攻略していこう。おじさんも頑張るぞ!
何度か魔物と戦闘をしながら、森の奥にある遺跡へ到着した。なんというか東アジアのジャングルとかに建ってそうな石造りの遺跡。その最上階には、ボスモンスターの縄張りがある。壁づたいに登れば、窓らしき四角い穴から、侵入は可能だろう。さて、どうするか?
「皆さん、ここのダンジョンへの侵入ルートは二つあります。正規の入り口から堂々入っていくか。壁づたいに登っていって、いきなりボス部屋に侵入をするかです」
「なるほどー。おじさん的にはどっちがいいと思いますか?」
サナが、いつもやるみたいにエアマイクを握って俺に聞いてくる。いい質問だ……と言いたいところだけど、正直どっちでも良いんだよね。
「正直、どちらでも、さほど苦労はしないかと思います。正面から進むにしても、Dランクのダンジョンですし、壁づたいに登っていく方が大変まで、あるかもしれない」
「なるほどー。だったらこうしましょう!」
何か思い付いたみたいに、サナが人差し指をピンと立てた。ほうほう、どんなことを思い付いたのか。おじさんにも聞かせてもらおうか。
「アンケートをとります!」
「アンケート?」
「そういう機能が、撮影ドローンにはあるんだよ。アキヤおじさん。というわけで、正規のルートか裏のルートか。リスナーの皆にアンケートをとりますよー!」
「なるほど」
そういう機能があるんだな。サナが撮影ドローンに触れて、手早く操作している。それから待つこと数分。サナが「結果でたよー!」と言って俺たちにも撮影画面を見せてくれた。そこには、おおよそ三対七で裏ルートからの攻略が見たい。という結果が出ていた。なるほどね。リスナーの皆はそっちがお望みか。
「それじゃあ決まりですね。皆さん、裏ルートで行きましょう」




