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長い後日談のプロローグ

 翌日の早朝。俺は自宅前でハルカさんと待ち合わせをしていた。俺が玄関を出てから、ほどなくしてハルカさんはやって来た。彼女は俺を見ると、嬉しそうに笑う。きっと俺も今の彼女と同じ気分だ。


「アキヤさん。おはよう」

「おはよう。ハルカさん」

「それじゃ走ろっか。四十二キロだっけ?」

「はい、上位の冒険者なら余裕の距離です」


 軽く準備運動をしてから、二人並んで冒険者用の道路を走る。互いに近い距離で、足音と息づかいを感じとれる。黙って、ただ走るだけなのだが、風や色々なものを感じられて気持ちが良い。目や耳や肌を通して様々な情報が体に届く。東京という街は、退屈しない。


 ハルカさんは朝のランニングから何を感じとっているのだろう。それが、気になる。知りたいと思う。彼女も同じように考えていてくれたら、とても嬉しい。


 四十二キロという距離は、俺やハルカさんには、それほど長い距離ではない。やがてゴール地点の井の頭公園までやって来た。ゆっくりと歩くようになり、やがて脚を止める。ここで休み、また徒歩で自宅まで戻る。良い感じのトレーニングだ。


 脚を止めたハルカさんと目があった。彼女は気恥ずかしそうに笑う。そういう顔をされると俺も気恥ずかしくなってしまう。


「……お疲れ。アキヤさん」

「お疲れ様。ハルカさん……ちょっと待ってて」


 近くの自販機で、水を買って戻ってくる。ハルカさんはベンチに座って公園の池を眺めていた。そんな彼女の姿が風景と合わさると、一枚の絵画のように美しい、と思う。


 ハルカさんに近づいて、声をかける。そうして、ハルカさんに水を渡し、俺は彼女の隣に座った。


「今日も良い景色だ。俺は、ここの景色が好きなんだよ」


 朝の池は静かで、鴨や鵜のような、鳥の姿を確認できる。そういうものを見ると心が落ち着く。


「……この景色が好きだから、アキヤさんは武蔵野に住んでるの?」

「まあ、そんなところかな」


 ハルカさんの方を見ると、彼女は真剣に公園の池を眺めていた。あんまりにも真剣な顔をしているから、なんだか面白い。


「……アキヤさん。私はもっとたくさん、アキヤさんのことを知りたい。アキヤさんはどうかな? 私のこと、知りたい?」


 少し前までの俺なら返事に迷っていたのかもしれないけど、今の俺に迷いは無い。はっきりと、今の気持ちを答えられる。自信がある。


「俺は……君のことを知りたい。ハルカさんのことをもっと知りたい。気になるんだ」

「そっか。ありがと」


 ハルカさんは優しい顔を向けてくれて、とても満たされた気持ちになる。そんな俺に、彼女は言う。


「それじゃあ、もっといっぱい、互いのことを知っていこうね」

「これからもよろしくお願いします」


 俺たちは互いの関係を再確認した。朝日の優しい時間だった。


 これは新しい人生の、長い後日談のプロローグ。俺たちの時間はこれからも続いていく。


 第二部 長い後日談のプロローグ 了

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