同じ月を見ながら
ユニコーンはもうそこまで迫っている! 頭の角で一突きにされれば、俺はともかく、サナたちは只では済まない。後衛の二人を守るために、前の二人で壁を作る。
直後、ユニコーンと俺の盾が接触した。攻撃を防がれたユニコーンは俺から飛び離れようとする。そこでサナとウイカゼさんが動く。
「灯火!」
「影踏み!」
ウイカゼさんが光球を呼び出し、伸びた影を使って、サナがユニコーンの動きを縛ろうと、スキルを発動。彼女たちのコンビネーションは上手いが、ユニコーンってのは厄介なスキルを持ってるんだよな。
ユニコーンの体がほのかに光る。そのまま、やつは俺たちから飛び離れた。あの魔物が持つスキルは二種類。治癒の魔法と、解呪の魔法だ。今やつが使ったのは後者。その力によって、影踏みの力から逃れたのだ。厄介なスキルを持ってるよ。ほんと。
「魔力の矢!」
ハルカさんが大弓から矢を放ち、その一撃がやつの脚をえぐった。ユニコーンは大きく姿勢を崩す。だが、やつの体がほのかに光ると、傷がすぐに癒えていく。やつが、完全に回復するまでの、僅かな間がチャンスだ。
「ハルカさん! 矢の雨です!」
「了解!」
ハルカさんが天高く矢を放った。少しして、大量の矢が空から降ってきた。矢の雨がユニコーンを襲う。その威力は圧倒的だ。Aランクの魔物でも耐えられるものは少ないだろう。それほどの攻撃。流石。味方に居て頼もしいアタッカーだな。
ユニコーンは力尽き、その体は塵になって消えていく。俺たち皆の勝利だ! 無事に戦いが終わって一安心だな。
※おーすげー
※Aランク相当の魔物でも、こんなすぐに倒せるんだ
※皆強い!
※流石だあ
※ないすー
リスナーの皆のコメントが嬉しい。そんな風に思いながら、パーティの皆を労った。皆も、Bランクのダンジョンの攻略ができて嬉しそうだ。
その後、ユニコーンの魔石を回収しておく。治癒の力を持つこの魔石はウイカゼさんに渡すのが最も良いだろう。そのことを話すと皆了解してくれた。後は気をつけて帰ろう。最後まで気は抜けないぞ。
「さ、帰るまでが冒険ですよ」
「「「はい!」」」
帰りも気をつけて進み、無事に練馬ダンジョンを脱出。今日の戦利品はユニコーンの魔石だ。良いね。この様子だと、一段階レベルが上のダンジョンに潜っても大丈夫そうだ。けど、念のためにBランクダンジョンをもう何ヵ所か攻略してから、Aランクダンジョンに挑みたい。
練馬ダンジョンの外、空間の歪み付近で配信のお別れの挨拶になる。今日の配信はここまでだ。寂しい気もするけど、また次のダンジョン探索が楽しみでもある。
「それじゃあ皆! おつサナー! 明日はまた別のダンジョンを探索するよー。ばいばーい」
※おつさなー
※おつサナー!
※明日も楽しみ
※またねー
※おつさなー
こうして今日の配信は終わり、帰りにファミレスでミーティングをしてから、各自解散になった。皆、今日はお疲れー。明日もよろしく頼むよ。
その日の夜。夕飯を終えて洗いものを終わらせたくらいの時刻。
自室でだらけきっていたところに、ハルカさんのメッセージが届いた。彼女から連絡が来たことで、満たされるような気分になる。
『アキヤさん。お疲れ様です』
『お疲れ様です。ハルカさん』
俺からの返信にも、すぐに既読がつく。そして再びハルカさんからのメッセージ。そのレスポンスの速さを嬉しく感じる。もし、彼女にメッセージを焦らされると、モヤモヤしてしまうかもしれない。大の大人が、そんな簡単にハラハラしていたら、相手にどう思われるかな?
『アキヤさん。明日の朝も走るのかな?』
『走るよ。習慣だからね』
『だったらさ。私も明日の朝、一緒に走っても良い?』
『もちろん良いよ。一緒に走ろう』
そこまでメッセージのやり取りをして、数分の間があった。俺が寂しさを感じながらも、今日のやり取りはここまでかな? と思っていた時だ。
『アキヤさん。少し話せない?』
『話? 良いよ』
すぐにハルカさんからの着信があった。通話を受けると、スマホから「もしもし」とハルカさんの声がする。少年っぽくもあり、少女っぽくもある中性的な声。透き通っていて、聞いていると落ち着く。
「アキヤさん。こんばんは」
「ハルカさん。こんばんは。最近は日が沈むのも遅くなってきてるね。さっき日が沈んだばかりで、夜はやっと始まったばかりって感じ」
話をしながら、俺は窓の近くへ移動した。窓の外には月が輝いている。綺麗だと思う。
「月が綺麗だね」
「えっ……アキヤさん。それって……」
ハルカさんに言われて俺も気付いた。あ、いや……これは……その……そういうこと、にしても良いんじゃないか? 俺はハルカさんのことが好きなのだし。気持ちをそのまま伝えても良いのかも。
「昔の偉い人は、便利な言葉を作ったね。そう思わないか? ハルカさん」
「……そうだね。じゃあ、私からも言わせてよ」
ハルカさんがその言葉を言うまで、一泊の、間があった。彼女の緊張が伝わり、こちらも緊張する。
「月が綺麗ですね。アキヤさん」
「うん、綺麗な月だ」
俺たちは、離れた場所で、同じ月を見ている。同じ月を見ながら、互いの気持ちが凄く近いところにあるのを感じていた。




