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老神重工からの話

 水曜日。


 朝、日課のランニングから帰ってくると油のパチパチという音と、香ばしい肉の香りに気付いた。キッチンに向かうと、そこにはクニハラの姿がある。彼はこちらの視線に気付き、ニッと笑った。彼の疲れはとれている様で良かった。ダンジョン食材の効果かな?


「おはようございます先輩。勝手にウインナー焼かせてもらってるっす。これが出来てから、起こしに行こうと思ってたんですよ」

「そっか、まあ構わんよ。どうせなら目玉焼きも頼むわ」

「了解っす。ついでにトーストはどうっすか?」

「それは俺が焼く」

「うっす」


 クニハラと一緒に簡単な朝食を準備し、テーブルに運ぶ。二人でモソモソと朝食を済ませてから一息つく。クニハラがコーヒーを入れてくれて嬉しい。


「クニハラ、これから冒険者協会に向かうのか?」

「うっす。そろぼち協会に戻ろうと思うっす」


 そこでクニハラは何かを思い付いた様子で「そうだ」とつぶやく。彼は俺を見て「先輩、今日の予定は空いてますか?」と聞いてくる。ん、何だろね。まあ、今日の予定は入ってないし、構わないんだけど。


「今、協会で面白いもののテストをしていましてね。せっかくなら、見学してみませんか? アキヅキさんに言えば了解も、もらえると思うっす」

「ふぅん? 何のテストをしているんだ? あと、これ俺が知って大丈夫なやつ?」

「ふっふっふ! よくぞ聞いてくれました。知っても大丈夫かは……先輩のことは信用していますので」


 信用してもらえるのは嬉しいけども。良いのかね? まあ、俺が口を割らなければ良いか……な?


「……とりあえず。どんなテストか聞かせてくれよ」

「うっす。今、冒険者用のARトレーニングシステムを開発中なんです」

「AR? VRじゃなくて?」

「VR良いっすよね。アニメみたいに、現実と瓜二つの仮想現実に入れる世界。早く来ないかな。まあ、この話は老神重工って場所から持ちかけられたんすよ。拡張現実の技術を使って、冒険者のための戦闘訓練施設を作れないかって」

「拡張現実……」

「まあ、細かいことは実物を見てみるのが早いっす。あと、俺も忙しくて、そっちのプロジェクトにまでは手が回りきってないんで、細かい説明はアキヅキさんに聞くことですね」


 というか、アキヅキはもう、協会で働いてるんだな。俺も頑張らないと。


「今、老神重工から二つのプロジェクトを持ちかけられてましてね。どちらも信頼できる冒険者の意見が欲しいってんで、俺からはアキヅキさんたちに色々頼んでるんすよ」

「アキヅキとフユコ」

「はい、そうです。その二人にそれぞれのプロジェクトのことを頼んでます」

「しかし、今。このタイミングなんだな」


 と、俺がそこまで話したところで、インターホンが鳴った。誰だろうか? と思っているとクニハラが「迎え呼んだんです」と言う。ああ、なるほどね。まあ、良いよ。


 再度インターホンが押されて、扉の向こうから「ア~キヤく~ん!」と元気な声が聞こえる。良い歳して小学生みたいなムーヴをするな。アキヅキ。


「……んじゃ、迎えも来たようだし行くか?」

「先輩さえ良ければ。俺は行けるっす」

「あんまりアキヅキを待たせると悪いからな」


 そんなわけで、そそくさと出かける準備をして、玄関に向かう。扉を開けると、そこにはアキヅキの姿があった。彼女は軽く手を挙げて「や!」と言う。挨拶のつもりです? ほんと、こっちまで元気を貰えそうなくらいに元気だね。


「どうも、アキヅキさん。車は?」

「すぐ外にフユコさんと待たせてあります。会長」


 クニハラは頷き、俺に「行きましょう」と言う。了解だ。目指すは冒険者協会だな。レッツゴーだ!


 アキヅキが言ったように、家を出てすぐの場所に車が停めてあった。運転席にはフユコの姿がある。彼女がこちらに会釈をしたので、俺も会釈を返す。ほどなくして、皆で車に乗り込む。席についてすぐにクニハラが口を開いた。


「……話の途中でしたね。アキヤ先輩」

「ん……ああ、今のタイミングで老神重工から話が来たのはなんでかって話だよな?」

「そうっす。元々、この話は前会長の時代から、出ていた話らしいんです。でも、前会長がずっとその話を断っていた。老神の方は、それでも独自に計画を進めてたらしいんです」

「なるほど?」

「で、俺が新しい会長になった今のタイミングで、改めて協会に話が来たって訳ですね。向こうからのプレゼンは力入ってましたよ。冒険者の安全性を高められるってね」

「安全性、か」


 そういうの前会長は嫌いそうだなあ。と思った。あいつは冒険者の活動を殺し合いのショーとして、楽しんで見ていた節があるから。冒険者の安全性とか興味なかったんだろうなって、容易に想像できてしまった。


「あそこの社長さん。父親の理念を受け継いでるらしいんすよね」


 クニハラが楽しそうに語る。彼が楽しそうにしてるってことは、悪どい話ではないんだろう。そこは安心できる。


「なんだったかな。ダンジョンの外で安全に狩りができないなら、ダンジョンを安全にしてしまえば良いじゃない……だったかな」


 ふぅん……? ダンジョンの外で? なんか、そういう話を最近したな。ま、良いか。詳しいことは向こうで聞くとしよう。

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