バロメッツのステーキ
それじゃあ、今夜はバロメッツの実でステーキを作ろうか。それと、パンも用意しておいた。パンはお口直しようだな。未成年のために果物のジュースを急いで準備した。用意してたワインは、サナたちには飲ませられない。そこはしっかりしてますとも! 調理と食事を楽しもう!
フライパンに油をしいて、弱火で熱する。一応、サナたちに確認をしてから薄く切ったニンニクを投入。こいつがきつね色になるまで炒める。ニンニクの匂いってのは食欲をそそる。油の音も楽しみ、一旦ニンニクを取り出す。
さあ、ここからバロメッツの登場だ! 塩とコショウを振りかけてから、熱々のフライパンに並べると、ジュウ~! と、実の焼ける音がする。益々、お腹が減ってきた。耳に楽しく、鼻に楽しく、お腹は空く。楽しいが、長引いてほしくはない時間。
中火で、実の片面にこんがり色がつくまで焼く。もう片面も、同じようにだ。バロメッツの実は薔薇色程度に焼くのが一番美味しいとされるが、俺個人の意見としては、しっかり焼いた方が安心だ。なので、今回はウェルダンに焼かせてもらう。
そしたら火を止めて、実の上にアルミホイルを被せておこう。こうして熱は無駄なく使う。美味いステーキを食べるためなら、これくらいの手間は喜んでかけるさ。
十分程度、実はこうしておく。そうした後、ソースを作ろうと思う。せっかくの料理だ。手は抜かないぞ。
充分な時間が経ったら、アルミホイルを外し、肉を取り出す。フライパンに赤ワインを入れてから、再び火にかける。熱でアルコールを飛ばすのだ。バターと蜂蜜を加えて溶かすぞ。そうして火を止めたら、美味しいソースの完成だ!
皿の上のステーキにソースをかける。こいつは良いね。凄く良い。塩コショウの効いたバロメッツの実と、甘く濃厚なソース! この相性が、悪いわけない! 調理者特権だ。ちょっと味見してみよう。
ステーキにフォークを刺し、ナイフの刃を入れてみる。お、おお! 実へと、吸い込まれるみたいに刃が入る! 柔らかく、しっかりした固さも感じる。これは何に例えるべきだ? なんというか菓子だ! ケーキを切っているような感覚に近い。それでいて、バロメッツの実は決して崩れたりすることはない。これは、口に入れた時の食感にも期待が持てるぞ!
一切れの、ステーキを口に運んでみた。おお! こいつは、本物の肉みたいに、ジューシーで、柔らかい! 食感はトロとかを食ってる感覚に近いな。ウェルダンでこれか。しっかりとした肉の厚いトロみたいだ。油は、瑞々しいとすら思えるほどにスッと喉を通るぞ。それでいて濃厚な味には、とんでもない充実感を覚えた。これは……相当有りだ! 流石は練馬のダンジョンの食材だな。
料理をテーブルに運び、皆で食べる。バロメッツのステーキは非常に好評だった。作ったものを皆に喜んでもらえると、凄く嬉しい。
「こんなに美味しいものが採れるなら、私も冒険者になってみようかしら?」
姉さんが冗談めかして、そんなことを言う。勘弁してくれ。姉さんには、サナが帰る場所で居てほしい。そんな俺の思いが彼女に伝わったのか、姉さんは「本気にしちゃダメよ?」と笑う。冗談でも心臓に良くない。
ふと、サナが部屋をキョロキョロと見回していることに気付いた。あんまり部屋を見られると、叔父さんは少し恥ずかしい。
「……おじさん、部屋を急いで片付けた?」
「そ、そんなことはないさ。いつも片付けてるよ?」
「……あそこに靴下が起きっぱなしになってるけど」
あ!? ああ! 本当だ! 気付きにくいところに、靴下が出しっぱなしになっている!? サナはよく気付いたな。凄いぞ。サナ!
「……あ、あれはサナの注意力をテストしようとだな……」
「ほんとにぃ?」
うぅ、疑いの目を向けられると、弱るなあ。
「……実際は急いで片付けました」
「やっぱり、おじさん。そういうことなら、私が時々片付けにきてあげようか?」
「そういうことなら、ハルカちゃんも手伝うぜー」
「このウイカゼも、お手伝いしましてよ。お掃除も必要でしょう?」
いや、気持ちは嬉しいけどさあ。そんなことまでしてもらうのは悪いよ。
「大丈夫、これからは週に一回くらいは、ちゃんと片付けとか掃除とかする日を設けるから」
「本当に?」
「ああ、約束するよ。サナ」
「まあ、そういうことなら……でも手を貸してほしい時なら、いつでも言ってね! でも、今日は食器を洗うくらいはさせてね。いつものお礼!」
「ハルカちゃんも手伝うぞー」
「私もやりますわ!」
サナや皆の親切心がとても嬉しい。これからは、家のことも、もう少しちゃんとしよう。あんまりにも、だらしない生活をしていると、姪っ子に愛想をつかされてしまうかもしれないからな。それは避けたい。
ともあれ、今夜の食事会は皆に楽しんでもらえた。皆が帰った後、目の下にクマを作ったクニハラがやって来た。彼はだいぶお疲れで、ステーキを食べた後、満足するように眠ってしまった。しょうがないので俺の部屋まで運んでやり、ベッドに寝かせる。野郎と寝る趣味はないので、今夜はソファーで寝ることにする。今日は満足な一日だった。
明日は何をしようかな? そう考えながら、俺はウトウト深い眠りに落ちていった。




