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EOEスレイプニル

 空の割れ目から、草地に着地したのは八本の脚を持つ金色の馬だった。EOEスレイプニル。A級でも最上位の実力を持つ強力な魔物だ。並の冒険者には、致命的な一撃を放ってくるし、そのうえ硬くて、素早くて、空を飛ぶ。正直、相手にするのは面倒くさい。俺がソロならな。


「アキヤ。いけるな?」

「もちろんですよ。リュウドウさん」


 俺が前に出て、リュウドウさんは槍を構える。落ち着いていこう。スレイプニルは勝てない相手じゃない。


「来ますよ!」

「ああ!」


 スレイプニルが――加速した。瞬時にトップスピードまで到達するスキル。【加速】を持つ八本脚の馬は、最高時速三百キロに達する! 高速の突進! 対して俺は、ほとんど勘で盾を当て、スキルを発動する。


「――パリィ!」


 スレイプニルが大きくよろめいた。時速三百キロで激突してきたというのに、やつは傷一つ負ってはいない。とんでもない硬さだな。まあ、パリィが成功した時点で、こっちの勝ちはほぼ確定だろう。とどめは任せますよ。リュウドウさん。頼りにしてるんですから。


 リュウドウさんは俺の後方で大きく跳躍。彼が攻撃の予備動作をとっている間に、もう少しだけ、敵を引き付けておく必要はあるか。あと数秒、やってやる!


「影踏み!」


 俺のスキルにより動きを制限されたスレイプニルは再び加速して、俺に突撃を試みる。が、その攻撃を受け止めるのは容易い。こいつは速いが、直線的な動きで来ると分かっていれば、後は盾を構えて待っているだけで受け止められる。


 二度の突進を止められたスレイプニルの動きが鈍った。どうするべきか躊躇しているな? そこへ空中から落下してきたリュウドウさんが大槍を突き立てた。轟音が鳴り、スレイプニルの背中から腹までが破裂した。土と血液が勢いよく飛んで、辺りに赤黒い雨が降る。跳躍騎士の戦いは派手だねえ。


「ほい、勝ち」

「お疲れ様です。リュウドウさん」

「お疲れ。相変わらずの安定感だな。アキヤ」

「どうもです」


 EOEは退治した。魔物の死骸と血だまりが、塵になって消えていく。後にはクレーターが残された。じゃ、後はバロメッツを持ち帰って、今日の探索は終わりかな。重畳だね。


「リュウドウさん。さっきバロメッツの実を採ったんですけど、半分くらい持っていきませんか?」

「スレイプニル討伐のお礼かい?」

「そんなところです」


 俺の提案を聞いたリュウドウさんは肩をすくめる。彼は「嬉しいが……」と言って、少し考えるように指でアゴを掻く。遠慮なんか、する必要ないんだけどな。彼、こういうのは結構気にするんだよね。


「いや、ありがたい提案だが、今回は遠慮しておくよ。俺はもうちょっと、ここのダンジョンで体を動かしたい。荷物は軽い方が良いだろう?」

「……分かりました。そういうことでしたら、またの機会があれば居酒屋にでも行きませんか? リュウドウさんと話したいこととかあるし」

「そうかい? じゃあまた、そのうちな」


 リュウドウさんは、のんびりとした様子で俺から離れていった。苛烈な攻撃が印象的なS級冒険者、跳躍騎士のリュウドウ。久しぶりに会った彼は、前よりも身近な相手に感じる。それは、十五年の消失の間に、リュウドウさんと俺の歳が、かなり近くなってしまったからだろう。逆浦島状態というか、やはり奇妙だ。


 さ、バロメッツの実を、持って帰るとしよう。新たな魔物が出てくる前に。面倒はごめんだからな。


 それから……俺はダンジョンの出入口付近でバロメッツの実を解体し、練馬ダンジョンを無事に脱出した。監視センターにEOEの出現は報告しておく。ま、後は協会の方で何とかしてくれるだろう。クニハラの新しい冒険者協会に期待だ。


 日が高いうちに、俺は武蔵野にある自宅まで戻ってきた。我が家に帰ってくると安心して力がゆるむ。


 さて、夕飯はバロメッツのステーキでも作るかと考えて、一人で食べるのはちょっと寂しいとも思う。別に一人でも平気だけどさ。いつの間にか、俺は寂しがりになっているのかもしれない。もしくは、誰かと過ごすのが楽しくなっているのか。その変化に嫌な感じはしない。


 スマートホンで姉さんにメッセージを送る。まあ、家に呼べるほど近しい間柄ってなると、限られるよね。あとは、一応クニハラにもメッセージは送っておくか。晩飯でも食いに来ないかってさ。クニハラの方は忙しそうだが、連絡しなかったら、それはそれで後から何か言いそうだし、あいつ。まあ、来てくれたら嬉しいよ。そのくらいの気持ちでメッセージを送信!


 ほどなくして二人からメッセージが来た。姉さんからは『おっけ!』という軽い返事。クニハラからは『血反吐を吐いてでも行きます』という悲壮感のあふれる返事が来た。うん……あいつが送れて来ても良いように、料理はとっておいてやろう。そうするべきだと思った。


 んじゃ、姉さんやクニハラが来る前に、家の片付けはやっとくか。なんとかなるさ。ガンバルゾー!


 で……そろそろ夜という時間に姉さんたちはやって来た。うん、俺は姉さん一人で来いだなんて行ってないからね。サナが、ついてくることまでは、予想もできてたよ。でもね……ハルカさんとウイカゼさんが一緒に来てるのは予想してなかったよ!?


 どうしよう……? 今日一日でバロメッツの実は、全部無くなるかも。

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