マイコニドハント
次の土曜日、多摩ダンジョン。小川のせせらぎが気持ちの良い自然豊かなダンジョンへと、俺たちはやって来ていた。久しぶりに来たが、良い場所だ。
「こんサナー! 私たちは、多摩ダンジョンに来ています。今日は、ダンジョンで料理を作ってみようと思います! アキヤおじさんは料理も作れるんだって!」
「簡単なものだけどね」
※おー料理会か
※何作るん?
※美味しい料理の予感!
※こんサナー
※料理かー。良いね
サナの宣言から始まった配信には、早速コメントがついていく。反応が返ってくるのは、やっぱり楽しいものではないかと思う。俺は楽しい。
「では、まずは食材の確保から、やっていこうと思いまーす! というわけでおじさん! 今日、作る料理を発表しちゃってください!」
「了解です。というわけで、今回俺たちはキノコのバターソテーを作ろうと思ってます。ただのキノコソテーじゃありませんよ。マイコニドという食材を使ったソテーです」
マイコニド。歩くキノコ。やつらは魔物ではなく食材判定なのである。その証拠に、倒してもすぐに消えたりしない。魔物は大抵が、倒すと塵になったり、煙を吹いたりして消えるからな。ダンジョン内を歩き回ってて、食用にもできる存在ってのは凄く貴重だ。味も良いしな。俺はマイコニド好き。
※マイコニド!
※歩くキノコか
※あいつら可愛いよね。しかも美味いんだ
※多摩ダンジョンなら危険な魔物も居ないし、安心して料理ができるね
※EOEも先日確認されたばかりだしな。別のS級が居合わせて倒したんだっけか
今回、ダンジョンで食事を作るのには、もちろん理由がある。今後挑む広範囲ダンジョンでの活動を見据えているのだ。すぐに、そういうダンジョンへ挑む訳ではないが、少しずつ経験を積んでおくべきだろう。
「いずれは数日がかりで攻略するような広範囲ダンジョンの攻略も、視野に入れたいですからね。少しずつ、パーティの皆にダンジョン内での野営にも慣れてもらいたんですよね」
「所謂上級ダンジョンでの活動に備えての訓練って訳だなー。ハルカちゃんも頑張るぜー」
その通りだ。ハルカさん。まあ、携帯食料だけでも、数日の活動には耐えられるんどけど、選択肢は増やしておいて損はない。体力回復の効率で言えば、ダンジョン食材に勝る食べ物は無いしな。それにこれは配信だからね。リスナーに楽しんでもらえる企画があるなら、積極的にやっていきたい。
ウイカゼさんが、辺りをキョロキョロしている。目的の食材を探しているのだろうか。やる気充分だね。その気持ちはとても良いと思う。
「それではマイコニドを探しましょうか。おじ様、そのキノコを探すコツはあるんですの?」
「コツは、足跡を探すことと、香りに注意することですかね」
「足跡と、香り……ですの?」
「そう、マイコニドは松茸みたいな香りを出していますから、注意していれば気付けますよ」
というわけで、早速多摩ダンジョンの探索を開始する。ほどなくして、丸っこい足跡を発見。追跡をすること数分。菌糸特有の香りが鼻に届く。
「マイコニド。近いですよ」
「分かるの? おじさん」
「分かる。経験則ってやつですよ」
そして、予想通り一分もしないうちに歩くキノコを発見。人の幼児くらいの大きさのキノコは食材だと考えると、なかなか存在感がある。やつは木々の間をトコトコ歩いていた。倒すのは、そう難しくない。ここはサナたちにやらせてみよう。彼女たちには、色々な経験を積ませてやりたい。
※あれがマイコニドか
※可愛い
※美味そうだ
※あれで魔物とは別分類らしいから不思議だよな
※食えるなら、なんだって良いぜ
「サナたちに行ってきてほしいです」
「私が?」
「任せました」
「了解」
ハルカさんとウイカゼさんも頷き、三人は行動を開始する。サッと動き、位置についた。慣れたものだな。これまでの経験が活きているぞ。三人の成長が感じられて、おじさんは嬉しいよ。
そして、三人がマイコニドを襲う! 背後から迫ってくるサナに驚いたキノコは、慌てて逃げようとする。が、ハルカさんとウイカゼさんに進路を塞がれ、逃げることができない。そこへサナの新しい剣による一撃! マイコニドが縦に割れた。
「おー! やりました! マイコニド撃破です!」
「食材確保ですわ!」
「やったなー。と言いたいとこだが、敵さんだぜ」
サナたちの前に現れたのはゴブリンが四体。やつらもマイコニドを狙っていたのかな。魔物たちはダンジョンでは、こういう食材を食べている。で、悪いがおまえたちには、このキノコはやらん! すぐにサナたちの陣形に加わる。
「とりあえず、一人一殺でいきますか」
「「「了解!」」」
ゴブリンたちが全滅するまで十秒かからなかった。小鬼の群れはあっという間に、塵になって消える。こうしてみると、食材と魔物の差をはっきりと感じられる。彼らの違いってなんなんだろうね?
「改めて……食材確保! 皆、お疲れ様です」
「えへへ! これくらいなら簡単だね!」
「もっと難しい食材だってゲットできましてよ! たぶん……」
「なんにせよ、これで料理ができるぜー」
※おー
※ひとまず、お疲れ様
※こっから器具を準備して調理開始?
※キノコ料理良いねー
※さあ、ここからだ
コメントにもあった通り、ここからは器具の準備をして調理開始……いや、念のためダンジョンの入口付近までは戻っておくか。調理も頑張るとしよう。




