三話 ガイアの話を聞きました
三話 ガイアの話を聞きました
「箱庭から逃げたガイアは巨人族の村タイタンにたどり着いた。そこでとある巨人の青年の家に居候というか、住み着いたんだ。そこで借り暮らしをしていた」
なんだか要とエスパーダの話とダブる。エスパーダが課金に手を出さなければ要は永遠に居候を許していただろう。
「しかしガイアは青年にあっさり見つかった。でもその青年はその後もガイアと暮らした。そして二人の間に子供が生まれた」
「え? なんで?」
「神話だから。詳しい事は知らない」
思わず聞いてしまった要に素っ気ない返しをする。そりゃそうだ。神話にいちいちなんでなんて聞くのは野暮ってもんだ。
「生まれた子は小人でクロノスという。やはりタイタンの女と結婚して小人のウラノスが生まれた」
どこかで聞いた話パート2だ。要が知っているギリシャ神話に酷似している。その後、ゼウスが出てくればもうあやしい。
「そのウラノスはタイタン村の女と結婚して、ハデス、ヘラ、デメテル、ポセイドン、ゼウスが生まれた。やはり小人だった」
要はそこでストップをかけた。
「なんか人間の世界に似たような神話あるんだけど……」
「そんなの知らない。これは小人族の神話だ。他人が勝手に変える事は許されない。歴史もしかり」
エクスカリパーが言っている事に別のメッセージが乗っているように感じた。しかしまだ話は終わりではないらしい。
「ガイアの子孫はタイタン村の巨人達との子供を増やしていった。特にゼウスは女癖が悪く、たくさんの子供が生まれた。そして村は小人族の村になった」
「そんなの元々いた巨人族が許すはずないんじゃないか?」
「もちろん争いになったさ。だが小人族は生まれた時から超能力を持っていた。だから巨人達は太刀打ち出来なかった」
「じゃあ、なんで巨人の子孫?」
「小人族には巨人の遺伝が弱いと超能力が発現しない者がいてね。積極的に巨人と交わるようになった。ガイアは巨人達と仲良くしたかったから、クロノスやウラノスとともにゼウスを止めたかったんだけど、彼等は追い出されてしまって、どこへ行ったかは知らない。ここまでがガイアの神話」
「この話ってガイア、最初だけだよね?」
「でも彼女がいなかったら巨人達は穏やかに暮らしていたし、今も巨人はいたかもしれない」
「タイタン村だけだったの? 巨人の村」
サイズが聞くとエクスカリパーは首を傾げた。
「神話って話したい事以外スッカスカだから。私は知らない」
「ふーん」
「だから超能力の使える小人族は巨人の血を引いているって事だ。私は目が合った相手をその場から動けなくする超能力が使える。まさか破られるとは思ってなかったけど」
「愛の力だよ」
サイズが言うと、なぜかエスパーダが照れた。
「なんであんたが反応してるの?」
エクスカリパーは日本刀をエスパーダに突きつける。
「ストップ! これ以上、血は流したくない」
「命拾いしたわね」
要に止められ、エクスカリパーは日本刀を鞘に収めた。白木の鞘で、鍔がない。侍というより、侠客に近い。
「でも巨人と子供作ったのに一人もデカい子供が生まれなかったのはどうしてだ? 小人族が母の時も、巨人族が母の時も子供は小人だったんだろ?」
小人達は黒星の問いに誰も答えなかった。
答えたのは気絶していたはずの兎だった。
「それは小人化が優性遺伝だったからよ」
予想外の発言と内容の分からなさで、リアクションが取れずにいた。
「誰か反応して!」
沈黙に耐えられず、兎は大きな声で訴えた。