一話 動けませんでした
一話 動けませんでした
「エスパーダ」
要はやめさせようと近付くが、日本刀を持った小人と目が合ったと思ったら一歩も動けなくなった。幸い首から上は動いて、息もできるし、しゃべられる。
「エスパーダ! 大丈夫か?」
まずはエスパーダの安否を確認する。
「大丈夫じゃない……」
首を起こそうとすると刃の部分を押し当てられ、エスパーダは動けないでいる。
なんとか日本刀の小人と交渉しなければならない。この動けない状況で。
「俺は宿守要。エスパーダは俺の恋人なんだ。解放してくれないかな?」
すると彼女はこちらに向けて怒りを発する。部屋全体に伝わらんばかりの凄まじいものだ。
「こいつは私を愚弄した。だから刈る!」
「なんて? なんて愚弄したの?」
「私の名前をバカにしたのだ。みんなで笑って。私の名前をバカにするやつは刈ると決めているんだ」
物騒な事を言う。
「あなたの名前は何というのですか? 俺は聞いてません」
「私の名前は上杉……だ」
肝心な部分が聞こえない。
「え?」
要は近付こうとするが動けない。
「上杉絵……だ」
少し聞こえた。これを続ければフルネームいけるかもしれない。
「すいません。もう一度」
要がそう言うと向こうは睨みつけてきて、顔を真っ赤にして言った。
「上杉絵楠狩派阿!」
それを聞いて唖然とした。エクスカリパーってゲームにしか出てこないやつではなかろうか。おかしな名前だろうという証拠にエスパーダ達が笑いを堪えている。これが原因なのは確実で、しかも懲りてない。
「笑うな!」
エクスカリパーは刀を振り上げ、斬首の態勢に入った。
このままではエスパーダが死んでしまう。
「動け、動け、動け、動け、動けーっ!」
要は必死にもがき、動きを封じていた何かを無効化する事に成功。エスパーダを両手でガードした。
エクスカリパーは近くにいながら要が動いた事に驚き、彼の邪魔を許してしまう。ただそれでも攻撃は加えた。要の手に。
「うっ……」
またこの部屋で血が流れてしまった。
「すまない!」
エクスカリパーが刀を引いたが、血は止まらない。
「どうしよう……」
エクスカリパーは動揺していた。巻き添えなぞ構わないスタイルかと思っていたので意外だ。
「あの、私なら治せるよ」
サイズがエクスカリパーに話しかけた。彼女も首から下が動けないようだ。
「しかし……」
「このままだと要死んじゃうよ。お料理食べられなくなっちゃうよ」
「僕等にとって損失以外の何ものでもない」
「早くサイズを解き放つんだ」
食欲を刺激されて、スミス姉妹も騒ぎ始めた。
エクスカリパーはその必死さに狼狽えている。するとどういう原理か、みんな動けるようになった。
サイズが要に近寄ると、エクスカリパーは周囲を警戒した。反撃に来ると思っていたのだろう。あいにく小人達はそんな事はしなかった。
サイズが傷口にキスをして光り始めると、エクスカリパーはギョッとしている。
要の傷は塞がったものの、痛みは消えない。そして当然の事ながらサイズは血まみれだ。
「あなたも巨人の子孫なの?」
「はえ?」
血まみれのサイズが首を傾げる。
巨人の子孫とはどういう事か要が聞こうとした時、外から女性の声が聞こえた。
「サイズはめちゃめちゃかわいい! サイズはめちゃめちゃかわいい!」
どうやら兎真も到着したようだ。