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ショートショート10月〜4回目

今日も空はギュウギュウ

作者: たかさば

 青い空を……見ている。


 夏とは違う、秋の空。


 涼しげで、澄んでいて。

 どこか寂しげで、なんとなく遠くて。


 雲の姿を見て、季節が変わったことを感じる。


 あの雲が出る時期になったのか。

 あの雲は久しぶりに見た。

 あの雲が広がるとテンションが上がる。

 あの雲は去年も見た。

 あの雲をぜひとも写真に収めねば。


 懐かしさと安心感が、ふわりと…私をくすぐる。


 空を見上げて、のんびりと青い色を楽しむ。

 空を見上げて、気ままに青い色を望む。


 空の青を背景に、いろんなものが…流れていく。


 変な形の、雲。

 まっすぐ飛んでいく、鳥。

 のんびり進む、飛行機。

 あれは…風船?

 吹っ飛んでいく、葉っぱ。


 青に映える、現実の色。

 はっきり、くっきり、目に映る…現実の、色。


 鮮やかな色を見上げながら…ぼんやりと、空を望む。


 あ、おばけ。

 あ、宇宙船。

 あ、骸骨魔人。

 あ、怨念の権化。

 あ、能天気の塊。

 あ、厳つい鬼。

 あ、ちびっこい龍。

 あ、偵察機。

 あ、精霊。

 あ、魔法溜まり。


 青に混じる、創造の産物。

 不確かで、おぼろげで、目に映らない…想像の、色。


 現実の目玉で見ない空は、騒がしい。


 青い空いっぱいに、想像のかけらが浮かんでいる。

 広い空いっぱいに、創造の賜物がひしめき合っている。


 ドラゴンが恨みがましいばあさんを押しのけて、大仏がフェアリーに頭突きして、異世界の窓がぱかぱか開いて変なもんがこんにちは、虹が伸びたり縮んだり忙しそうだな、夜が顔を出しては舌を出し…それを見た夕日がカンカンになっている、ああもう閻魔大王のくせにそこら辺のおばちゃんの残留思念とクレープのクリームの量で争うのやめてくれないかな、てゆっか何あの宇宙船どう見てもうんこの形じゃんセンス悪っ、おやあそこのうまそうな骨付き肉はいったい何の肉だろ、オイオイどこのどいつだ札束をばらまいてはしゃいでるのは…あーあー、せっかくのきれいな空に汚らしい紙幣が散らばって!!!


 この辺りで一点集中しておかないと、空がギュウギュウになって何も見えなくなってしまう……。


 さて、今日はドレに……注目しようかな?


 昨日は陰鬱としたやつを選んだから、今日は明るい感じのがいいかな。

 最近しつこく表れるやつもそろそろケアしておかないとヤバいかも?

 たった今姿を現した活きの良いのを選ぶのも手だな。


 今日は……あの堂々とイチャコラしているバカップルでも文字にしてみようかな?

 ド派手に言葉を吐いているから、さぞかし文字数の多い勢いのある物語が書けるに違いない。

 最近ちょっとしょぼめの物語しか書けなかったから、こいつらにかけてみよ!!


 ……青い空の眩しさにクラクラし始めた私は、ボロボロの黒いスマホケースを取り出して。


 手元をにらみつけながら……、一心不乱に文字を打ち込み始めたのだった。

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