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雨音

作者: 朝川はやと

 日曜日。雨の朝には窓を開ける。下へと落ちて、やがて樹や葉や道を打つ静かな雨の音を聴く。冷たい空気が顔を包む。この冷たさを僕は好む。曇った灰の空を好む。


 幼い頃から、僕は雨の日が好きだ。もう20年も前の僕。幼稚園の広い庭。はしゃいだ声に満ちる庭。

 ドッジボールに鬼ごっこ、みんなと一緒にしたけれど、別にやらなくたって平気だった。いや、むしろ、やらない方が楽だった。焼ける肌と砂埃。「いや」という気持ちを自覚した。でも「なかまはずれ」は良くないことだ。そう幼心に思っていた。孤独が怖い透明人間。園庭で過ごす僕と、毎朝電車に運ばれる僕と、ずっと同じ透明人間。


 強い雨が降った日に、遊具の鉄は水を弾く。砂の城は跡形もなく濁った水になる。僕はひとりで外を眺めた。雨がもっと降るのを待った。遠くが光り「かみなり」が鳴るのを待った。今すぐに窓の外へと走りたかった。


 雨は次第に強くなり、生活の音は搔き消され、緑は風にちぎれ飛ぶ。曇り空から部屋に薄く明りがさす。ひとりの四畳半。弁当とペットボトル。床に洗濯物。もうすぐ動かなくなるスマートフォン。


 コートを羽織り、傘は持たずに僕は外へ出る。


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