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絶対防御の魔法使い  作者: スイカとコーヒー
白い眷属竜編 <Arubino Dragon>
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11.ラストフォート北側、再戦


 ドォォン!!


 ラストフォート砦北側を攻めるオリエンス軍のはなった火球が、石壁の上部で炸裂した。破壊された石がガラガラと崩れて砦の外へ転がり落ちる。全く後方からの砲撃がなかった前回とは異なり、今回は全力の攻撃ということか。


「これは、早く対処しないと不味そうですな」


 アルフレッドは独り言を呟く。北側の砦にはウィルフォードの障壁が及ばない範囲がある。多少の攻撃ならば耐えられるだろうが、砦が崩れてオリエンス軍の侵入を許せば、正面をいくらウィルフォードの障壁で守ろうと意味がない。


 とはいえ、すぐに砲撃を行う敵軍に突っ込んで行くこともできない。アルフレッドの前には、この前と同じくフォルジェ姉妹が立ちはだかっていた。


「さすがに、距離を取られると勝負がつけづらいですな」


 背後から聞こえる爆発音を気にしつつも、隙なくフォルジェ姉妹を視線に捉えるアルフレッド。しかし今日の彼女たちはほとんどこちらへ攻撃を加えてこない。おそらく、アルフレッドが睨み合いを続けて動けないうちに、砲撃によって砦を落とそうと言う作戦なのだろう。


 感づいたところでどうしようもないだろう、とでも言うように、剣を構えたフェリシテがニヤリと笑う。その間にも、フェリーネは静かにアルフレッドの視線から外れ、後方に回り込もうとしている。


「ふっ!」


 読み通り、後ろに回り込んだフェリーネがアルフレッドに斬りかかってきた。しかし全力というわけでもない。アルフレッドは軽く受けるが、こちらが反撃に転じようとすると、フェリシテが牽制にやってくる。そちらを防げば、フェリーネは再び距離をとる。ひたすらアルフレッドの足止めだけを考えているようだ。自分はともかく、今も攻撃を受け続けている砦が持たない。


「ふふふ。焦っているのかしら?あなたはここで私たちと一緒に、砦が陥ちる様子を観戦するのです!」


 フェリシテが笑みを浮かべる。安い挑発だ。とはいえ、この状況が続くことはよくない。どうしたものかとアルフレッドは考える。近くにいる護衛対象を守ることに関しては絶対の自信を持っているが、このように敵がバラけてしまうと相手を倒し切るのは難しい。


「攻撃については兄者にもう少し、稽古をつけてもらっておくべきでしたな。とはいえ、俺ができることをやるのみ!」


 アルフレッドは走り出す。姉妹の入る方ではなく、オリエンス軍に向かって。


「お姉さま!魔法部隊を襲う気です!」


「!?あいつを止めなさい!」


「やはり、彼女らは守ることには慣れていないようですな……盾衝撃(シールド・バッシュ)!」


 アルフレッドが一つの部隊に攻撃を繰り出す。盾から放たれた衝撃派が、防御手段を持たない魔法兵たちを直撃する。魔法兵たちはなすすべなく吹き飛ばされる。


「貴様ぁぁあ!!」


 フェリシテが激昂してアルフレッドに突撃する。それを待っていたアルフレッドは、持っていた盾で槍をいなし、振り向きざまに斧で彼女を殴りつける。


「うっ」

「お姉様!!」


 吹き飛ばされたフェリシテは、後を追ってきたフェリーネに受け止められた。


「やっと一撃入りましたな!」


 形勢逆転だ。アルフレッドは近くの部隊を襲えばいい。あの姉妹が止めなければ部隊を殲滅でき、砦への砲撃を防げるし、こちらへ攻撃を仕掛けてくるなら次こそは無力化して見せる。焦りの色を浮かべたのは妹のフェリーネだが、姉のフェリシテはまだ鋭い眼光でアルフレッドを見据えている。


「フェリーネ、やりますわよ」

「……はい」


 フェリシテが何を指示したのかはわからないが、二人の表情が代わり、決死の雰囲気が伝わってくる。


 おそらく、勝負をつける気になったのだろう。


「ふぅぅ」


 フェリシテは深く腰を落とし剣を構え、力を蓄え始めた。前回、最後に放った強烈な突き技の準備動作だ。とはいえ、それはアルフレッドには効かなかったが。


「それは無駄だとわからなかったのですかな?」


 アルフレッドは周囲に気を配りつつ、盾を構える。


「はぁああ!!」


 逆側で、フェリーネもその長槍を構え、力を貯める。なるほど、二人同時の全力攻撃なら、アルフレッドの防御を抜けると考えたのだろうか。


「「ああああ!!!」」


 咆哮とともに、二人が同時にアルフレッドへ攻撃を仕掛ける。


「ソード・ピアシング!!」

「アサルトランス!」


 寸分の狂いもなく二人同時に、アルフレッドへそれぞれの技が襲いかかる。


 しかし。


 高速で突き出された槍はアルフレッドに踏みつけられ、神速で突き出されたロングソードも、再びアルフレッドの盾が受け止める。


 と、その瞬間。


「フェリシアッ!」


 アルフレッドの首筋に、一拍遅れで三人目からの斬撃が放たれた。


「イヤァァァア!!!」

「むっ」


 虚をつかれたアルフレッドだが、咄嗟に巨大な斧を手放すと、右手の手甲で横凪ぎの剣筋を上にそらす。真横に滑り込んできた刀身と斜めにかざした手甲がぶつかり、火花を散らす。


「おおおっ!」


向きを無理やり変えられた刀身は、手甲の上をギャリギャリと火花を散らしながら受け流された。


「そんな……」

「ふん!!」


 剣がアルフレッドの頭のすぐ上を通過し、手甲は自由を手に入れる。アルフレッドはその手甲を槍を踏まれて体制を崩したフェリーネに振り下ろした。


「ッ!」


 後頭部に衝撃を受け、フェリーネは失神した。振り下ろした右手で、投げ捨てた斧を拾い、持ち上げながら体をひねる。


 重量のある斧はアルフレッドの体を中心に円を描いて半回転し、盾で動きを止められたフェリシテの胴に強烈な勢いで叩きつけられた。


「!!!」


 言葉も発せずにフェリシテは吹き飛ばされ、二回三回と転がって止まると、ピクリとも動かない。


「……ひぅ」


 フェリシテ、フェリーネがやられ、フェリシアはへたり込む。


「まさか三人姉妹だったとは。少し危なかったですが……」


 この、最後に突っ込んできたフェリシアとやらは、顔立ちは他の二人とよく似ている。おそらく姉妹なのだろう。前回彼女がいなかったのは、この姉妹が二人だけだと無意識に刷り込むためだったのだ。姉二人による同時攻撃に意識が向いている瞬間を、伏兵である三人目が襲い掛かる。いくら実力が高くても、不意を突かれる可能性は高い。


 必勝の策を破られ、姉たちの敗北を初めて目の前にしたせいか、フェリシアは戦意を喪失しているようだった。


「本来ならば捕らえた方が良いのでしょうが。。今は砦の北側の安全確保が先ですな」


 こうしている間も砦への砲撃は続いている。あらかた部隊を壊滅させたら、ウィルの元へも向かった方がいいだろう。


「今回は敵も本気のようですからな。殿下に何もなければ良いのですが……。まずは近くの兵を蹴散らすとしましょう」


 フォルジェ姉妹を撃退したことで動揺の広がるオリエンス兵たちをアルフレッドは見回す。さて、魔法攻撃を続けるこの部隊を効率よく無力化するにはどう動くか。



 ドォォォォン!



 地響きとともに、ひときわ大きな爆発音が伝わってくる。砦の北側ではない……正面のようだ。ここからでは見えないが、今までとは比較にならない規模の爆発に違いない。おそらく砦の南北だけでなく、正面にも前回以上の攻撃が加えられているのだろう。


「北側を制圧して……早く殿下の元へ急がねば」


 アルフレッドは斧を持つ手に力を込めると、走り出した。


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