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絶対防御の魔法使い  作者: スイカとコーヒー
小国の薔薇編 <Little Rose>
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7.リンドグレーン女王戴冠式・祝賀パーティ

 戴冠式の後、しばしの時間をおいて、王の間では新女王の即位を祝うパーティが開催されていた。新たな王国の門出に、豪華な食事が食べきれないほどの量を並べられ、飲み物にはどれだけ金を費やしたのか分からない程、貴重な酒がふるまわれている。

 パーティは立食形式で、式典に参加した貴賓たちにシェリル新女王が順番に声をかけて回る予定のようだった。


 基本的にこういった場では目上の人物から話しかけるのが礼儀だ。今回はホストでもあるが戴冠式の主役でもある、シェリル女王が最も上位者の位置づけとなる。このためシェリル女王から、参加している者たちに声をかけることになる。

 だが今回は立食形式のパーティということで女王が話しかける順番はそれほど厳密ではないらしく、シェリル女王は最初は前王ゆかりの古参の貴族たちと会話を楽しんでいるようだった。ウィル達も順番が来るまで思い思いに食事や飲み物を楽しんでいたところへ、ある男から声をかけられた。


「お初にお目にかかります。エスタリアの皇子ウィルフォード殿下。吾輩はオリエンス王国公爵、レナルド・メレディス・リプセットと申します」


 戴冠式で最後に入ってきた、口髭の男だ。


「貴様っ……」


 目上の人物から声をかける、すなわち、この貴族は自分が帝国の皇族よりも上だと考えているということだ。突然話かけられたことに怒りをあらわにするリズだが、それを遮ったのはウィルだった。


「これはこれは、名高きオリエンスの高位貴族と会えるとは。どんな要件でしょうか?」


「いえ、大したことではありませんが。

 歴史あるリンドグレーン新国王の就任に際して、帝国からの使節が年端もゆかない子供のようでしたから、どうもこの国を軽んじておられるようでは?と心配になった次第」


 一国の皇子を捕まえて「年端もゆかない子供」などど、帝国内であればその場で切り捨てられても仕方のない暴言だが、ここは帝国でも王国でもない第三国。問題を起こせば帝国も汚名をかぶることになる。

 下手に手を出せないことを知っていて、これほどの挑発をしているのだろう。


「心配ご無用。リンドグレーン王国との友好は非常に重要だと考えています。

 その証拠に、これでも私は王位継承権を持った皇族です。次に貴公と会うときは私の戴冠式かも知れませんよ?

 まぁ、その時の出席者は貴公では格が足りないと思いますが」


「……ふん。いずれにしろ、我がオリエンス王国はリンドグレーンとより親密な関係を望んでいる。邪魔をしないでほしいものですね」


 ウィルが思いのほか冷静で挑発に乗らないのが予想外だったのか、レナルド公爵とやらはそれだけ言って去っていった。後ろには数人の貴族がついていたが、どうやら彼らはリンドグレーン王国の貴族たちらしい。「さすがはレナルド公爵。帝国に一歩も引かない姿、お見事です」などとご機嫌取りに必死なようだ。



「ふぅ。俺、帝国から出たことがないスから、殿下にあんな口をきくなんて想像つかないっスね」


ピリピリした空気が少し緩んだところで、サイラスがボソッとつぶやく。


「そうかな?サイラスはいつもあんな感じだと思うけど?」

「ウソでしょ!?俺そんな失礼な奴じゃないっスよ?」

「とにかく、今日の出席がウィルフォード殿下で安心しました。ほかの皇族の皆様でしたら、おそらくあ奴はもう死んでいるでしょうな」


 アルフレッドは肩をすくめてそういった。まぁ、確かにプライドが高く、そして実力もある兄上たちであれば、アルフレッドの言うこともあながち誇張ではない。

 とくに気性の荒いヴェンパー兄上や、礼儀にうるさいオクタス兄上などであれば、最初に話しかけられた時点で首を飛ばしてしまう可能性もある。


 とりあえず、注意すべき相手との邂逅を終えることができた一行は、この時話しかけられるまで、今日最も注意すべき相手のことを忘れていた。


「本日ははるばるようこそいらっしゃいました。ウィルフォード殿下」


 気品と威厳を持った声色で話しかけてきたのは、先ほどまで旧知の貴族と会話を楽しんでいたはずの、シェリル新女王その人だ。後ろにメイドを一人、付き従えている。


「あっ!背の小さい女王さま゛っ!痛い……リズねぇさん……」


 サイラスがまた失言しかけてリズに殴られたのだが、その声と一瞬の間のおかげで、ウィルは驚きを心の中にさっと隠し、体制を整えてシェリル女王と対することができた。持つべきものはサイラスだ。


「シェリル女王。改めて自己紹介を。

 栄えあるエスタリア帝国第四皇子ウィルフォードでございます。歴史あるリンドグレーンの新たな国王誕生を祝福いたします」


 確かにサイラスの言う通り、ウィルと並ぶとこぶし一つ以上、シェリル女王の方が小さい。年齢を知らなければ成人しているとはわからないほど、顔立ちも幼く見える。だがその視線は、生粋の王族らしく捕らえた相手を注意深く品定めしている。そして今その対象が自分であることを、ウィルはひしひしと感じていた。


「祝辞をいただきありがとうございます。ほかの皆さまをご紹介いただいても?」


 ウィルと握手をしながら、シェリル女王は側近たちの紹介を要望する。


「こちらが、帝国護衛騎士のリゾルテ、アルフレッド」


「リゾルテです。歴史あるリンドグレーンの新たな国王誕生を祝福いたします」

「アルフレッドです。歴史あるリンドグレーンの新たな国王誕生を祝福いたします」


 二人が膝をつく。


「まぁ、この方々がかの有名な帝国護衛騎士ですか。本日はよくいらっしゃいました。さ、お立ちになられて楽になさってください」


「ご配慮、感謝いたします。

 そしてこちらが、わたしの配下のサイラスと、神聖教神官ユーベルです。ユーベルは訳あってフードをとれないため、ご容赦を」


「さ、サイラスっス……です。歴史あるリンドグレーンの新たな国王誕生を祝福いたします」

「ユーベル・マクナイトと申します。フード越しのご挨拶をお許しください。歴史あるリンドグレーンの新たな国王誕生を祝福いたします」


「サイラス、ユーベル。祝福の言葉をありがとう。パーティですから、二人も楽にしてください」


 このような貴族の集まる場では、ユーベルの顔を知っているものがいる可能性もあるため、顔はなるべく見せないようにしている。幸い、シェリル女王はフードを取らずにいることを認めてくれたようだった。

 むしろそれよりも、この二人がどうも平民であることに興味を持ったようだった。


「それにしても、ウィルフォード殿下は人徳がおありなのですね。貴族ではない方からも、忠誠を受けているとは」

「騎士のような忠誠というよりは旅仲間と言った方が正しいかもしれません。大陸中央を回った時から、ともに旅をするようになりました」

「ええ、ご活躍はお聞きしています。なんでも、聖教都市ブリストンに現れた悪魔を退治されたのだとか。詳しくお聞きしても?」


 何が女王の琴線に触れたのか、それからは、聖教都市ブリストンでの騒動やら、中央都市での一件やら、帝国内のごたごたを話せる範囲でウィル達の”活躍”として話す羽目になった。





「……長々と話し込んでしまい申し訳ありません。衣装直しがございますので、退席させていただきます。

 ではウィルフォード殿下、明日の王国議会への出席もよろしくお願いいたします」

「僕も、伝統あるリンドグレーン議会への出席を、楽しみにしています」


やがて満足したのか、シェリル女王はそういって会場を出ていった。


「ウィルフォード様、明日も何かご用事があるのですか?」


 シェリル女王との会話を静かに聞いていたユーベルが、ふと口にした疑問に、ウィルが答える。


「ああ。明日は国王就任後初めてのリンドグレーンの議会が開かれるんだ。今日の招待客は皆そこにも出席するんだよ」


 普段、リンドグレーンで定期的に行われる貴族たちの会議が、明日も予定されている。これも戴冠式の続きで、儀式的なものなのだろうが、新王が問題なく政治を執り行うさまを周囲の国家に見せつける意味合いがあるのだろう。


「そうですか。貴族の皆さまはご苦労が多いですね」




 この時のユーベルの独り言が全くその通りだとウィルが気づくのは、まさに翌日の王国議会でのことになる。


いつも読んでいただき、ありがとうございます


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