3/138
1.助けてください!
「はっはっはっ……」
走る。走る。乾いて、土埃の巻き上がる街道を全速力で走る。
後ろを振り返る暇はない。先程から何度か矢が飛んできて、足元の地面に突き刺さったが、幸い自分にはまだ命中してはいない。いや、もしかするとわざと外しているのかもしれない。武器も持たず、反撃もできない相手をいたぶって遊んでいるのだろう。
「はっはっ……はぁ……はぁ」
もう足がもつれてきた。ここ最近、街の周辺に盗賊が現れているとドロシア神官になんども注意されていたのに、油断して一人で出歩いてしまったためにこんな目に遭ってしまった。警備員がいる街の入口まではまだだいぶ距離がある。かといって街道から外れれば森のモンスターの餌食だ。
もうだめかと諦めかけたが、坂を上り切ったところで少し遠くに人影を見つけた。もしかしたら助けを呼べるかもしれない。私は残りの力を振り絞って叫んだ。
「たっ……助けてください!!!」