12.悪魔たちの集い
サイラスが大聖女と邂逅し、ウィルフォード一行をユーベルが襲撃していた時、主教たちは再び集まっていた。
「して、儀式の準備の状況は?」
「いつでも発動可能だ。お急ぎか?」
クレイグ主教の問いに、ウォーレス主教は珍しく口角をあげて答える。
「ええ、召喚を早めねばならなくなりそうです。今晩、ユーベルをウィルフォード暗殺に向かわせました。これに成功したことを確認した上で、魔族を召喚し、暴れさせます」
クレイグ主教の話の筋が見えたのだろう。他の主教が合いの手を入れる。
「なるほど。突如現れた魔族がウィルフォード王子一行を殺害というわけですか」
「そうです。ついでにユーベルにも死んでもらう予定です」
「しかし、それでは癒しの奇跡の使い手がいなくなってしまいますぞ。少々勿体無いのでは」
「この辺が頃合いです。大聖女ももう長くは持ちません。彼女が死ねば、ユーベルを意のままに動かす手綱を失うことになる。そうなる前に始末せねば」
おぞましい。
これが主教の口から発せられる言葉なのだろうか?同席しているピーター主教は頭を抱えた。
できることなら耳も塞いでしまいたい。これではどちらが魔族かかわからないではないか。いや、この状況を座して眺める自分だって、もはや同罪だ。
そして、さらに頭を痛めるような発言が、ウォーレス主教から発せられた。
「魔族の召喚に成功すれば、もはや癒しの奇跡で資金を集める必要はない。魔族の戦力を持って、帝国に独立を宣言する。」
「おぉ、ついに!」
「女神シーラによる大陸の統治がはじまるのですな!」
「手始めに、リンドグレーンを攻め落とす予定だ。小国とはいえ、国を制圧するほどの戦力を外部に示せば、おいそれと攻め込まれることもなくなるだろう」
帝国中央、南部に位置する小国・リンドグレーン王国。帝国からも独立を保ちつつ、オリエンス王国からの散発的な侵略行為に対しても、領土を明け渡したことはない。
政治的には帝国とオリエンス王国の間を行き来して利益を上げ、軍事的には2つの大国の緩衝地帯として生き残っている狡猾な国だ。
最近代替わりし、若干18歳の女王が国を治めている。その小国へ侵攻し、後釜に神聖教による宗教国家を打ち立てようとしているのだ。
「さて、ユーベルの報告を待つことにして、今日はここまでとしましょう」
ウィルフォード暗殺後の手筈を確認した主教たちは、クレイグ主教の言葉を最後に、それぞれの拠点へと帰っていった。
しかし計画は狂い始める。明け方、ブリストン大聖堂へ戻ってきたユーベルから、ウィルフォード暗殺失敗の報がもたらされた。
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