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絶対防御の魔法使い  作者: スイカとコーヒー
聖女救済編 <Save the Saint>
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3.ブリストン大聖堂

 ブリストン聖教都市には、大小様々な大きさの教会が至る所に存在している。

 この都市での教会の役割は単なる祈りの場だけではない。自立した生活が難しい貧しい者達への炊き出しを行う、都市のセーフティネットの役割だったり、子供たちへ読み書きを教える学校の役割なども担っているのだ。神聖教は教義信仰するあらゆる者たちの生活の中に深く入り込んでいる。


 そして、最も重要なのが医療機関としての役割だ。神聖教の教徒は上位のものになると、女神シーラの力を借りて様々な奇跡を起こせるようになる。その力を利用して、病気や怪我をした都市民を治療している。

 なかでも聖教都市の由来でもあるブリストン大聖堂は有名だ。聖女が住まう聖堂として、女神の奇跡で”あらゆる傷病を癒す”と帝国内でも名をはせている。ウィル一行と少年ティム、ティムの母親ジュリーは、そのブリストン大聖堂に向かっていた。


「それにしても、治癒の奇跡で名高いブリストン大聖堂にこの足で立ち寄る経験ができるとは、長生きはするものですな!そもそもブリストン大聖堂の成り立ちは……」


 アルフレッドは市内観光が決まってから上機嫌だ。特にブリストン大聖堂といえば、帝国内でももっとも歴史ある建造物として名高い。ウィルもリズも知らなかったことだが、どうもアルフレッドは各地の名所をめぐるのが趣味のようだ。普段は護衛として多くは語らないない彼だが、誰も聞いていない大聖堂の建立の歴史を早口で語っている。


「ふふ、意外ですね殿下。アルフレッド様が史跡めぐりを趣味にされているなんて。」


 珍しく饒舌に喋るアルフレッドを見て、リズは無邪気にはしゃぐ子供を見るような目をしている。


「護衛騎士ともなれば、王族と各都市を回ることも多いし、なによりあのフェブリア姉様の護衛だからね。それなりの教養も必要なんだよ。それよりティムのお母様の様子はどうだろうか?」


「落ち着いているみたいっスよ。大事にならなそうでよかったっス。」


 後ろから様子を窺っていたサイラスが答えた。ティムの母親のジュリーは相変わらずアルフレッドに背負われているが、先程出会った時よりいくらかましな様子だ。先程から「ありがとうございます」と何度も一行にお礼を言っている。


「あなたも少しはアルフレッド様と交代したら?後ろで様子を見ているだけじゃない。」


 リズは呆れたようにそう言った。


「俺はそういうの向いてないスから。顔色を伺うのは得意なんスけどね。わはは!」


 要は力仕事は自分の仕事ではないということだ。帝国の要人と、要人の護衛を相手にいい神経をしている。


「偉そうに何を言っているのかしら……。」


 リズははぁ、とため息をついた。


「……というわけで、ブリストン大聖堂へ向かうこの石畳の街道が整備されたわけですな。さ、ようやく大聖堂へつきましたぞ。」


 結局、アルフレッドは道中しゃべりっぱなしだった。主に相槌を打つ役になっていたリズも、最後の方はさすがに顔が引きつっていたほどだ。

 ウィル一行はブリストン大聖堂に到着した。遠くからでもわかるほど高い中心の塔と、左右の2つの小塔を備えた、荘厳な建物が目の前にそびえたつ。遥か遠くからでもそのシンボルでもある塔が見えていたが、いざ入り口まで近づくと、本堂の大きさに圧倒されてしまった。

 さらに、奥屋と呼ばれる、歴史を経て建て増しされた聖堂の向こうにある建物は、大貴族の邸宅と言っても差し支えなく、あのパーセル公爵邸にも引けを取らない。


 奥屋は全て煉瓦作りで特に敬虔な神聖教徒によって建築され、現在は神聖教の宗教的なトップでもある大聖女ダイアナ・マクナイトの住居でもある。女神シーラの力を借りて癒しの奇跡を発現する神官の中でも、もっとも女神と近いのが彼女だ。ダイアナの癒しはあらゆる傷病を治してしまうとまでいわれている。大聖女は宗教的な行事や貴賓との会合などがなければ普段から教徒へ癒しを与えているらしい。


 ……とまぁ、ここまで全て道中のアルフレッドの言なのだが。聖堂の中へ入ると、礼拝に来ている教徒が数多くいて、それぞれひざまづいて中央の女神像へ祈りを捧げていた。ここには大聖女がいる様子はないので、今日は別の場所にいるのだろうか。


「もし、すみませんが。大聖女様の御祈祷をいただきたいのですが。」


 近くにいる神官にウィルが話しかける。神官は落ち着いた紺色のマントを羽織っている。光沢のある白い布で周囲を縁取りされていて、さらに白い布には金色の糸で神聖教のシンボルが刺繍されていた。神官はウィルに恭しく答える。


「大聖女様のお祈りをご希望でしたら、こちらへ。」


 穏やかな雰囲気をしている神官は、そういうと一行を聖堂奥屋へと案内した。


「こちらで少々お待ちください。大聖女様にお祈りいただく前に、主教様にお会い戴きます。」


 一行は大聖堂から奥屋へ続く回廊を抜けて、小さな部屋へと案内されたあと、入念な身体検査を受けた。あらゆる傷病を癒す能力をもつ大聖女の力を欲しがるものは多いだろうし、周囲の国家から見れば帝国の国力に多大な寄与をしているようにも見える。基本的に政治的には中立の立場をとっている聖教都市とはいえ、これくらいの用心は当たり前だろう。


 その後、少し広めの応接間へ通されたあと、しばらくして主教がやってきた。


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